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反撃準備

【反撃準備】


 さて、再度ゴブリンについて。


 通常、魔物ランクでは最低に近い魔物の入門編ともいうべき生物だ。

 身長は100~140cmほどで小学生ほどの大きさである。


 だが、戦闘力は弱くない。


 例えば、握力は100~200kgはある。

 垂直跳びは2mに達する。

 100m走では軽々10秒を切る。


 普通の人間では素手では到底かなわない。

 複数の大人でも素手ではまず無理だ。


 身体能力も高いが、非常に凶暴であるため、

 人間では襲われると萎縮してしまうのだ。

 特に、人間は傷つけられると継戦意欲をなくす場合が多い。

 その半面、ゴブリン含む魔物は本能的に戦闘力が高まる。


 しかも、魔物に致命傷を負わされると、人間は粉となって消滅してしまう。

 ネットには、消滅する人間をとらえた動画が数多くアップされた。

 それを見た人たちは一様にショックを受ける。


 死体も残らないことがなんと残酷なことか。


 対して、魔物は死を恐れない。



 ゴブリンは戦闘能力も精神力も人間より格段に高いということだ。

 そのゴブリンが集団となって襲いかかってくる。

 民間だと、こちらにあるのはせいぜい拳銃とか猟銃ぐらいだ。

 当たらないし、すぐに弾切れになる。

 相手にならない。


 サブマシンガンクラスでも同じである。

 相手は命のことを考えずに突撃してくる。

 しかも、数が多い。

 やはり弾切れになったり隙きをつかれてやられてしまう。


 襲いかかられた人間は次々と粉となり消滅していく。

 それが軍の主要駐屯地を起点として全国で発生したのだ。


 人間は隠れるしかなかった。

 だが、中途半端に隠れても見つかってしまう。

 魔物たちには、生体センサーが備わっているようだ。



『やっぱり出てきましたね』

『うん。しかも、かなり大規模だ。ネットが死んでいるから分からないが、魔烏の観測では周囲数百kmの範囲はゴブリンに制圧されているな』


『ネットが死ぬ前に、全国でも駐屯地が襲われているってネットに流れていたよ。全国中がゴブリンに制圧されていると考えてもおかしくないね』

『今、首都圏の軍司令部や軍駐屯地に魔烏を向かわせている』


 オレたちは懸命に情報収拾を行った。

 しかし、テレビもネットも死んでいる。

 街の明かりは消えたままだ。

 明かりがあっても、しばらくすると消えてしまう。

 ゴブリンからの攻撃があるものと推測された。

 残るは、建物から吹き出る火災であった。


 オレたちは魔烏や魔狼たちの視覚情報からのみ事態を把握するしかなかった。



『首都圏の軍駐屯地と軍本部、廃墟になっているぞ』

『しかも、そばにある官邸付近からも黒煙が上がってるわ』

『国の中枢が破壊されたってことか?』


『どうやら最初に軍の施設を襲ったようですね。大和国の主要基地が壊滅状態にあると考えたほうがいいかもしれません』

『うん。さらに指揮系統を潰してきた。発電関係設備や通信関係を狙ってきたのは去年と同じだ』

『敵は去年の二の舞いは食わないみたいだね。奴らがなんらかのコントロール下にある証拠だ』


『しかも、膨大な数が脅威だ。前世と大きく違う点だな』


『仮に日本全国の軍の駐屯地に拠点を作られたと仮定してみましょう。駐屯地は約200あります。昨年の扶桑山では推定5万体のゴブリンが湧き出ました。単純計算だと、最大1000万体のゴブリンが全国で発生しているかもしれません。それはないにしても、数百万体のゴブリンは想定する必要がありますね』


『更に、ホブゴブリンも観測されている。まだ見ていないが、オーク、オーガ、鬼もいると考えなきゃいけない。量だけじゃない。質も脅威だね』


『対してこちら側は、軍は消滅したと考えたほうがいいでしょう。警察程度の火器ではゴブリンにたいした打撃を上げられないでしょう。民間の攻撃力は零に等しい』


『結局、我々がこの夥しい軍団を相手する必要があるということか』


 重々しい沈黙が流れる。


 こちら側の戦力は、オレ、瑠輝亜、夢露、輝星、碧空、ガジン、ノアール。綾羽はもう少したてば、強力な盾となりうる。それから、200羽の魔烏と300頭の魔狼。


『継戦能力は1年ほどです。食料の備蓄がその程度です。弾丸は無尽蔵です。式神銃は優秀です』

『電源は太陽光発電。水は地下水で問題ありません』

『伸びしろは、まず綾羽。なんとか能力を取り戻してもらって、結界を張ることができれば、相当な防御力となる。綾羽、どうだ、今どのくらいだと思う?』


『半径10km程度の結界なら大丈夫だと思う。ただ、今能力を使うと回復が遅くなる。もう少し力の充填を進めたいわ』


『K市に強力な何かがあるのは、奴らにも伝わっているだろう。ゴブリン軍団が入って来れないのだからね。いずれ近い将来、向こうの精鋭がK市を襲ってくると思う。どうだろう、ルキアビルは持ちこたえられるかな』


『鬼がきたらわかりません。少なくともホブゴブリンやオーク程度ならば、大丈夫でしょう。式神防御はかなり優秀です』


『よし、できる限りルキアビルは敵に知られたくない。昨年から作ってきたいくつかの拠点を中心にゴブリンを屠っていくぞ』



 K市で煌人たちが反撃の狼煙をあげたものの、全国的には無力であった。


 一ヶ月後には、大和国の人口は4分の1を喪失した。

 残りの人達は、まだゴブリンの集団に襲われていない、というだけであった。


 外国に逃げようとしても、飛行機は欠航。

 わずかに船便が使えたが、実は多くの国が入国をシャットアウトしていた。


 さて、彼らはあとどれだけの時間を生きながらえるのであろうか。



 だが、ここK市では多数の人が生きながらえていた。


 200の魔烏が空から地上を監視し、

 煌人を始めとする古代人グループ、

 300の魔狼軍団がゴブリン狩りを行っていた。


 魔狼は精神生命体である。

 物理的な攻撃に耐性がある。

 ゴブリンであれば、それらは武器による物理的な攻撃しかできない。

 対して、魔狼の牙は精神生命体に多大な効果があった。

 魔狼対ゴブリンは、一方的な殺戮となるのであった。



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