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扶桑山キャンプ2

【扶桑山キャンプ2】異変初日


 5分も逃げると、退路の方向で騒ぎが起きている。

 オレは車の上に登り眺めてみた。


『おい、ゴブリンの集団が前方にいる。後ろにもゴブリン。挟まれたぞ。夢露、やるか?』

『うん、こうなったら仕方ない。助かることが先決だ』


 夢露は持参してきた登山ストックに式神をつけた。

 目立つのを避けるため、銃に変化しないようにしてある。


『夢露、オレがやってやる。貸してくれ』

『スナイパーライフル仕様。5発で式神チェンジ』


 夢露はそう言いながら、オレにストックを渡した。


 夢露からストックを受け取ると、前方のゴブリンに狙いをつけた。

 式神にタッチする。


『ボン』


 僅かな発射音を出して、火球が発射された。

 火球は速度が速いから瞬時にゴブリンに到着する。

 火球は正確に狙いを定めたゴブリンの額を貫いた。

 瞬時に霧となって消滅する。


 周りからみたら、オレが登山ストックで痛い真似してるとしか見えないだろう。


 オレは連続してゴブリンを撃ち抜いていった。

 数は10体程度いた。

 5発撃って弾丸がなくなると、式神は自然に消え去る。

 次の式神をストック押し当てるだけで、装填完了だ。

 ゴブリンは全て霧となって消滅した。


『初めての実戦だが、この銃、凄い性能だな』

『キラト、それ何なの。いきなり車の上に登って。軍隊ごっこか何か?』


『おまえら、こんな事態だから説明しておく。これは登山ストックじゃない。本物のライフル銃だ。オレはこれで前方のゴブリンをやっつけた』

『何ばかなこと言ってるの』


『そうだよ、そんなフザけたことよく言えるな。俺らを馬鹿にしてんのか?』


 いつのまにか、輝星と取り巻き数名がいた。

 瑠輝亜さんとその取り巻き数名もオレたちについてきたようだ。


『輝星、このストックもって構えてみな』

『そんな恥ずかしい真似できるかよ』

『いいから。紙に触るなよ』


 しぶしぶ、輝星はストックを構える。


『あそこの木の上狙って……十字ラインが浮かび上がるだろ。光ったらターゲッティング完了だ。横についている紙に触ってみな』


『こうか?』

『ボン』


 僅かな音とともに火球が発射された。


『ガサッ!』


 木の枝が折れて落ちてくる。


『おお、マジか』

『わかったろ。時間がない。おまえら、何か棒もってたら出せ。傘より太い棒だ』


 取り巻きの1人が同じような登山ストックを差し出した。

 夢露は素早く登山ストックに式神を馴染ませる。


『輝星、お前に殿をまかせる。殿の意味はわかってるな。みんなを守れ』


 オレは輝星に登山ストック=式神ライフルと替えの式神を渡した。

 輝星に素早く式神の弾倉チェンジを教える。


 

 先頭はオレと夢露。

 夢露も武装した。


『キーくん、どういうこと?』

『説明はあと。まずはここから脱出することが先決だ』


 走りながら相談をする。


『かといっても、どこ行けばいい?』

『うーん、まずは直近の高速バス停かインターチェンジ。高速道路から降りるのが先決だろ。それから、鉄道の駅とか』


『駄目だ、このあたりの鉄道、止まってるぞ』


 スマホを見つつ、誰かが叫ぶ。


『じゃ警察署か?』


 幸い、高速バス停までは1kmほどだった。

 が、路上の人々が大パニックを起こして右往左往している。


 オレたちは混乱する人々とともに、高速バス停にたどりつく。

 高速道路を降りて警察署方面へ向かう。


 しかし、ところどころ黒煙が立ち上っている。

 市街地からは大量の人々が逃げ出してきた。


『おまえら、怪物が街なかで暴れている。早く逃げろ』


 オレたちは引き返すしかなかった。


『どうする?』

『西と南は怪物。北は山。東へ行くしかない』


 とにかく、オレたちの街方面をめざすことにした。

 街はここから東方約100kmのところにある。



 1時間ほどパニックを起こしている避難民たちに混ざって郊外に出た。

 脱出しようとする車で路上は大渋滞をおこしている。

 車を乗り捨てる人が続々とあらわれ、車では二進も三進もいかなくなっている。


『ちょっと休憩しようか』

『これからどうする?』

『スマホで見たけど、交通機関全面ストップよ』

『鉄道駄目、車駄目』

『オレとしては家に戻りたい。色々準備ができる』


 オレの家には色々武器があるからな。

 

『だが、100km以上離れているぞ。1日じゃムリだ』

『水と食料ね』


『コンビニがあるからそこで手に入れよう』

『騒動になってなきゃな』


『よし、とりあえず隣町を目指すぞ』


 梅雨明けの今は1年で一番暑い日が続く。

 太陽の照り返しが強く陽炎の立ち上る中をオレたちは汗だくで歩いていく。


 メイン道路を外して30分も歩くと、人の群がっていないコンビニを見つけた。


『みんな、大丈夫か?』


 歩きなれていない者ばかりだが、

 キャンプへ行く途中だったから、靴はスポーツシューズだ。

 しかし、荷物はバスに置いてきてしまった。


『金がなければ、だしてやるぞ。好きなものを購入しろ。この先、買えるかどうかわからんからな。遠慮するなよ』


 飲み物と食料、それから傘とかタオルとかを購入した。


『えーと、瑠輝亜さん、歩き大丈夫ですか』

『何よ、キラト。美人には優しいのね』


『碧空、違うって。瑠輝亜さん、体育休んでるの知ってるだろ?』

『私は大丈夫です』


 おお、初めて彼女と会話したぞ。

 綺麗な声だな。暑さがふっとぶわ。

 それにしても、彼女、汗一つかかないのは本当だった。


『キーくん、そばにレンタル・自転車の店があるわ』

『おお、ナイス、綾羽。全員分借りられそうかな』


『一度じゃムリそうだけど、あちこちにステーションがあるわ』

『まずはスマホで予約ね……OK』


『おし、みんな固まって行くぞ』



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