球技大会
【球技大会】
ウチの高校では毎年5月になるとクラス対抗の球技大会が行われる。
サッカー、野球、バレーボール、テニス、バスケが対象種目となる。
男女混合でどういう編成でもいいし、部活所属者が出場してもいい。
学年別ということもない。
制約がないのだ。
だから、部活所属者は積極的に所属する種目に出る。
たいていは高3のクラスが優勝をかっさらうし、総合優勝も高3が取る。
ところが、オレたちの学年が入学したら異変が起きた。
オレのクラスが野球で優勝、総合でも2位になったのだ。
さすが、キラキラ世代と驚かれたものだ。
野球で活躍したのは、オレと輝星だ。
輝星はああ見えても運動神経バツグンだ。
自称スケーターで、公園で練習しているところを見たことがある。
見事なもんだった。
特に空中でくるくる回る技。フリップとかいう技らしい。
輝星はその最高難易度という技を軽々と決めていた。
輝星は、身長180cm以上、体重も70kg越え。
大柄で、決してスケーター向きではない。
あの手は小柄な方が都合がいいらしいからな。
その中で、あの実力。輝星は世界大会を目指しているという。
その輝星、中学時代は野球部のピッチャーだった。
将来を嘱望されていて、有名な野球校からいくつもスカウトがきたらしい。
中3の時は、全国大会準決勝でエラーが重なり、0対1で敗退した。
それでも輝星は仲間を責めるどころか、慰めたらしい。
そのエピソードでオレは輝星への見方を少し変えた。
高校に入って野球部から勧誘が来たが、もう野球はやめなんだと。
だが、輝星の中学時代を知っている取り巻きの推薦で球技大会は野球で出場。
高校生では素人はもちろん、部活経験者でも地区大会レベルのプレーヤーではバットにかすりもしない。
全試合ノーヒットノーランピッチングをしてしまった。
バッティングの方は、オレだ。
目立つのは不本意だが、どうもお祭り騒ぎに浮かれて自重をはずしてしまった。
なにしろ、オレにはボールが止まって見える。
どっかのレジェンドバッターの名言そのままでボールを狙い撃ちだ。
決勝など、当時の野球部のエースがマウンドにいたが、
全打席ホームランという偉業を達成してしまった。
スポーツ推薦で強豪大学からスカウトが来るレベルのピッチャーだったが。
そのあとしばらく、野球部からの勧誘がうるさかった。
だから、今回の球技大会は野球以外をしたかったのだが、
去年の活躍をみんな覚えており、オレと輝星はまたもや野球で出場だ。
『また、おまえとやるのかよ』
輝星はだるそうに言う。
だが、オレは知っている。
奴は密かに燃えていることを。
ああ見えて、奴は意外と熱血タイプだ。
そうじゃなければ、スケートボードをあんなに熱心に練習しない。
ただ、爽やかスポーツマンじゃない。
根に持ちやすいし、勝利のためにはなんでもやる、という面がある。
今年も楽勝、と思っていたが、キャッチャーが突き指をしてしまった。
野球部の奴なのだが、輝星の球は速すぎた。
キャッチャーどうする、ってなんでオレを見るの。
『輝星の相方なんてやだよ』
『そりゃ俺のセリフだわ』
そういうわけにもいかず、オレたちはいやいやバッテリーを組んだ。
そしたら、輝星の野郎、ムキになって投げ込んで来やがる。
オレも意地になって、さも簡単そうに捕ってやったわ。
お互い意地を張り合ったまま、気づいたら全試合パーフェクトピッチングどころか、全打席で三振奪取。バットにあたったのが2回だったか。
当然、今年も優勝してしまった。
オレもバカスカホームラン打ったしな。
後で聞いたんだが、野球部がスピードガンを持ち出したんだと。
そしたら、輝星の速球は軽く150kmを越えていた。
高校の球技大会レベルじゃないわ。
プロのドラフトにかかってもおかしくないな。
ある意味大人げない。
ああ、オレたちまだ少年だった。
輝星もキラキラ世代の1人なんだな。
まあ、同世代にはMLBでホームラン王とセーブ王を同時受賞した奴がいる。
そいつに比べれば、輝星は小粒って言うと奴が怒るか。
そんなわけでってどんな訳が知らんが、輝星は熱血半分ずるさ半分というやつだ。
中2のときにオレへの仕返しに10人以上で取り囲んだように、
決して爽やか系じゃない。
勝負事に貪欲で、直球が駄目ならピンボールってとこがある。
こいつとは色々あるんだが、決して嫌いなタイプじゃない。




