表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
競走馬転生  作者: ナカH
68/82

天皇賞(秋)本番

エリザベス女王の崩御により、エリザベス女王がどれだけ競馬を愛していたかを今更知りました。

ディープインパクトやレイデオロ、現役馬ならバーイードの祖となる牝馬ハイクレアの所有者だったりと、日本競馬や欧州競馬に多大な影響をもたらした偉大な女王に哀悼の意を表します。

『秋晴れの東京競馬場。12万人を超える観客の声援が優駿達を出迎えます。東京第11レースは伝統のGⅠ、天皇賞(秋)。3歳以上オープン、芝 2000m。18頭フルゲートで争われます。


1枠①番 最内絶好枠、今日もやることは変わらない。ただ愚直に逃げるのみ オットリガタナ 田嶋(たじま) 一夫(かずお)


1枠②番 香港の快走を再び。最強女王が秋の盾を狙います。 ラヴズフォーチュン 三木(みき) 智樹(ともき)


2枠③番 夢を叶える一番の方法、それは叶うまで走り続けること。8歳で初のGⅠ出走、己を信じてここまで来たぞ ユメウタ 初コンビ マルコ・デマルキ


2枠④番 5戦3勝、クビ差に泣いたダービーから早5ヶ月。夏を越え力を付け古馬との初対戦。皐月賞馬カノンディバティ 福田(ふくだ) 洋一(よういち)


3枠⑤番 俺とお前が揃えば1×1は無限大。小倉記念の勝ち馬 ワンタイムズワン 鞍上はGⅠ初騎乗の若武者。デビューから手綱を握る赤井(あかい) 悠成(ゆうせい)


3枠⑥番 骨折を乗り越え、よくぞGⅠの舞台に戻ってきた。さぁ、劇場の幕を開けよう グランギニョル 松本(まつもと) 翔平(しょうへい)


4枠⑦番 昨年クラシック無冠の悔しさ胸に着実に力を付けてきました。ウソダドンドコドン 江口(えぐち) 明夫(あきお)


4枠⑧番 前走目黒記念優勝からの秋初戦。初重賞制覇をあげた時と同じ府中の舞台で、GⅠ勝利を。リゾルート 和智(わち) 亮二(りょうじ)


5枠⑨番 昨年の天皇賞(秋)3着馬。名手を背に乗せて、今年こそ盾獲りへ。マインドタッチ クレール・ルメートル


5枠⑩番 前走新潟記念は最後の直線鋭く抜け出し重賞2勝目をあげました、グラットンメルテ 横川(よこかわ) 光典(みつのり)


6枠⑪番 新潟大賞典、函館記念を連勝。勢いに乗ってGⅠ制覇へ。レビスシュタール 岩渕(いわぶち) 昌行(まさゆき)


6枠⑫番 世界を制した鞍上を背にGⅠ初制覇へ。セッコウ (たに) (あらた)


7枠⑬番 今年の皐月賞2着、日本ダービー3着馬。惜敗続きだった春の悔しさを晴らせるか。エリアントス 三澤(みさわ) 公介(こうすけ)


7枠⑭番 前走札幌記念は1着から0.2秒差の4着。得意の左回りで結果を残せるか。カノンショット (しずく) 義明(よしあき)


7枠⑮番 若いものには負けられない。充実の7歳馬プロターゴニスト。鞍上として天皇賞春秋連覇を果たせるか 横川(よこかわ) 忠生(ただお)


8枠⑯番 こちらも歴代7頭目の天皇賞春秋連覇の偉業がかかる現役最強ステイヤー。前走で距離不安を払拭し、胸を張って連覇に挑みます ヴェンデッタ 横川(よこかわ) (たかし)


8枠⑰番 春は長距離路線でしたが秋は中距離で悲願のGⅠ制覇に挑みます。トパーズライト 丹波(たんば) 義次(よしつぐ)


8枠⑱番 昨年の皐月賞以来の2000m。二階級制覇へ視界ヨシ! ゲイリーホーン 池子(いけこ) 謙一郎(けんいちろう)


