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6/6

大食い令嬢はワンコに愛される

 私はミハイルと正式に婚約することになった。

 レオも祝福してくれて、気前良く「体脂肪を魔力に変換する王冠」をプレゼントしてくれた。太っ腹だわ。

 お父様も、幼い頃から仲の良かったミハイルが相手ならと満足気な様子で、良かったと心から安堵した。


 だけど——……ミハイルに告白されてから気になっていることがあるの。


「ミハイル、ひとつ聞いてもいいかしら」


「なあに、シアちゃん」


 珍しい外国のお菓子を持ってきたミハイルとティータイムをすることになって、私はコレを機に思っていることをぶつけてみる。


「ミハイルは、いつから私のことが、す、好きだったの?」


「もう、ずっと前からだよ〜」


 ミハイルは、いつものように、にっこりと笑うと、紅茶のカップを置いた。


「ねぇ、シアちゃん覚えてる? 初めて会ったとき、僕がこの癖毛を馬鹿にされてたこと」


「ええ、レオのお誕生日会の時よね? 私、お父様を困らせるくらい大激怒したから覚えてるわ。懐かしいわね……」


 あれは確か5、6歳の頃だったわね。

 私はお父様に引き取られたばかりの時で、同い年くらいの子供達がいると聞いて、友達作りに励もうとしたの。

 だけどそこで見たのは、大人達の目を盗んで、ひとりの男の子を取り囲んで意地悪をしている光景だった。

 私も食い意地がはっていると、よく馬鹿にされていたから、他人事とは思えなかったのよね。

 そして、その男の子が、ミハイルだった。


「あの時、シアちゃんが助けてくれて、言ってくれた言葉が嬉しくて、それからずっとシアちゃんだけが好きだったんだよ〜」


「私が言った、言葉……」


 ええ、確かに言ったわね。

 ミハイルの癖毛を()()()()()だと馬鹿にしていたから。


 ——『おかしいよ! ほんとうの子犬なら、みんなカワイイっていうのに、どうして子犬みたいな髪の毛は好きになれないのッ!?』


 わあああっ、思い出したら恥ずか死ぬわ。

 子供だからこそ言えた台詞ね。まさかミハイルが覚えているなんて。


「シアちゃんに出会ってから僕は幸せになった。だから今度は、僕がシアちゃんを一生幸せにしてあげるね〜」


 そう言って、ミハイルは何故か私の隣に座ってくる。それも肩が触れ合うくらい近くに。


「シアちゃん、大好き、大好きだよ……」


「う、うん。知ってるから」


 甘く耳元で囁かれ、ドキドキしてしまったのが悔しくて、私はミハイルの髪をくしゃくしゃと撫でた。肩を揺らしてミハイルが笑っている。

 思う存分ふわふわを撫で回して、満足したところで離れようとした時、ミハイルに手首を掴まれ、ぐいっと引き寄せられた。


「えっ!?」


 驚いて見上げると、視界いっぱいにミハイルの顔があって、熱っぽい眼差しで距離を縮めてくる。


 あら、これは……アレよね?


 私はぎゅっと瞳を閉じた。心臓の音がうるさい。


「……ん……っ」


 くちびるに押し当てられた柔らかなモノ。

 

「シアちゃん、もっと……」


 離れたと思ったら、今度は強く噛み付くように覆われて、呼吸が苦しくなってしまう。

 

「ちょ、……ミハ……っ」


 胸を押してもビクともしない。

 ミハイルに求められるのは、う、嬉しいけど、初めてだから手加減してほしいわ。

 ちゅっ、とくちびるを吸われたあと、今度はあごを持ち上げられて、深く、執拗に、舌をからませてくる。

 あら、さっきお菓子を食べていたせいか、とても甘くて美味しい味がするわ。


「はっ……シアちゃん、かわいい……」


「も、もう、無理……っ」


 ワンコの甘さに、身も心もぐったりだわ。

 そんな私を膝の上にのせて、ミハイルは嬉しそうにお菓子を口元まで運んでくれる。

 

「あ〜、早くシアちゃんと結婚したいな〜」


「そ、そう……」


「新婚旅行は、食べ歩きの旅にしようね」


「とても魅力的な提案だわ」


 どこまでも私に尽くしてくれるミハイルの愛に、私は胸もお腹もいっぱいになりそうだと思った。


短く拙いお話でしたが、お読み頂き有難うございました。

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