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扶桑山キャンプ1

【扶桑山キャンプ1】異変初日


 夏休みに入った。

 夏休みの数日を使って、オレたちの高校はキャンプを行う。

 高2限定だ。


 2泊3日の予定である。

 オレは綾羽父とかなり実践的なキャンプによく行くから遊びみたいなもんだが、多くの生徒にはキャンプは物珍しい。


 だいたい、電気炊飯器で米を炊くことしか見たことのない連中が多い。

 魚だって、切り身が海に泳いでいると信じていたりする。


 そういうのがキャンプに来てみんなに笑われるわけだ。

 学校と家との往復以外の生活を知らない奴には効果的な体験だろう。



 場所は扶桑山の麓にある湖のそばのキャンプ場だ。

 扶桑山は大和国の誇る名山で霊山としても名高い。


 キャンプ場まで、学校からバスで数時間である。

 集合場所の高校のグランドでバスに乗り込む。


 オレは夢露と席が隣同士。

 周りからも親友認定されるようになった。

 夢露は基本的に浮いているから席はすんなり決まった。

 オレの後ろには何故か綾羽と、もっと何故か碧空が座っていた。


『碧空、お前クラスが別じゃねーか』

『かわってもらったの』


 かわってもらったのじゃねーよ。

 碧空は本当に綾羽大好きだ。


 まあ、綾羽の後ろには輝星が座っている。

 奴も綾羽大好きだが、恋愛感情ではなく、

 崇拝の対象みたいだ。



 騒動があったのは、瑠輝亜の隣の席だ。

 ファンクラブの連中が騒動を起こしている。

 女子なのに、拳で決着をつけたようだ。

 ウチの女子は怖い。



 ウチの高校のバスにはお決まりのガイドさんはつかない。

 昔から、ウチの学生はガイドさんの話を一切聞かず、

 バス会社に悪評がたっている。

 だから、自主的にガイドさん抜きにしているらしい。


 オレたちはそんな事情を知るよしもなく、バス内で観光気分だ。

 ヘッドフォンでの音漏れを嫌がられているやつ、

 歌うやつ、踊るやつ、お菓子の取り合いしてるおこちゃまもいる。

 先生が注意しても聞きやしない。



 扶桑山が近づいてきた。

 おお、という声が上がる。

 さすが、世界に誇る名山だ。

 円錐型の綺麗な形をしているばかりか、

 そばで見ると得も言えぬ神秘的な迫力がある。


 だが、ここでとんでもないことが起こった。

 みんな感激して扶桑山を眺めていると、突如前方が眩しく発光した。

 扶桑山の麓から大爆発が起きたのだ。


 すぐに爆発音がバスを揺るがす。

 みるみるうちに噴煙が立ち上り、扶桑山を覆い尽くそうとしている。



『おいおい、ヤバすぎんだろ』

『煙で扶桑山がみえねーぞ』

『うわっ』


 直後に爆風がバスに到達し、バスのハンドルが取られそうになる。

 バスは路肩に緊急停車した。


『どうしましょうか』

『現在は高速道路ですからな。方向転換できません』

『インターチェンジまで行って学校に戻るしかなさそうですな』

『うむ。キャンプは中止の方向で。学校と連絡を取ってみます』


 オレたちは窓に張り付いて爆煙を眺めるもの、スマホから情報を得るもの、

様々だ。


『生徒の皆さん。学校と協議の結果、残念ながらキャンプは中止し、学校に戻ります』


 この決定に不平を言うものはいなかった。

 むしろ、無事に帰れるのか心配するものが多かった。

 バスは運転を再開し、直近のインターチェンジに向かう。



 だが、中途で路上は大渋滞を起こしていた。

 全く車が動かない。

 うんざりしていると、進行方向からこちらへ人々が次々と走ってくる。


『へっ?どうしたんだ?』

『なんだろう、緑色の何かが車の上に乗っかってるみたいだけど』


 緑色の何かは少しずつこちらに近づいてきた。

 双眼鏡をもっているやつが叫んだ。


『あれ、まさかゴブリンか?』

『なんだと?ちょっと双眼鏡貸せよ』


 確かにそうだ。

 映画でみたことがある。

 低い背丈。緑色の体。つぶれた醜悪な顔。突き出た腹。

 まさしく、ゴブリンそのものだ。


『いつの間にファンタジー世界に突入したんだ?』


 ゴブリンらしき生物が前方に大量に湧いている。

 なにやら武器のようなものをもって車の上にのっかったり、

 ガラス窓を割ったりしている。


 どうすりゃいいんだ。

 ゴブリンたちは肉眼で視認できる距離まで近づいてきた。

 奴等の声と思われるギイギイという耳障りな音も聞こえてきた。


 奴らは車から人を引っこ抜いて襲いかかっている。


『なんだよ、あれ』

『人間が粉になって崩れ落ちてるぞ』

『なんだよ、怪物に殺られると粉になるってか?』


 バス内は瞬時にパニックに陥った。

 いや、周囲が全てパニックだ。


 前方からは次々と人々がこちらに逃げ出している。

 みんな、恐怖で顔がひきつっている。

 大声で叫んで地べたにへたりこんでいる人もいる。



『ボン!』

『ボン!』

『ボン!』


 いくつかの車が爆発炎上し始めた。

 巻き添えを喰らう人々。

 そこへゴブリンが群がり、やはり人が粉となって消滅していく。



『キーくん、どうしよう』

『逃げるしかねーだろ』


 先生は落ち着いて、なんて言ってるが、

 その顔は混迷を極めている。

 落ち着いてなんかいられるわけがない。

 バスにいたら、奴らにやられる。


 みんな我先にバスを降りて、バスの進行方向と逆の方向に逃げ始めた。

 窓から飛び降りる奴も多い。


 オレたち、つまりオレ、夢露、綾羽、碧空も固まって逃げ出した。

 みんな必死だ。



■ゴブリンとは■


 通常、魔物ランクでは最低に近い魔物の入門編ともいうべき生物。

 背は100~140cmほどで小学生ぐらいだ。

 体が緑色なのは映画でお馴染み。

 猿といいたいところだが、ずっと醜悪で嫌悪感を催す顔。突き出た腹。


 だが、この世界のゴブリンは弱くない。


 例えば、握力は100~150kgはある。

 垂直跳びは2mに達する。

 100m走では軽々10秒を切る。


 普通の人間では素手では到底かなわない。

 複数の大人でも無理だ。

 身体能力も高いが、非常に凶暴であるため、人間では萎縮してしまうし、

 人間は傷つけられると途端に継戦能力が下がるのに対して、

 ゴブリン含む魔物は戦闘力が高まる。




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