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人柱奇話 (後編)

作者: 磐城 桓生

ある日のこと。



家業を任せている親類の者が、


商売の遣り繰りの足しに、家伝来の細工物や裂地を売り払ってはどうか、と娘に申し出ました。


年若い娘は、家の商売のためと言われてやむなく、

入れ物の箱ごと渡しました。



細工物や裂地、それに入れ物だった箱は、思いの外の高値で売れました。



親類の者は再び娘に、

今度は書物の方も少しずつ売るように勧めました。


娘は、さすがにそれは少し待って欲しいと親類の者に頼み、

母親の薬を取りに外に出ました。



薬を受け取って帰る途中、娘は町の辻でこんな噂話を聞きました。


今度新しく掛ける橋の、人柱のなり手が見つからない。

施主である、とある貴族の殿様は、人柱には若く美しい娘をと欲しているが、条件に合うなり手の娘が見つからず困っている。

殿様は、莫大な報償金と、遺される家族の終身の面倒まで保証すると言って探しているそうだ、と。



娘はその脚でその貴族の屋敷に赴き、


殿様に、報償金と、母親の終身の面倒とを、確かに約束する旨の証文を書いてもらいました。



こうして娘は人柱となりました。


母親は、大事の一人娘に先立たれたことで、がっくりと力を落とし、さほど間もなく儚くなりました。



しばらく経った頃には、

人柱の娘とその母親の噂は都中に拡がりました。


親類の者達はまともに商売ができなくなり、

やがては都から姿を消しました。

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