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★ショートコント★『志望動機』

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ショートコント★パート4

『志望動機』


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オフィス風のとある一室では、今まさに集団面接が行われていた。

面接官は2人。志望者は3人である。


死神「では、次に志望動機をお聞かせください。左の男性の方からどうぞ」


26才男性「はい、私は所謂ブラック企業に勤めておりまして、度重なる休日出勤や深夜残業に疲れ果てておりました。職場環境も酷いもので、皆がイライラし、苛めや恫喝は日常茶飯事で、生きる喜びというものを見失いました。死んで楽になりたい。そう思い、今回志望した次第です」


死神「分かりました。では、次の方」


12才女の子「志望動機ってなんですか?」


死神「君は、なんで死にたいと思ったのかな?」


12才女の子「私ね、お腹に腫瘍があるの。手術しないといけないんだけど、手術をするにはお金がたくさん掛かるの。お母さんは手術を頑張って早く元気になろうねって言うんだけど、ウチ貧乏だから手術なんてしたらお母さん困らせちゃうと思って、死んだ方がいいと思ったんだ」


死神「そうだったんだね。教えてくれてありがとう。では、次の方」


72才男性「いやぁ、私も大分長生きしましたし、足が悪くて歩くのもしんどいもんで。そろそろ転生して次の人生を楽しみたいな、と。もし、転生先が選べるならファンタジーな世界のチート主人公でお願いしますね。よろしくお願いします」


死神「申し訳ありませんが、採用された場合の配属先は選ぶことができませんのでご了承ください。では、各人にそれぞれ質問させていただきます。26才男性の方、何故転職はされないのですか?」


26才男性「転職活動をする気力も時間も無くて……」


死神「今の職場をすっぱり辞めてしまえば余裕が出来ると思いますよ」


26才男性「別の会社に、雇ってもらえる自信もないし……」


死神「自信がないだけでしょう?何事もやってみなければ結果は付いてきませんよ。また、収入を得る方法は、会社に雇われるだけではありません。世の中にはいろんな生き方があります。自分のやりたいことを見つめ直し、叶える努力をしてみてから死んでも良いのではないでしょうか?とりあえず退職して、雇用保険か生活保護を受給しながら休養してみるのはどうでしょう?」


26才男性「そう、ですね。最近ずっと3時間くらいしか眠れなかったので、昼までダラダラと寝てみたいです」


そう言って、26才男性は微かに笑みを浮かべた。


死神「では、次は君に質問してもいいかな?」


死神面接官が顔を向けると、12才女の子は「はい」と、元気に返事をした。


死神「お母さんが困るから死にたいと言っていたけれど、君は、お母さんが好きかい?」


12才女の子「うん!大好き!」


死神「じゃあ、もし、お母さんが死んじゃって会えなくなったら君はどう思うかな?」


12才女の子「やだ、お母さんが死んじゃうなんて、絶対やぁだぁ」


12才女の子の目がみるみる潤み涙が溢れる。


死神「頑張ってお金を用意したら、お母さんが死ななくて済むよって言われたら、君はどうする?」


12才女の子「頑張ってお金を用意する!」


死神「お母さんもね、君と同じ気持ちだと思うよ。頑張ってお金を用意するから、死なないでって、きっと思ってる」


12才女の子「私、死ぬの辞める!」


死神「うん。手術、頑張ってね。では、72才男性の方、次の人生を楽しみたいと、仰っていましたが、次の配属先も人間である可能性は、結構低いですが宜しかったですか?」


72才男性「え?」


死神「亡くなった後の配属先は、専門の担当者により決められますが、あらゆるものが対象となりますので、動物や植物、鉱物になる可能性もあります」


72才男性「……ッ!そんなつまらんもん、誰がなるかッ!わしゃまだ死なんぞッ!」


いきなり怒鳴りながら立ち上がった72才男性は、荒々しく足を踏み鳴らしながら出ていった。まだまだ元気そうである。



死亡者の採用面接が終了し、部屋に残っているのは2人の面接官だけになった。


死神「はぁ~、今回も不採用ばっかりかぁ~」


死神見習い「アレで採用する気、あったんですか?」


死神「あるよ!でも、どうせなら悔いなく来て欲しいじゃない」


死神見習い「まぁ、そうですねぇ」


死神「じゃ、今の3人にお祈りメール送っといて」


死神見習い「へーい」


◆◆◆◆◆◆


この度は、死亡者募集にご応募いただき、誠にありがとうございました。

厳正な選考の結果、誠に残念ではございますが、今回の採用は見送らせて頂く事になりました。

貴方様の今後のご活躍をお祈り申し上げます。


◆◆◆◆◆◆

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こんにちは、虹色冒険書です。 幻邏様のご企画の際にはお世話になりました、その節はうちのキャラを描いてくださいまして、誠にありがとうございました。 他の方のところでごんたろう様のお名前をお見かけする機会…
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