扶桑山キャンプ3
【扶桑山キャンプ3】異変初日
5分ほど休憩したあと、レンタルサイクリングを調達しにいく。
現在、11名で行動している。
オレ、綾羽、碧空、夢露、輝星、取り巻き二人、瑠輝亜、取り巻き3人だ。
ステーションを3箇所周り、電動自転車を確保した。
すでに店員はいないが、機械で自動的に貸出していた。
返却については後で考えよう。
チェーン店でかなり広範囲に展開しているから大丈夫だろう。
『よし、行くぞ。輝星は殿頼むぞ』
オレたちは早めに気づいてラッキーだったかもしれない。
オレたちが自転車を借り終えると、どっと人が集まってきた。
自転車狙いの人たちだ。
何しろ、公共交通機関は全休だ。
車はひどい渋滞で役に立たない。
下手するとゴブリンが襲いに来るかもしれない。
早くここらへんを離れなくては。
大急ぎで自転車を走らせた。
ここらあたりは人家が少ない。
山間の道を20kmほど走ると比較的大きな街についた。
さすがにこの辺りまでくると大きな騒ぎは起こっていない。
だが、電車が動いていないのでタクシー乗り場では行列が予想される。
レンタルサイクルは地元中心のチェーン店で、
この街より東には店がなかった。
バッテリーにも不安がある。
オレたちは道端でタクシーを拾って地元に戻ることにした。
レンタルサイクリングの別の営業所に行き、自転車を返却する。
歩きつつ、タクシーを拾う。
まずは瑠輝亜さんと取り巻き。
それから、輝星たちを、と思ったら、
『オレは殿だ』
おお、なんか逞しいな。
よし、輝星取り巻きと碧空、綾羽を先にするか。
最後はオレ、夢露、輝星だ。
次々とタクシーに乗り込む。冷房がきいており、ホッとする。
『なんとか助かったか?』
『ああ、へとへとだよ』
『兄ちゃんたち、T市のほうから逃げてきたんか?』
『ええ、そうです』
『電車とか動いてないでしょ。よく来れたね』
『車もだめだから、電動自転車かりました』
『ああ、そりゃ判断がいいね。ところで怪物が出たって本当?』
『ええ。緑色の醜い猿みたいな生物が大量に。人を殺しまくってました』
『緑色?ファンタジー映画にでてくるみたいな奴?』
『まさにそれ。ゴブリン』
『マジか。タクシー仲間と連絡とってるんだけど、T市方面はまるで連絡がつかなくなってるんだよ。みんな、車降りて逃げ出してるんだろうね』
『街なかは黒煙がいくつもあがってたし、大渋滞で車はまるで動いていなかったですね。車を乗り捨てる人が大量にいました』
『タクシー会社でもどうするか検討中でね。避難しようかって話になってる』
『オレたち、ギリギリ間にあったってとこですか。多分、数時間で避難民がこの街に押し寄せてくると思います。僕ら、自転車の分だけ早めに動けたけど、避難民はすごい数でしたよ。ひょっとしたら、怪物も』
運転手は無線で状況を会社に伝達した。
折り返し、会社からオレたちをおろしたら、そのまま退避との指示があった。
『私も君たち乗せて助かったかもしれんね。私の家族にも連絡するよ』
スマホから状況を探ろうとするが、
まさしく情報が錯綜して、という感じだった。
情報が役に立たない。
ただ、T市が壊滅状態に陥っているのは確かなようだ。
何しろ、T市は通信途絶になっている。
それからはT市のような渋滞はなく、2時間ほどでオレたちの街についた。
オレたちの街は平穏だった。
100km向こうで大騒動がおきているなんて信じられなかった。
タクシーが到着すると、家の前で綾羽と碧空が待っていてくれた。
オレ、夢露、綾羽、碧空の4人と何故か輝星がオレの家に集まった。
輝星はどうやらナイト気分のようだ。
こいつはチャラいしずるいとこもあるが、案外生真面目だ。
猫のノワールに餌と水をやってひと息つく。
ペットシーターに電話しなくちゃ。
テレビもネットもこの話題で沸騰していた。
ヘリコプターを飛ばしている局がいくつかあったが、全機墜落していた。
撃ち落とされた疑いが濃厚らしく、大騒ぎになっている。
テレビを見ていると、チャイムがなった。
なんと、瑠輝亜さんがインタフォンに出た。
『相談があります。私を入れていただけますか』
オレはうろたえながら、彼女を迎え入れた。
どうしよう。汚い家なのに。
お客さん用の高級茶、どこかにあったよな。
ケーキとか買ってこようか。