以上18頭フルゲートで争われます、今年の天皇賞(秋)。


本日実況は私、青柳(あおやなぎ)。解説は競馬本の吉川(よしかわ) (ひろし)さん、ゲスト解説に元調教師の臼井(うすい) 最強(よしかつ)さんでお送り致します。


それでは返し馬の様子を見返しながら有力馬の状態を―――』



***



「さっきもテキが言っていましたけど、ハナはオットリガタナに譲るんですか?」


「勿論すんなり譲る気はありませんけどね」


返し馬を経てスタート地点で輪乗りをしつつファンファーレを待つ中、翔哉がフクオを引きつつ崇に話しかけていた。


「フクオなら大外枠でもハナに立てるとは思うんですけどね。多分向こうは多少遅れてもハナを奪おうとするでしょうし」


オットリガタナ陣営は宝塚記念のような控える真似はしないと逃げ宣言を打ち出しており、何がなんだもハナを奪うのだと予想されていた。


「致命的な出遅れでもしない限りハナは譲らないってことですね。まぁ宝塚で控えたせいか最後の直線前に脱落でしたから、控える競馬は向かないと改めて認識したんでしょうね」


等と話していたらスターターが台上へ向かい始めた。そろそろのようだ。


「そろそろですね、横川ジョッキー。フクオを頼みます」


「頼まれましょう」


ファンファーレが鳴り奇数番からゲート入りが始まる。特に問題なくスムーズにゲート入りは進み偶数番各馬のゲート入りが始まった。


「よし、行くぞフクオ」


翔哉に促され大人しくゲートに入る。


「無事帰ってこい」


いつもの台詞と共にゲートから出て捌けていく翔哉を見送るフクオの首を叩きながら崇も声をかける。


「フクオ。お前の強さを見せに行こう」


ガシャン!



***



『全ての競馬ファンが心踊らずにはいられないファンファーレが府中に響き渡ります。

さぁ吉川さん、まずはスタートからの展開ですが誰が行くでしょうか?』


『オットリガタナでしょう。スタートそのものはヴェンデッタに分がありますが、何分大外枠と最内枠ですから。スタート直後こそヴェンデッタに先を越されても強引にハナを奪って行くでしょう』


『今回かなりのハイペースが予想されますが臼井さんとしては逃げるであろう2頭に対し後続馬、どう動くでしょうか?』


『普通なら行かせて長い直線で勝負でしょう。ですが、コースも内側から3mの地点に仮柵が設けられるBコースになっていますから。内外共に損傷の無いフェアなコースになっている事を考えると、放置するとそのまま行かれる可能性も十分にあります』


『それぞれの思惑が交差し、展開によって都度修正しながらの難しいレースになることが予想されますが、枠入りは極めて順調。

最後は大外枠池子謙一郎、どんなレースを見せるのか。


さぁ、伝統の天皇盾。その栄冠を掴むのはどの馬だ。天皇賞(秋)スタートしました!


まずまず揃ったスタートの中でも1頭好反応で飛び出していったのはやはり外から⑯番ヴェンデッタ、横川 崇がグイグイ押して押してハナに立とうというところ。

しかし最内から①番オットリガタナ、田嶋 一夫も出ムチで後押し。ハナを奪い先頭に立った。


先頭は①番オットリガタナ、しかしその外⑯番ヴェンデッタが半馬身差で追走。やはりこの2頭の先頭争いとなりました。そして一番人気②番ラヴズフォーチュンは4、5番手と言ったところ。


先頭のリードは2馬身程。それほど大きなリードではありません。各馬はこれから向こう正面に入っていきます。


先頭①番オットリガタナ、半馬身差⑯番ヴェンデッタぴったりマーク。そこから2馬身離れまして⑤番ワンタイムズワン、その外⑮番プロータゴニスト、そして②番ラヴズフォーチュンここにいた。その外並んで④番カノンディバティ皐月賞馬。更に外から⑬番エリアントス、このあたり固まっています。


その後ろ一馬身差⑱番ゲイリーホーン先団を見つめる位置。いつもより前目からの競馬となりましたゲイリーホーン池子謙一郎。

その内⑥番グランギニョル。二頭の間、⑧番リゾルート続いて⑨番マインドタッチルメートル今日はどう動く?その外並んで⑩番グラットンメルテ。


そこから2馬身差、⑭番カノンショット、⑰番トパーズライト、⑦番ウソダドンドコドン末脚勝負です。その後ろ③番ユメウタ、マルコ・デマルキ。


1000m通過は58秒3!58秒3!速い流れです。


そこから更に三馬身離れて⑪番レビスシュタール、最後方⑫番セッコウこんな態勢です。


速い、やはり速い。このラップを刻んでいるのは①番オットリガタナと⑯番ヴェンデッタ。行けるのか!?このまま!?①番オットリガタナと⑯番ヴェンデッタ!


