A拠点
【A拠点】
武上さんと話し合った次の日だ。
魔烏の送ってくる視覚映像に敵の動きがとらえられた。
やはり昨日のは威嚇偵察で、そこから作戦を立てたようだ。
それにしても、動きが早い。
今回の作戦は、ガジンと夢露以外、オレたち総動員だ。
そのために、結界魔道具を増産して、各拠点、避難場所等に加重して設置した。
綾羽が本拠地を離れるため、結界を維持できないのを見越した措置だ。
なお、ガジンと夢露には本拠地の指揮をとるため残ってもらった。
オレたちは計画通り、A拠点に近い結界外のモールを制圧するふりをした。
奴らがオレたちに引き寄せられればいいが、
こちらに来ずに、K市攻略を優先するようであれば、
すぐにUターンして下水道作戦に移行する。
モールの中には30体ほどのゴブリン・ホブゴブリンがうろついていた。
オレたちは、なるべく時間をかけて魔物を排除していった。
『どうだ、魔烏。喰らいついてるか?』
魔烏から視覚映像を送ってきた。
魔物の流れがこちらに向き始めた。
『よし、喰らいついたようだ。モールの魔物を殲滅したら、A拠点に向けて撤退戦を行うぞ』
殿はノワールと輝星が担当。
中衛は瑠輝亜と綾羽。
先頭は碧空とオレだ。
モールからA拠点までは1km弱。
単発でかつ組織的な攻撃ではないので、
撤退戦は比較的楽だった。
だが、少しずつ敵の数が増えてきた。
順調に敵がこちらにやってくるようだ。
A拠点に入り時点で、敵の数は千以上いるようだった。
しかも、続々と集結しつつある。
『綾羽、結界を頼むぞ』
綾羽はA拠点を包む程度の大きさの密度の濃い結界を張った。
これなら、少々の攻撃では破られないだろう。
他のメンバーはそれぞれ攻撃の準備をし終えた。
あとは、攻撃開始の合図を待つのみだ。
そうこうしているうちに、オークとハイ・オークを中心にA拠点の周囲が埋まってきた。ざっと1万はいそうだ。
魔物が大挙してうごめく図は、実に醜悪だ。
奴らは集合してるだけで、一定の距離を保っている。
『なんだか、統率がとれてるな』
『不気味ね』
オレたちがそう囁いていると、突然A拠点の周りが光輝き出した。
『なんだ?』
『まさか、巨大な魔法陣?』
半径500mはあろうかという魔法陣が、A拠点を中心として浮かび上がった。
『奴ら、事前にこんな巨大な魔法陣を描いてたってこと?』
『やられたぞ。奴ら、オレたちをここに誘い込んだんだ』
すると、魔物たちは一斉にA拠点に向けて魔法を放ち始めた。
今までとは威力が段違いだ。
『これはエネルギー増幅の魔法陣だ。綾羽、結界は大丈夫か?』
『わからない。数分しかもたないかも』
『これは駄目だ。撤退するぞ』
オレがそう指示した途端、なんと地下道からも敵が攻撃してきた。
『おい、地下道は敵に制圧されてるぞ』
『くそっ、ここで戦うしかない』
オレたちは覚悟を決め、全員の最大戦力で敵を攻撃した。
だが、多勢に無勢どころか、敵は攻撃力も防御力も格段に向上している。
オレたちの攻撃がまるで通じない。
まずは、綾羽の結界が切れた。
体力を消耗して、綾羽は動けなくなってしまった。
それからは、1人ずつ負傷してみるみるうちに継戦力が無くなっていった。
『ああ、もう動けない』
『くそっ、こんなところで』
『こうなったら刺し違えてでも敵をやっつけるよ』
オレたちは絶望の極みにいた。
その時だ。
オレは突然意識が赤く染まり始めた。
久しぶりの感覚だ。
よりによってこんな局面で起こるとは。
『おい、みんな。オレは意識が赤くなってきた。警戒しろ』
ところが、オレは意識を手放さなかった。
オレの体の中から沸き起こる力。
『この盛り上がり。前世のときのオレだ』
オレは自分の力を練り上げ始めた。
体が眩しく発光する。
誰もがオレを直視できないほどまでに光り輝いた瞬間、
オレは光を解き放った。
その瞬間、拠点の周りの魔物は空間にできた狭間に吸い込まれ、
あっという間に消滅した。




