高校2年A組
【高校2年A組】
『キーくん、おはよう』
オレが教室に入ってくると、いつものように綾羽が寄ってきた。
『煌人、いつも言ってるだろ。いちゃいちゃするんじゃねえって』
オレの高校は一応進学校だが、風紀が自由でみんな適当な服装をしている。
いまオレに絡んできたのは、交野輝星。
いつもダボダボの服を着て、自分ではスケーターだって威張ってるけど、ファッションに興味のないオレにはよくわからない。
スケーターってアイススケートじゃないぞ。
スケートボードやる人。
身長は180以上あって、大柄だが、
器用にスケートボードを操る。
この輝星は中学以来の馴染みだ。
馴染みと言っても、顔馴染みという意味で仲がいいわけじゃない。
というか、こいつは綾羽を崇拝しているといっていい。
よくストーカーとして訴えられないな、というぐらいだ。
だから、綾羽がオレと仲がいいのが気に食わない。
しょっちゅう、オレにつっかかる。
輝星を無視していると、
『煌人、無視してるんじゃねーよ』
とオレにつかみかかってきた。
軽くスウェーで避ける。
『なめてんのか、てめー』
これで輝星は引っ込む。
これ以上は踏み込んでこない。
レッドラインを知っているのだ。
中2のときだ。オレ、綾羽、輝星は同じクラスだった。
輝星がオレにつかみかかってきて、
軽くスウェーで避けるところまでは今日と同じだ。
『なめてんのか、てめー』
と輝星はオレに殴りかかってきた。
神経を集中させるオレ。
奴のパンチがスローモーションになった。
拳がオレの頬を捕らえる前に軽くダッキングする。
ダメージは零だ。
『くそったれ、おかしな技つかいやがって』
周りは輝星の言っていることがわからない。
誰が見ても、輝星のパンチはオレの頬をとらえている。
輝星は理解している。オレが拳をよけたことを。
『やめなさいよ』
綾羽が輝星に凄い剣幕で怒る。
『まあまあ。なんでもないよ、綾羽』
オレは綾羽をなだめる。
面白くない輝星。
ジロリとオレを睨んでその場は退散した。
さて、昼休み。
オレは一人で裏山の空き地で昼寝していると、
人が集まってくる気配がする。
『煌人、おきろよ』
輝星と取り巻きだ。
輝星はそこそこ強く、中1のときに学校を締めていた。
昔風にいうと番長ってやつだ。ダセ。
『なんだよ』
寝ているところを邪魔されて腹立たしい。
ふらふらと起き上がった。
『てめー、オレをなめてんのか』
あー、めんどくさ。
『なめてないよ』
『ふざけんなよ。そこに手をついてオレに謝れ』
『そうだぞ、早く輝星さんに謝れ』
取り巻きもうるさい。
思わず鼻白む。
すると馬鹿にされたと思ったか、数人がかりで殴りかかってくる。
途端に奴らの行動がスローモーションになる。
オレは、各自にカウンターをあてる。
手加減しないと。
やり過ぎると大騒ぎになる。
あっという間に地面に伏す輝星と取り巻きたち。
『くそっ、覚えてろ』
数日後、夕方暗くなってから家の近くの公園を通ろうとすると、
輝星はじめ10人以上の集団に囲まれた。
輝星が上級生やら高校生やらを呼んだらしい。
輝星は勝ち負けにはなりふり構わずしつこく食い下がる。
『この前はどうもありがとな。お礼をたっぷり返してやるぜ』
ああ、駄目だ。
急に視界が赤くなってきた。
このとき発動したのがオレの第2スキルだ。
いや、発作かもしれない。スキルとは言い難い。
『お前ら、逃げろ。命の保証はないぞ』
『何ふかしやがる』
その言葉を最後にオレの意識は途切れた……
どのくらいたったのだろうか。
オレはぼんやりと意識を回復させていった。
見渡すと、血まみれになった不良どもが地面に転がっている。
意識がない奴やら、痛みで藻掻いている奴。
手足が変な方向に曲がっている奴。
木の枝にぶら下がっている奴もいる。
オレは何をやったのか。
かすかにサイレンの音が聞こえる。
あわてて、逃げ出す不良たち。
やられた奴を連れて行く余裕はあるようだ。
オレもその場を離れる。
翌日、学校へ行く。
片手をギブスで固定している輝星。
オレと目を合わさない。
それ以来、奴はオレに微妙な距離を保っている。
怖がっているのは明らかだが、
プライドのためか、それは表に出さない。
このスキル?発作?が初めて起きたのは、あの事故だ。
綾羽を救った事故。
窓から飛び出した綾羽をかばったまではいい。
その時急に視界が赤くなり、意識が途切れた。
気づいたら、病院のベッドだったが、オレには傷一つなかった。
その後も、危険が迫るとオレは赤い意識に乗っ取られることがある。
その時は何がおきているかわからない。
集団で襲われた時は高い確率でこの発作が起こる。
気がついたら、上のようになっている。
問題が解決しているのはいいんだが、不気味でもある。