さぁ、第4コーナーを回って勝負の行方は府中525.9mの直線コースに委ねられました!


オットリガタナ!オットリガタナまだ先頭!しかし!ここで満を持してヴェンデッタが馬場の3分どころからオットリガタナを交わし先頭に立った!オットリガタナ苦しくなったか!?


ヴェンデッタ先頭!ヴェンデッタ先頭!しかし内からラヴズフォーチュン!真ん中からカノンディバティ!やはり3強!やはり3強の争いになるのか!?


しかし外から栗毛の馬体が飛んできている!ゲイリーホーンが来た!ゲイリーホーン池子謙一郎が来たぁ!ゲイリーホーンがヴェンデッタを交わして先頭に立った!!

ゲイリーホーン先頭!ヴェンデッタ2番手!ラヴズフォーチュン、カノンディバティも伸びてくる!そして1番外からユメウタ!ユメウタが突っ込んできた!ヴェンデッタ!少し苦しくなったか!?


残り後300!坂を上る!』



***


く、くそったれぇぇぇぇぇぇ!あともう少しだってのに!見誤った!展開を完全に見誤った!今回は俺ともう一頭の大逃げになるかと高を括っていた。それが今回に限ってどの馬もガンガン付いてきやがって!

特にゲイリーホーンはいつも通り後方待機からの最後の直線勝負だと決めつけていた。それが今回はいつもより前目の位置から競馬を進めていたのだろう。そうでなきゃここで俺に追い付くわけがないんだ。


あの末脚をいつもより差が無い状況で炸裂されたら俺にはもうなす術ない。ちくしょう、ちくしょう・・・


「諦めるなフクオ!」


!?



***



あとゴールまで400mを切ったところで今回中団からレースを進めてきたゲイリーホーンの追撃を受け先頭に立たれた。その瞬間、崇は直感的に感じた。


「諦めるなフクオ!」


大歓声に負けない程に声を張り上げる。


「ゲイリーホーンは必ず垂れる!お前が吊り上げたペースに付き合ってきた馬がこのまま持つ訳がないんだ!だから諦めるな!お前の敵はその諦めだ!」


ゲイリーホーンに抜かれたことでフクオがやる気を失いかけている。それを直感を感じた崇は懸命に声を張り上げフクオを叱咤する。

フクオにこれ以上の加速は望めない。だがコイツは諦めなければ絶対に垂れない。


だから粘れ!食らいつけ!離されるな!まだ勝負は終わっちゃいない!

しかし、あと一押し。何かフクオを後押しできる言葉はないか?


そうだ・・・あれがあった。



***



「⑱-⑯!⑱-⑯馬単!そのまま!そのまま!」


「ゲイリー!そのまま振り切れゲイリーホーン!」


「ラヴズゥ!伸びろラヴズゥ!」


「ヨーイチ!頼むヨーイチ!」


「ユメウタァ!夢を掴めぇ!」


天皇賞(秋)最後の直線に入り、各馬を応援する声が聞こえる中に1人の男がいた。及川牧場見学ツアーでヴェンデッタに気に入られたあの男だった。

天皇賞春秋連覇がかかったこのレースに観戦に来ていたのだ。


「頑張れぇ!頑張れヴェンデッタァ!」


全力で声を張り上げ声援を送る。例え声が枯れ、明日の仕事に影響しようが知ったことか。ここでヴェンデッタの春秋連覇が見れるなら安すぎる代償だ。


しかし、最後の直線の途中で外から来た栗毛の馬にヴェンデッタが追い抜かれてしまった。普通ならここまでだろう。逃げ馬が後続馬に捕まってしまったら、まず差し返すなど出来ない。


だが今応援している馬はディープインパクトとは違う意味で奇跡に最も近い馬。父はおろか祖父、曾祖父と取れなかった秋の盾。その雪辱を晴らす時は今に違いない。

そう信じ、その男は声を張り上げ続ける。


「行けぇぇぇぇぇ!走れぇぇぇぇぇ!」


勿論声をあげたところで10万人以上の大観衆の中の1人でしかない。応援している相手に届くことはあり得ないが、その声が無意味かどうかはまた別の話だ。



***



崇からの叱咤激励もありなんとかモチベーションは保てているが、不安は常に押し寄せてくる。本当に奴は垂れるのか?もし垂れて交わしたとしてもすぐ後ろの馬達に抜かされたら今度こそ万事休すだ。

2000mがこんなに長いと思ったのはこれが初めてだぞ。


「フクオ!この歓声の中にはお前を応援してくれるものだってある!故郷で出会った人達の事を思い出せ!」



!!?

