御門夢露(みかどめろ)2
【御門夢露2】
夢露はなおも自説を続ける。
『大和国って、ずっと平和な国だったし、国民性も穏やかで民度が高いって言われ続けてきたわけ。それが急激に崩壊するってのはおかしすぎる』
『おかしいのかな』
『あのさ、2千年前に当時の隣の大国が大和国にやってきて、こう見てる。大和国は盗みが少なくみんな正直で穏やかだって。国民性ってそんなに簡単にかわるもんじゃない。それなのに、急速に治安が悪くなるって、なんかこの国に大事件とかあった?』
『思いつかん』
『そうなんだよ。なぜだかわからないけど、治安の悪化は大和国だけじゃなくて、世界的な傾向なんだよ。その理由がわからない』
『ああ、よく話題になるよな。賢い人が議論してもよくわからんという』
『で、僕の自説というか、見立てなんだけど、今世の中にはなにか大事件が起こってる。それを僕たちが知らないだけで』
こいつ、ちょっとおかしいかも、と思いながらも、大秀才の言うことには何か説得力があった。
『この先、きっととんでもないことが起こるよ。それもやばいことが。今、煌人くんは簡単にチンピラたちをやっつけたんだけど、それが大事なスキルになるような世の中になると僕は考えている』
いや、やっぱりこいつ頭がおかしいわ。勉強のし過ぎか?
『煌人くん、“アウトロー”の件で君に謝罪するかわりに、僕の秘密を教えるよ。この秘密を人に教えるのは始めてだからね』
『へえ、何?』
『僕は陰陽道の術が使える』
『?』
『見ててよ。◎△$♪×¥●&%#?!』
夢露は人の形をした紙を取り出した。
そして、聞いたことのない呪文のような言葉を発した。
すると、人の形をした紙はいきなり火を吹いた!
『見たかい?この紙は式神といって、僕は式神に能力を与えたんだ。できるのは火を吹くだけじゃないよ』
『なんだよ、お前のスキルとんでもないじゃねーか。それでオレのスキルが羨ましいって?』
『これも自説なんだけど、煌人くんのスキルって格闘技にとどまらないと思うんだよね』
『ほお』
『煌人くんのその反射神経の鋭さ、多分時間に関係しているんじゃないかな。突拍子のないようなこと言うけど、煌人くんは時間とか空間の操作をしてるんじゃないかって思うんだよね』
『いや、飛躍しすぎ。厨2すぎるだろ』
オレは少しドキッとしながら抵抗してみる。
『僕は式神で反射神経を鋭くすることができる。でも、出来るのは反射神経だけで体はどうにもできないし、体は反射神経についていけない』
『ふむ』
『煌人くんは体全体が加速している。君は運動が得意そうだけど、それでも普通の人の範疇だよね。それなのに、あの超人のような加速度を得るってのはありえないと思うんだよ』
『だから、時間や空間の加速ということか?』
『うん。そう考えると話が早いなって。まあ、確かに厨2だし、単純な身体能力強化術かもしれないけど』
『まあ、わかったようなわからんような。しかし、お前の式神、便利だな…っていうか、すごすぎるだろ』
『僕も不思議なんだけど。小さい頃に突然できるようになったんだよ』
『訓練とか勉強とかなしでか』
『うん。自然に頭の中に浮かんできたんだ。昔から知ってるみたいに』
『オレたちの世代って、キラキラ世代っていうけど、お前も代表の1人だな』
『煌人くんこそ』
『だけど、なんでさっきのチンピラに使わなかったの』
『バレたら不味いでしょ』
確かに。オレなんか、スキル見せてドツボにハマってるもんな。
ましてや、火なんか吹いたらそれこそマスコミが飛びつきそうだ。
『バレたら不味いって、そもそもオレに見せてるじゃん』
『うーん、なんでかな。アニメ的に言うと、ゴーストが囁くって感じ?』
後々わかってくるんだが、夢露は大秀才のくせに感覚で対処することが多い。
秀才と言うよりも天才タイプなのかもしれない。




