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黄泉の巫女  作者: 氷水
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陽キャの絡み

 ヤーティか。

 せっかく邪魔にならないよう位置したのに。

 ここ床だぞ。


「別に」


 質問の意図が分からない。

 何が面白いのか知らないけど妙に笑っているし。

 なぜか妹を見ているような?

 次にヤーティはおれの体を指してきた。


「お前ってそういう体系が好みなのか?」

「悪いか?」

「いやさ、ダチに全く同じ趣味の奴がいてよ! 何だっけか。女だけど元々男だったんだ! って奴」

「TS女体化」

「そうそれそれ! TSTS! 女風呂とか覗き放題とかほざいてたか! お前はいいよな」


 見る勇気がおれにあればの話しだけどな。

 そんな風に、身振り手振りで質問を駆使するヤーティに付き合っていると、気づいたらおれの皿から料理が無くなっていた。

 ……いつの間に食い終わって。

 こいつ会話を繰り広げるのが非常に巧い。


「そういう訳でなんか騙している感じで悪いし、女子に裸を見られるのって慣れてなくてな。……ははは」

「もったいねぇな。堂々としてりゃいいのに。俺だったらどんな胸でも脳に焼き付くまで堂々と見てやるな!」


 ヤーティは額に手を当てる。

 まるで宝を探し求める海賊のような目つきで妹とシグレさんを眺めた。

 それはそれでどうなんだ。

 裸をじろじろ見る奴がいたら軽く距離取るわ。

 女風呂に対する話題は軽いオチを付けて終わらせる。

 酒より食事。

 またまた料理を大盛りに盛り付けて戻ってきたヤーティに、おれから話題を持ち掛けてみる。


「なぁ、この国の兵士はなんで銀装備なんだ。意味ないだろ」


 最初に感じた疑問をぶつけてみる。

 この土地はアンデッドが嫌う【金】の気質が強い。

 あれは何というか、浄化? というより天然な物というか邪気を振り払う力を持っているからな。

 いうなら太陽みたいなものだ。

 通常、日の元にアンデッドが姿を晒すことはできない。

 それは日光が浄化の作用を持っているからだと言われている。

 そんな太陽と似ていて、【金】は破邪の作用を持っている。

 そんな場所にアンデッドが出向くなんてこと普通は無理なんだ。

 なのに装備は土地と同じ性質を持つ銀製の武器。

 流石に警戒しすぎだと思う。


「ああ、なんだったか。こう、龍の名前が入ってんのは覚えてんだが」

「流通ですよ、ヤーティ」


 シグレさんが割って入ってきた。

 なんかグラスを渡された。

 中身は麦茶だと言われたので遠慮なく口に入れる。

 うん、味の違いが分からない。

 けど、お茶は良いものだ。

 この麦茶は美味い。

 よく冷えてる。

 正常な頬を保った状態で、シグレさんが投げかけてくる。


「人が死んだらどうなるか分かりますか?」

「知ってるよ。この上なく」

「釈迦に説法でしたね。現状、プレイヤーはコンテニューできない。それだけ覚えていれば問題ないですよ」


 死ねないから、昔のように、簡単に危ない場所へ足を踏み入れられないということか。

 装備を作るのにも危険な場所での素材は必要だからな。

 そうか、だからか。

 こういうプレイヤーが転移する作品でNPC ばっか出てくるのは。

 リアルと世界が違うから。

 NPC からすればこの世界こそが普通。

 けどプレイヤーからすれば、魔族魔物に神様と異常でしかない。

 怖いと思った覚えがある。

 もしかしたらおれも、戦うのを放棄してどこかでだらけていたかもしれない。

 それでも、こう言わざる負えないと思った。


「元より蘇りは生命の枠組みを逸脱する行為。死んで死んで死んで世界は廻る。むしろ元の鞘に収まったって感じだな」


 死んでも生き返るとかハッキリ言ってずるいし。

 死の恐怖が無くなるのも自然の摂理に真っ向面から反発している。

 今までがおかしかった。

 そう思うことにしたい。


「アンタが言うな。アンタが」


 シグレさんが来たからか妹も混じってきた。

 妹に抱き着いた状態のテルミも「何々?」と嗅ぎつけてくる。

 また気づけばなんか騒がしくなっているし。

 こいつらひとりだと静かだけど、三人いればハレの日か。

 話すネタも無いからまた隅っこ行こっ。

 空になった皿を手に、おれは立ち上がる。

 またどこか開いている隅っこに移動しようとしたら、パシッとテルミに手首を掴まれた。


「おいおい、バリキチよぉ。逃がさねぇぜ。密着ッ! 国破壊常習犯の思考!」


 今度はおれにもたれかかってくるテルミ。

 邪魔くさいことこの上ない。


「シグレさん。この人――」

「興味深いですね。何を持って、どんな考え方をすれば、あそこまで壊滅しようと思うのか」


 あの……、シグレさん?

 とりあえず助けてくれないでしょうか?


「面白れぇ! バリルと会話できる機会が訪れると思ってなかったからな!」

「因果応報。後これあげる」


 なんかヤーティと妹まで参戦してきたし。

 まっ、まぁ確かにうん。

 クソ共以外のプレイヤーと戦いなく会話したことないけどさ。

 それと妹よ。

 なんでプラスネジ?

 頭のネジが外れたならまた嵌めればいいじゃない的な?

 ネガティブ思考だからこれでプラスの方向に考えろ的な?

 いちおうもらうけ――


「あっ……」


 せっかく妹からのもらい物なのに。

 ネジを摘まんだ途端、またこれだ。

 贈り物すらすぐに壊す羽目になるなんて。

 ……ってあれ?

 なんか陽キャ集団が固まった。


「ちょい……いい?」


 こっちに来るように指を動かす妹。

 そのままおれの下げているペンダントに指をかけて覗き込んできた。

 ……なにか?

 後若干妹の目がトロンとしているような……?

 妹さん、「壊れれない」って首を振っているけど。

 マジで何? あと呂律。


「……マジ? ふざけんなろくまおぉう!!」

「各国にどう説明しましょうか」


 テルミが怒鳴る。

 そしてシグレさんは頭を捻りだす。

 それからすぐに妹と三人で集団を作ってしまった。

 えっ?

 あの何?

 何の話し?

 なんでそんな残念そうな顔してるの?

 力を封じるペンダントが全くの無意味だったことと何か関係あるの?

 どの道おれとヤーティは弾かれているので真相が分からない。


「なんでもねぇよ。それよりほらっ、男同士話をしようぜ!」


 その言い方はなんか、ちょっと気持ち悪い。

 首に腕回してくるとかそういう陽キャっぽい。

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