そうだ・・・そうだ!北海道で約束したじゃないか!あの兄ちゃんや他の見学者達に。レースで勝つって。俺には応援してくれる人達がいるんだ!俺に夢を見てくれている人達がいるんだ!


そうだ勝つんだ!不安がっている場合じゃない!


おのれゲイリーホーン!速ぇんだよ馬鹿野郎!先頭の景色は俺のものだ!お前なんぞに渡せるかぁぁぁぁぁ!



***



『残り後300!坂を上る!先頭ゲイリーホーン!しかしその差は僅か!内からラヴズフォーチュン!ラヴズフォーチュンがヴェンデッタを交わす勢いだがヴェンデッタ粘っている!ヴェンデッタ粘っている!真ん中鋭くカノンディバティ!


大外ユメウタ!大外ユメウタ!最内ラヴズフォーチュン!真ん中突いてカノンディバティ!カノンディバティ!


ゲイリーホーン頑張っている!ゲイリーホーン頑張っている!


ここでもう一度ヴェンデッタ!もう一度ヴェンデッタ!そしてなんとユメウタだ!ユメウタだ!


誰だ!誰だ!勝ったのは誰だぁぁぁぁぁぁぁ!!!


5頭並んだ!大接戦!ゲイリーホーン、ヴェンデッタ、ユメウタ!

ラヴズフォーチュン、カノンディバティはやや不利か。


大接戦!大激戦となりました天皇賞(秋)!真ん中ゲイリーホーンか、大外ユメウタか、内ヴェンデッタか!

なんと8歳馬が初めてのGⅠの舞台で大健闘を見せました、ユメウタとマルコ・デマルキです!


まだ着順掲示板は上がっておりません。勝ち時計は1分56秒9。上がり3ハロン35秒4、4ハロン47秒1。


二階級制覇か、春秋連覇か、8歳夢の盾獲りか。放送席、解説は競馬本の吉川(よしかわ) (ひろし)さん、ゲスト解説は元調教師の臼井(うすい) 最強(よしかつ)です。吉川さんの目には大外から食い込んできたユメウタか、それとも最後盛り返したヴェンデッタか、はたまた先頭で粘っていたゲイリーホーンか。態勢どう映りましたか?』


『これは・・・難しいですねぇ。正直肉眼じゃわかりませんよ』


『今、ターフビジョンではゴールの映像が流れておりますが、それを見て臼井さんはこれ、どうご覧になられますか?』


『非常に微妙ですね。態勢はゲイリーホーンかなとは思うんですが』


『そしてラヴズフォーチュンとカノンディバティが4着争い。映像を見る限り、ラヴズフォーチュン優勢か。


最後の坂でヴェンデッタがゲイリーホーンに抜かれたところで勝負は付いたと思っていたんですけど、臼井さん』


『そうですね。その抜かれたヴェンデッタが再度盛り返し、更に外からユメウタが突っ込んできましたでしょう?展開の目まぐるしさ、正に二転三転と言った具合で本当に驚きました』


『いやぁ~、本当に凄いレースでしたね。ヴェンデッタに関しては宝塚記念のようにそのまま沈んでいくんじゃないかと思ってましたから。本当に同じ馬なのかと疑いたくなりますね。この府中のあの坂をあのペースで上がってくるわけですから。挙げ句最後もう一度伸びたでしょう?あの心肺機能の高さを見ると本物のステイヤーとはこういうものだと言うのをまざまざと見せつけられますね』


『吉川さんも驚いた、ヴェンデッタの底力を語っていただいたところですが、まだ着順掲示板に馬番は上がっておりません。1着、2着、3着写真判定です。4着、5着も写真判定です。確定までお手持ちの勝馬投票券はお捨てにならないようお願いします』

本作ではダービー以来の引きとなります。

流石に次の話は来週なんてことになったら怒られそうなので本日18時に続きを出したいと思います。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] 内からもう一度ヴェンデッタも差し返す!!ヴェンデッタも差し返す!!
[一言] 今日の夕方に更新してくれるのはありがたいです
[気になる点] 大接戦ドゴーン?
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