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御門夢露(みかどめろ)1

御門夢露みかどめる1】


『金だせよ』

『もってないって』

『ジャンプしてみな』


 チャリン。


『もってるじゃねえか』

『駄目だって、それ今月の図書代』


 オレが家から少し離れた場所の公園を通ったときだ。

 不穏な会話が聞こえた。

 ちょっと顔をのぞかせてみた。

 オレの同級生がだらしない格好をした奴らに囲まれていた。


『おい、やめてやれよ』


 見たことのない顔だ。ザ・チンピラって感じだ。


『なんだ、てめーわ。ひっこんでろ』

『いや、そいつオレの同級生なんだわ。金返してやれよ』

『ひっこんでろってのがわからんか』


 チンピラのうちの1人が腕を伸ばしてきた。

 とっさに腕を払う。


『うぉっ、いてえ』

『こりゃ、腕折れたな。治療費払いな』


『おまえら、頭悪そうだな。ちゃんと学校卒業したんか?するわけないか』


 オレは奴らをあおってやった。


『クソッタレ』


 いやー、煽り耐性低すぎ。

 最初の男はタックルしてきた。

 瞬間に動きがスローモーションになる。

 膝蹴りカウンター。顔面崩壊した。


 次の男は拳闘を知っているな。

 構えたところへローキック。

 一ヶ月はまともに歩けないだろう。


 最後の男は腕を伸ばしてきたところを飛びつき腕十字。

 簡単に腕を折る。


 腕十字はいかんな。技を決める間に地面についてしまう。

 土を払いながら、金を取り返す。


 時間がスローになる時は、オレの打撃の威力は反比例して凄くなる。

 それと、飛びつき腕十字は中2の頃に必死に練習した成果。

 映画“アウトロー”で主人公の必殺技の一つだったんだよね。

 オレも“アウトロー”影響されてたわ。



『おい、行こうぜ』


 同級生に金を返し、その場を離れた。


煌人(きらと)くん、ありがとう』

『くんはいらねーよ』

『いや、ムリ』


 集られてた奴は御門夢露みかどめろ

 こいつも見事なキラキラネームだ。

 オレの同級生、クラスも同じだ。

 家は近所だが、学区のせいで高校で知り合った。


 こいつもキラキラ世代を代表する1人かもしれない。

 とにかく、頭がいい。

 高校入学から期末テストで満点以外をとったことがない。


 高校始まって以来の秀才、という声もあるらしい。

 大和国のいかなる大学・学部も合格間違いなし、

 とのお墨付きが出ている。


 そのかわり、まさしくいじめられっ子、という風貌だ。

 顔色が悪い。

 分厚い眼鏡。

 貧弱な体格。

 身長は165ぐらいで体重が50kgぐらい。

 口数少なく友達と喋っているところを見たことがない。

 目はおかしな光を帯びている。

 いっちゃってるというか。


『さすがはカウンターキングだね』

『へっ?なんで知ってるの?』


『アウトローってサイト知ってる?』

『あのファッキンサイトね』


『えっ、嫌ってるの?』

『ああ、おかげでオレはいつも不良に襲撃される』


『ああ、そうなんだ……』

『なんだよ。おまえ、なにか知ってるのか?』


『ものすごくごめん!あのサイト作ったのは僕なんだ』

『なんだって』


『ほら、中2のころ“アウトロー”って映画あったでしょ?全国的に大ブームになった』

『ああ』


『僕、ひ弱なせいか“アウトロー”の世界に憧れがあって。で、サイトを立ち上げたんだよね。しばらくしたら人気が出て。その頃には中3で受験勉強しなくちゃっていうことで、運営を他の人に手渡しちゃったんだよね』

『おまえのせいかー』


『いや、その頃は君のことは知らないし、カウンターキングが君のことだって知ったのは最近だよ』

『でもお前が始めたサイトだろ?』


『あのさ、言い訳がましいけど、当時似たようなサイトがたくさんあったんだよ。確かに僕のサイトは人気があったけど。でも、サイトを渡した人が有能で、全国の同種のサイトを組織化したんだよね』

『ぐぐ』


『だから、僕がサイトを立ち上げなくても君はきっと有名になってたと思うよ。僕の見たところ、君の能力は別格だと思う』

『おまえ、オレの能力がわかるの?』


『よくはわからないけど、カウンターだけじゃないよね。反射神経が超人的とか?いや、これは僕の説じゃなくて、ネットでよく話されてることだけど』


 ううむ。まあ、そうだよな。反射神経が飛び抜けてる、ってのは誰でも思いつくよな。自分自身、反射神経が飛び抜けてるのか、それとも本当に時間がスローになってるのかわからんけど。常識的に考えれば時間がスローになるなんてのはSFだよな。


『まあ、いいや。オレは昔から不良を呼び寄せる体質みたいだしな』


『(本当は昔から煌人(きらと)くんのこと知ってたし、カウンターキングってあだ名つけたの僕なんだけど、怖いからだまっていよっと)』


『なんだ?』


『いや、なんでもない。でも、君の能力は羨ましい』

『何言ってるんだよ。大秀才が。オレの能力なんか、お前の頭と交換したいよ』


『いや、君こそ何言ってるんだよって感じ。君、自分の価値がわからなさすぎ。いいかい、世の中は危ない方向に行っているのはわかるよね。それも急激に。おかしいとおもわない?』

『そうか?』


 夢露はだんだんと話が白熱していく。

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