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異変2

【異変2】


 梅雨前のある朝。

 ここは、首都圏でも一番大きい軍の駐屯地。


 日中は30度前後まで気温が上昇するが、

 夜明け前だと、20度ぐらいまで下がる。

 Tシャツ1枚では少し厳しい温度だ。


 それと、真夏と違って湿度が低い。

 日中でも爽やかだし、1年でもっとも気持ちのいい季節かもしれない。

 そんなことを感じながら、軍の衛門歩哨員は眠気にうつらうつらしていた。


 あと数時間で上番警衛は交代になる。

 歩哨は本当に暇というか退屈だ。

 それなのに、ビッと立っていないと怒られる。

 たまに車が通るんだが、おエライサンが乗ってると疲れる。

 まあ、この時間に誰かがくるなんてことはまずないけど。



 そう歩哨が考えていると、突然、


『ドガーン!!!』


 凄まじい爆音が朝の静寂を切り裂き、歩哨は吹き飛ばされた。

 それとともに駐屯地から爆煙が空高く吹き上がった。

 爆発は凄まじく、兵舎は半壊した。


 爆音のあとには、大穴ができていた。

 それは去年の扶桑山を思い出させるものであった。

 大穴からは数多の緑色の怪物、ゴブリンが湧き出てきた。


 ゴブリンだけではない。

 ホブゴブリンもゴブリンに混じって湧き出てきた。


 そして、機甲車両に取り付くと、次々とそれらを破壊していくではないか。

 車両を破壊し終えると、次は武器庫に向かった。

 なぜ場所がわかるのか。入り口を簡単に破壊すると、火炎を飛ばした。


『ドガーン!!!』


 先程の爆発ほどではないが、それでも凄まじい威力の爆風が軍の兵舎を襲う。

 東西2km、南北1kmほどの広さの駐屯地は周囲の民間の建物も合わせて地上に残骸をさらした。


 その間、5分とかからなかった。

 僅かながら生き残った兵士たちに、ゴブリンたちが襲いかかった。

 ゴブリンたちにやられ、粉となり消し飛んでいく。



 これと同じ情景が、同時刻、大和国の主だった軍の関係施設で発生した。

 戦車部隊、機動戦闘車部隊、戦闘機部隊、ヘリコプター部隊、戦闘艦部隊基地はのきなみやられた。


 軍は主要な兵器とそれに関わる多くの隊員を喪失した。

 昨年は散々にやられた軍に対して、闇の勢力は軍が稼働する前に粉砕してしまった。



 軍のヘッドクォーター、つまり上層部の集まる統合参謀本部も陥落させていた。



『軍本部と応答がとれません!』


 官邸は早急に緊急テロ対策室を設置。

 情報の収拾にあたったが、端末は沈黙している。

 主要の基地のみならず、軍の最高機関が魔物により壊滅した、

 という未確認情報がネットを騒がせていた。


 昨年と同様、政府専用機に乗り移れば彼らの命脈も続いたであろうが、

 下手に情報収拾を先行させたために、判断が遅れに遅れた。


 元駐屯地にできた大穴から湧き出た緑の怪物は、

 駐屯地を破壊したあと、周囲に散らばった。


 気づいたら、官邸周囲は緑の軍団に取り囲まれていた。

 彼らは、官邸から2kmほど離れた陸軍本部にできた大穴からやってきたのだ。


 大和国の政治中枢は壊滅した。

 同時に大和国の大会社の本社が多数密集している地区も襲われ、経済も麻痺した。


 発電所や変電所も襲われた。


 また、前回同様、電波を発信する設備は積極的に襲われた。

 テレビ局、通信局や小型の基地局もだ。

 電波を嗅ぎ分ける性質を持つ怪物がいるようだ。


 これで大和国の多くの地域で停電し、ネットが使えなくなった。



『只今、関係各所との連絡がとれません』

『遠見ですが、○○基地がやられました。壊滅状態の模様。また、官邸周辺も魔物軍団に襲われ、煙が立ち上っています。こちらも壊滅した模様』


 首都圏警察本部では必死の情報収集が行われているが、

 政府中枢と軍中枢が崩壊しており、独自の判断が問われている。


 軍が壊滅したとなると、街を守るのは警察しかない。

 警察は昨年以来、武器の強化を進めている。


 だが、膨大な予算がすぐに付くわけがない。

 言い訳程度に強力な武器を装備しただけであった。


 強力な武器と言っても、口径の大きめのマシンガンとかその程度である。

 あとは盾は個々の警察官に配布できた。それぐらいだ。


『盾の密集防御スクラムを組め。後ろに銃部隊。去年を思い出せ』


 警察は去年の戦闘を教訓に訓練を重ねてきた。

 ゴブリンは挑発するとまっすぐにこちらに向かってくる。

 それを盾で防ぎ、後方から銃部隊が砲撃する。

 去年はそれが効果をあげた。


 しかし、今回は役にたたなかった。

 ゴブリンは四方八方から攻撃を加えてきたのだ。

 盾による防御が追いつかない。


 側面や後方からあるいは上方からのゴブリンの攻撃により、

 警察部隊はあっという間に数を減らしていった。


 緑の怪物たちは軍や官邸を襲ったあと、周囲の街に散った。

 そして、次の標的として警察署を優先的に陥れた。


 殆どの警察署の建物は攻撃に対して無防備だ。

 そもそも、外敵からの攻撃をあまり想定していない場合が多い。

 砦として役に立たない。


 警察署は緑の怪物の群れに飲まれて、あっという間に崩壊した。



 民間人にも武装している人はいる。

 去年の事件以来、銃を所有する人が結構な数に及んでいた。


 しかし、そうした人も含めて、突然の出来事には右往左往するしかなかった。

 いくら銃を手に入れたとしても、殆ど射撃訓練など行っていない。

 ましてやいきなり実戦となると、プロでも銃撃戦は難しいのだ。



 警察署を陥れたゴブリンはその勢いのまま、

 市民への虐殺に狂奔した。

 それは去年の惨劇をそのまま踏襲した。



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