第3部 日常が戻ってきた
【第3部 日常が戻ってきた】
騒動から半年がたった。
復興は完全にすんだ。
被害を受けた自治体は、これを機に都市計画を進めるところが多く、
都市の魅力を大幅に増やしたところが増えた。
K市はさして変わりがない。
ただ、魔狼・魔烏の警備を強化したお陰か、
治安が随分と良くなった。
オレたちは、ルキアビルで生活することになった。
関係者含め、25名いる。
もちろん、全員帝国の生き残り組だ。
オレたちは相変わらず高校に通っている。
高2の終わりで、大学進学を考える時期にきていた。
高校3年になると、文系と理系、国公立と私立、
2種類の選択でコースが分かれるようになった。
国公立文系とか、私立理系とかだ。
『おまえら、コースどうするの?』
『私は国公立文系』
これは綾羽だ。彼女は成績がベスト10から落ちたことはない。
夢露や瑠輝亜ほどではないが、彼女もかなり優秀な生徒だ。
『僕は物理科かロボット工学だから国公立理系』
夢露は今の段階でもどの大学でも合格しそうだ。
『私は、綾羽と同じ大学に行くつもり』
『碧空、お前の成績じゃ無理なんじゃないの?』
『ふふん、私、去年の秋から塾に通い始めてるの』
実際、碧空はベスト20を狙えるところまで成績が向上している。
『おめーだけ激しく落ちこぼれてるんだよ』
輝星も塾に通い始めている。
輝星は半年前はオレに敬語つかったりヨソヨソしかったが、
あっという間に昔のような喋り口になった。
で、大学は言うまでもない。
碧空と同じで、綾羽と同じ大学志望だ。
『私はできれば煌人様と同じ大学で』
おお、瑠輝亜は嬉しいことを行ってくれる。
まあ、彼女はオレの護衛ポジションだからな。
オレはと言えば、大学どころか高校もドロップアウトしそうだ。
『オレは大学行かずに世界をうろつきたいなー』
『何、馬鹿なこと言ってるの。できるわけないでしょ』
碧空に怒られた。
そうなんだよな。
1年前ならば、それは夢として通っただろうが、
今はもう無理だ。
それどころか、この街から遠く離れることすら難しい。
いや、もっと根源的な問いがある。
オレたちは2万年の眠りから覚めて、何をすべきなのか?
守るべき故郷はない。
皇民もいない。
部下はいる。
しかし、ここに至って彼らがオレに忠誠を誓う必要があるのか。
帝国を復活させる?
なんのために?
オレたちは実に中途半端だ。
だが、他の現代人とともに歩むのも難しいだろう。
オレたちは普通の人間とは違う。
こんなスキル持ちの人間は他にはいない。
隠れて生きて行くべきか。
隠さないのならば。
不良ランキングの拡大した世界がオレたちを待ち受けるだろう。
オレたちの個人事情などお構いなしに、
大勢の人間がオレたちに絡んでくる。
積極的にオレたちのスキルを使えば。
それはまさしく魔王の世界だ。
オレたちの世界が現出する。
オレにはその意欲も意義も見いだせない。
それはともかく、オレの成績はぐんと上がってきた。
何か特別なことをしているわけではない。
だが、ルキアビルでプレートを吸収してから徐々に記憶や能力が回復しつつある。
それとともに、オレの様々なステータスが向上している気がする。
それは、他のみんな、綾羽、碧空、夢露、輝星も同じだと思う。
『とりあえず、オレも夢露と同じで理系国公立かな』
『ああ、私も賛成です』
珍しく、瑠輝亜が個人的な意見を言ってきた。
彼女は女の少ない学科に行きたいらしい。
瑠輝亜は学校へ行くとずっと取り巻きに囲まれたままだ。
どうやら、彼女自身も億劫に感じているようだ。
でも、男が多くても大変だと思うけど。
『薄く結界をまとうことでそれはなんとかなります』
瑠輝亜いわく、男は遠ざけても支障はないらしい。
しかし、女は対応をしっかりとらないと駄目らしい。
うーん、なんとなくわかるような。
住まいは全員が完全にルキアビルになったが、
オレの出入りは地下道を通って前の家で行っている。
綾羽もそうだ。
瑠輝亜は相変わらずRV車で登校している。
瑠輝亜いわく、ストーカー対策なんだと。
体育をパスするのは病弱に思わせたいからだそうだ。




