K市ルキアビル
【K市ルキアビル】異変3日め
テレビやネットでは、怪物の話題で一色であった。
しかし、現地は壊滅状態。
ヘリを飛ばそうにも、撃ち落とされる可能性が強い。
軍の攻撃型ヘリコプターでさえ全機撃ち落とされたのだ。
情報はO市からの避難民と、
わずかにO市にとどまっている逃げ遅れた市民からのあやふやな情報のみで、
どこを見ても同じような内容しかやっていなかった。
ただ、ゴブリン最前線情報だけは役にたった。
台風情報のように、ゴブリンがどこにいるのか、どこへ向かっているか、
はほぼリアルタイムに近い形で情報が流れてきた。
何しろ、ゴブリンから逃げ回る市民がネタ元だ。
『群れは2グループに分かれてるみたいだけど、2つとも東進しているわね』
『今日中にこの街にもゴブリンがやってきそうですね』
『ああ。瑠輝亜、この場所が漏れてるってことはないよな』
『確実とは申しませんが、発見されていないと思います』
瑠輝亜が鈴を転がして返答する。
彼女の声には気持ちを落ち着かせる何かが含まれているみたいだ。
『まず、魔烏を飛ばして情報を収拾しましょう』
『そうだな。魔烏や魔狼とは遠距離でもやり取りができるからな』
早速、魔烏を解き放った。
魔烏とは、式神による無線機とモニターでやりとりをする。
こちらからは無線機で魔烏に指示を。
魔烏からは視覚静止画像を送ってくる。
モニターには地平の一角を映し出す。
そこは緑に覆われていた。
ゴブリンの群れだ。
一体、何匹いるのか。オレたちは固唾を飲んだ。
『何匹いるのかわからんが、数万匹はいそうだな』
『これは迂闊に手がだせないね。無人の荒野とかなら、広範囲を殲滅する式神を作成できるけど、人家のある状況だと無理だね』
『オレらも大人しくしているといっても、いつかはバレるんじゃないか?このビルには結界で守られている。ゴブリンはどうかしらんが、高位の魔物がきたら怪しく思われるだろう』
テレビでもゴブリンの一部がK市方面に向かいつつあるとの情報が出て、ルキアビルの外は避難する人たちでごった返すようになった。
すでに車は麻痺状態だ。
鉄道も動かなくなっている。
『多分、根源は本拠地の扶桑山の大穴ですかな』
ガジンが発言する。
『うん、あそこから湧いてくるゴブリンをどうにかしないとな』
『しかし、大量のゴブリンが厄介ですね』
『ゴブリンに統率者がいるという可能性は』
ああ、オレは記憶が蘇ってきた。
ゴブリンに限らず、こういうスタンピードのような行動を起こす場合、魔物の中心に群れをある程度統率するリーダーがいる場合が多い。
『おお、2万年前の記憶が蘇ってきたぞ。思い出せよ、北の外れで突然ダンジョンができて魔物が溢れかえってきたときを』
『ああ、カシマル・スタンピードか』
『そうだ。カシマルと名付けたダンジョンから気が狂ったように様々な魔物が飛び出してきて、オレたちが苦労して討伐した事件だ』
『なるほど。怒涛のような進撃を見せていた魔物だったが、偉そうな顔をしてた魔物、オーガだ、アレをやっつけたら途端に魔物が迷走し始めたんだったな』
『よし、まずこの集団の核を見つけるか』
『そうね、この勢いを止めてから、しんどいけど各個撃破かしら』
『特に上位の個体だな。現状ではホブゴブリン』
『よし。じゃあ、魔烏。その集団のリーダーらしき個体を発見せよ』
魔烏はうろうろしてみたが、よくわからない。
静止画像を何枚も送ってくるので、オレたちもそのたびに検討してみた。
そのうち、なんとなく群れを統率してそうな集団を見つけた。
明確に指示をだしてそうな個体はいないが、方向転換をはかるとき、
中心に1匹のホブゴブリンがいる。
『その集団に強力な擲弾を撃ち込んで見るか』
このゴブリン集団は片道2車線の国道○号線を東進している。
国道○号線がK市に入るあたりにあたりをつけ、
中途に狙撃しやすいビルを選定した。
ここから5kmほど離れた場所にある。
強力な擲弾は何発もある。
夢露自慢の擲弾だ。
『瑠輝亜とノワール、ついてきてくれ。オレと瑠輝亜は式神銃所持。突撃銃仕様な。オレは擲弾銃をもっていく。あと、魔烏10と魔狼10』
『『了解しました』』
記憶が少しずつ蘇ってきたが、瑠輝亜は近接戦闘の手練れだ。
刀という武器を使う。腰に柄のみぶらさげている。
戦闘時には柄から剣先が伸びてくる。
オレは基本的に素手。
ただ、能力が全開したら、かなりえげつない技が使える。
ノワールは盾だ。空中にシールドを自在に張れる。
だから、基本陣形は先頭がノワール。
後ろにオレと瑠輝亜となる。
ノワールはタンクでもある。
挑発スキルを持っており、敵の攻撃を一手に引き受ける。
ただ、これはあくまで基本陣形であって、状況により臨機応変にかわる。
2万年前の記憶が少しずつ蘇る。




