高3になった
【高3になった】
オレたちは高3になった。
オレ、夢露、瑠輝亜は理系国公立コース。
綾羽、碧空、輝星は文系国公立コース。
ただ、それは授業選択上のコースで、
それとは別にホームルーム的なクラスがある。
同じクラスの中に、理系・文系、国公立・私立いろいろな選択科目をとる生徒が共存している。授業が始まったら、おのおの選択したクラスに散っていくのだ。
学校の行事も恙無く進んでいる。
毎年5月に行われる球技大会にはやっぱりオレの種目は野球になった。
流石に3年連続はどうかと思うのだが、
生徒のみならず、先生も俺たちの三振ゲームを期待しているらしい。
反対しているのは、野球部の連中のみ。
野球部なのに輝星からは三振の山、オレからはホームランを打たれて涙目で、
心底、嫌がっている。
輝星とはまたもや同じクラスになった。
そういえば、輝星とは中1からずっと同じクラスだ。
で、やっぱり全打席三振奪取のパーフェクトゲームで優勝をさらった。
今年は160km前後の球速が出ているらしい。
『輝星、おまえプロ行ったらどうだ?MLBで例の日本人と争うのもいいぞ』
例の日本人とは、16歳でホームラン王とセーブ王をとった山科天響のことだ。
2年めは疲れがでたのか両方とも成績を落としたが、それでも一流の成績を上げている。
『へへっ、オレは綾羽とともにあり。それに世界大会連覇がかかってるしな』
輝星は春先に行われたスケートボードの世界大会で優勝した。
近年この分野は大和人が強く、3位までを独占した。
輝星は並行してピッチング練習もしているらしい。
どうやら、去年オレがあんまり楽にキャッチングするので対抗心を燃やしたらしい。
『輝星、オレのスキル知ってるだろ。お前が時速200kmの豪速球を投げたとしても楽勝だぞ』
輝星はそれもわかっているので、今年はフォークを覚えてきやがった。
ワンバウンドが多くて、キャッチングが大変だ。
まあ、全球捕ったけどな。
ついでにいうと、フォークは球技大会ではあまり役にたたなかった。
普通のストレートでも手がでない。
150kmのフォークを投げられても困る。
見送りが多いのだ。
結局フォークはワンバウンド、ボールになることが多かった。
じゃあ、高めのフォークにすれば、と思うが、
輝星はオレのパスボールを狙っているのだ。
高めじゃ、意味がない。
拳闘部は、ミドル級の先輩が卒業して大学に進学した。
学生プロとしてデビューを控えている。
その半面、拳闘部には特別強い選手がいなくなってしまい、
オレの足は遠のいた。
一応、相談役みたいなポジションにいる。
その分、碧空に引きずられることが多くなった。
道場ではオレが一番強いのは間違いないが、
それはスキルを最大限に使った場合だ。
少しでも手を抜くとバンバンやられる。
道場主からはリングにデビューしないかと言われているが、
それは勘弁してもらっている。
顔が売れるのはまずい。
道場には綾羽もついてくるようになった。
やはり、怪物騒ぎで鍛錬の必要性を感じたのだろう。
綾羽はガジン仕込みの護身術が得意である。
護身術といっても、かなり実践的な技で、
少し変化させるだけで、かなり攻撃的なものになる。
さすがに、リングデビューしているような男たちにはかなわないが、
練習生程度の相手だといい勝負をする。
ガジン仕込みの綾羽のパンチはすごいぞ。
体重は50kgないと思うが、そんなのものともしない。
脱力して全体重を乗せる、とか説明してくれるのだが、
とにかく、恐ろしい勢いのパンチが来る。
100kg超の練習生もいるが、みんなふっ飛ばされる。
最初の頃はみんな綾羽の相手を嬉しそうに務めていたが、
近頃では尻込みするようになった。
ただ、綾羽・碧空がいることで、道場に通う練習生が増えたと、
道場主が喜んでいた。
都会の繁華街を歩けばスカウトが列をなす、という噂の持ち主達だからな。
それから、オレが全然かなわない中津古武術の城間師範。
数ヶ月に一回ぐらい訪れて稽古をつけてくれる。
『考えるな、感じよ』
が口癖なんだが、オレにはさっぱり理解できない。
オレは色々強くなっているはずなんだが、師範にはまるで通用しない。
学業の方は、コースに分かれたので比較がしにくい。
しかし、今度は大和国内での勝負になる。
夢露とルキアは予備校主催の全国統一模試で一桁だった。
オレからすると、彼ら以上にいい成績をとるやつがいることに驚いたが。
輝星・碧空も成績上位者が掲載される冊子に科目別で名前が載っていた。
全国300位以内ということだから、たいしたもんだ。
オレは、というとちょっと困ったもんだ。
困ったと言えば、瑠輝亜は校内でオレたちと一緒にいる時間が増えた。
そのことで取り巻きたちからやっかみが飛んでくるようになった。
そもそも、瑠輝亜が男のそばにいることが我慢ならないらしい。
ましてやしゃべったりするなんて。
カミソリを同封して送ってくるなどという狂信者もいたので、
オレはしっかり“指導”してやった。
いや、オレがしたんじゃない。
瑠輝亜に頼んだだけだ。
彼女はある程度の精神操作ができる。
彼女へのストーカーが多いので身についた技である。
狂信者はぼんやりとした性格に変貌した。
激しやすい性格が改善されてよかったんじゃないか。
不良ランキングの方は、去年の怪物騒ぎのあとは盛り上がらなくなった。
不良云々といっても、怪物の前には無力だ。
武装した軍人がやられて消滅してしまうのである。
サイト“アウトロー”も随分と過疎化した。
もともと、若いときの流行風邪みたいなものだから、
遅かれ早かれこうなったと思う。




