ジャパンカップ翌日
先週はプライベート的な要因で更新できませんでした。申し訳有りません。
そして今回の内容は大分短いです。
《ジャパンカップ制覇のヴェンデッタ、次走有馬記念で秋古馬三冠制覇へ》
《ヴェンデッタ、来春はドバイで始動か!シャルルマーニュ陣営からのリベンジ受諾!?》
「来年、ドバイ行かないと叩かれそうな記事ですね」
「脱鞍所であんだけ堂々と話してりゃそうならぁな」
美浦笠原厩舎では笠原 雅道と田中 翔哉が昨日行われたジャパンカップの記事を読みながら談笑していた。
「で、実際のところフクオは来年ドバイなんですか?SNSを覗けば春天連覇を望む声も多いですよ?」
「そこはオーナーである水嶋さん次第だが、何事もなければドバイになるんかなぁ。俺、海外遠征の経験ないから不安しかないわ」
ここで笠原達が言っているドバイとは、毎年3月下旬の土曜日にアラブ首長国連邦のドバイにあるメイダン競馬場で開かれる国際招待競走の開催日、および同日に行われる重賞ドバイワールドカップミーティングである。また、ドバイワールドカップデーやドバイワールドカップナイトと呼ばれる事も多い。
ドバイは3月下旬、天皇賞(春)は5月上旬。レース間隔自体はキツくはないが、海外遠征のによる帰国後の検疫が輸入検疫が5日、着地検査が3週間と1月近くかかる。
このような長い隔離期間を設けるのは国境を越えて家畜伝染病を運んでしまう危険性を防ぐためだ。
一定期間の隔離が防疫上の水際対策になることは2020年、中国武漢で確認され世界中に流行した新型コロナウイルス感染症の例からもわかるだろう。
そのような長い隔離中は当然普段通りの調教を施すことは難しい。もちろん不可能ではない。着地検査を京都競馬場に指定し、そこで調教を行い天皇賞(春)に出走することは可能だ。
だが、海外遠征による馬への負担や調整の難しさからドバイ→天皇賞(春)のローテーションを実行する陣営は皆無なのである。
「フクオを凱旋門賞に連れていこうとした人が何を弱気な」
「それを言うな。あの時は藤村さんとこに便乗する形を取ればいけると踏んでたんだよ。それに、ドバイに行くのなら色々考えんといかんこともある」
「というと?」
「1つ目は来年のフクオのローテーションだな。来年もフクオが今年のようなパフォーマンスを出せるかはわからんが、全てうまく行けばまず間違いなく凱旋門賞かBC挑戦なんて事になるだろう。
その時陣営の海外での対応がお粗末すぎて全然駄目でしたなんて事になったら目も当てられん」
「そういやシンボリルドルフも海外遠征は馬主と厩舎の確執で散々だったらしいですね」
「それとは時代も状況も違うから同列に語るのは無理があるが、要はうちのスタッフは海外経験がないわけだ。だから、ドバイ行きは俺らにとっても海外経験のいい機会何じゃないかと思う」
笠原厩舎はフクオの菊花賞が初のGⅠ制覇だった。それまでは重賞馬を数頭出した程度で海外遠征など現実的ではなかったのだ。
「あ、俺そういやパスポートすらないっすわ」
「マジかよ、海外行く機会無かったのか?」
「無かったですね。競馬学校入ってからはそんな時間ありませんでしたし。
それで、1つ目はローテーションと言うか、スタッフのスキルアップというのはわかりましたけど、まだあるんですか?」
1つ目の理由が大体わかったので他の理由を促す翔哉。
「あぁ、2つ目がトニーだ」
「トニー?」
「先日飯田オーナーと話した結果、オーナーよりトニーはスプリントとマイルの両方で使っていきたいという話になってな。高松宮記念から安田記念のローテーションを提案されたよ」
「はぁ。まぁ順当なローテーションですね。高松宮記念前に1度叩く必要はありそうですが。それがどうしました?」
「わかんないのかよ、わざとか?フクオがドバイに行ったらどうやってトニーを仕上げるんだよ」
「・・・あ~」
ここでトニーと呼ばれている笠原厩舎のランドトニーは今年の安田記念を優勝した笠原厩舎2頭目のGⅠ馬だ。トニーはフクオと仲が良く、調教も一緒にやっている。
・・・というか、トニーはフクオが一緒でないと真面目に調教を受けない。馬なりなら問題ないが、負荷を強めるとものすごく嫌がる。それがフクオと併せでの調教ならどれだけ負荷を強めても真面目に調教を受けてくれる。
走るか走らないかをフクオがいるかいないかに依存しているにもかかわらずレースでは結果を残してくれるのだから不思議だ。
「フクオがドバイに行くなら3月上旬から検疫のため隔離しないといかん。そうなるとトニーの調教は単走か他の馬との併せになる。他の馬で騙し騙し調整していくしかないかぁ」
「もうトニーも一緒にドバイに行った方がいいのでは?招待も来るでしょうし」
「来るとしたらアルクオーツスプリントかドバイターフだろうが、直線1200mとか未知数過ぎるし、ターフは長いだろう」
基本的に日本競馬では直線レースを走る機会はない。唯一直線コースのみのレースを走れるのは新潟競馬場の俗に言う千直のみである。そのコースも最高グレードレースはGⅢアイビスサマーダッシュである。その為、日本馬はランクの高い馬ほど直線コースの経験が薄い。息を入れるタイミングがコーナーがほとんどの日本馬は直線1200mのレースで息を入れるタイミングがわからず凡走する場合が多いのだ。
もっとも、トニーのオーナーが国内のローテーションを告げてきたことから、ドバイの可能性は低そうだが。
「トニーに関しては今後対策を考える必要があるな。それよりも今はフクオの有馬記念について考えねぇとな」
「流石に不良の2400mは堪えたようで大分疲労が溜まってますね」
「水嶋さんには申し訳ないが場合によっては回避も考えんといかんな。もはやフクオはレースで勝つことを考えるだけの馬では無くなっている」
先程までのどこか浮わついた雰囲気から一変、現実的な話に移行していった。
先週の菊花賞はセイウンハーデスのお陰でとても見ごたえのあるレースになりましたね。
その中でもアスクビクターモアが一番強い競馬を見せてくれました。
明日の天皇賞(秋)も心踊るレースを期待しています。




