表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
競走馬転生  作者: ナカH
6/82

メイクデビュー直前

小説と全く関係ありませんが、夜になると鹿の鳴き声が聞こえてきます。

4回 新潟競馬 5日目 第5レース

新馬戦 メイクデビュー新潟 芝 1800m 天気:晴 馬場状態:良


未だ暑さ厳しい新潟競馬場のパドックにフクオの姿はあった。

パドックでは新馬戦にしては多くの観客が入っていたが、多くはフクオ目的であった。


オールド競馬ファンだけでなく、某擬人化競馬ゲームに登場するキャラクターのモチーフになった競走馬の血筋を多く持つフクオはSNSを中心にデビュー前から良くも悪くも注目されていた。





やっと来たな、俺のメイクデビューが。枠番は4枠7番。良くもないが悪くもない。

今日の出走馬は俺入れて15頭か。多いなぁ。もっと早くデビュー出来れば一桁頭数でレース出来たんだろうけど。


まぁ、過ぎた事はしょうがない。ライバルが多かろうが少なかろうか、1着にならなきゃいけないのは変わらないんだから。

いや、なれる確率は変わるんだけどな。


「フクオ、今日はオーナーが観に来ているってよ。人気にもなっているみたいだし、頑張ってくれよな」


と、考えていたら翔哉の兄ちゃんが俺に話しかけてきた。


え?オーナーって水嶋のおっちゃんのことか?

本業が忙しいらしく、数回しか会いに来てくれた事はなかったけど、わざわざ新潟まで観に来てくれたんか。


たまに差し入れのリンゴを贈ってくれてたし、報いてやりたいな。頑張る理由がまた増えたわ。


というか、俺って人気になってるの?どんなもんよ?

ほうほう、4番人気の10.1倍か。上位3頭が一桁倍率でその次か。結構評価されているんか?


それとも応援馬券か?応援馬券ぽいな。日本人特有の判官贔屓ってやつだな。


この前の追い切り自体は中々いいタイムを出せたし評価は出来るが、何分血統があれなもんだから本命にするのは怖い。だけど勝つ姿は見たいから単勝応援馬券買っておこうってとこか。


それから鞍上が崇っていうところも大きいか。若手のホープで崇本人の人気も高い。それらが合わさった結果だな。


「よし、合図が来たぞ。これから横川ジョッキーに乗ってもらって本馬場入場だ」


もう時間か。よっしゃ、やってやりますか。




「フクオ、今日は頼むな」


おう、崇。任せとけ。

今日の崇は1Rと2Rの未勝利戦に騎乗し、1勝をあげている。俺の後も7,10,11,12Rに乗るってんだから、人気ジョッキーは大変だ。

というか、ホントよく騎乗依頼を受けてくれたな。


「横川ジョッキー、フクオをよろしくお願いします」


「はい、結果を残せるよう全力を尽くします」


崇が乗り、先導馬について本馬場へ向かう。

本馬場へ向かう途中、崇や翔哉の兄ちゃんが俺をしきりに気にしていた。さっきから余裕ぶっていたが次第に緊張してきたのがバレてしまったらしい。


「フクオ、パドックの時は気持ちのノリがいまいちだったので心配でしたが、横川ジョッキーが騎乗したことで緊張が高まってきたようですね。集中してきてます。」


「賢い馬ですから、これからレースが始まることをなんとなしに察しているんでしょう。いい傾向ですね。」


どうやら緊張してきていることをいい意味で捉えてくれたらしい。

そして遂に本馬場へ着いた。


「よし、行ってこいフクオ」


翔哉の兄ちゃんがハミに付けていた引き綱を外す。

よっしゃ、気張りますか!




フクオもとい、ヴェンデッタが返し馬を始めた頃、馬主席ではヴェンデッタの馬主である水嶋 穂高が妻の美恵と共にフクオの返し馬を見ていた。


「あの7番が貴方の馬のヴェンデッタちゃんね。それで勝てそうなの?」


妻の美恵が水嶋に聞く。

妻ははさほど競馬に興味はなく、普段は水嶋の馬が走るからといって競馬場に付いてくることもなかった。それも地方の競馬場ともなれば尚更だ。


なら何故居るかというと、最近は本業が忙しく家族の会話も少なかった。

そんな忙しさも一段落し、時間の余裕も生まれたので自分の所有馬のデビュー戦を見るついでに新潟までちょっとした旅行をすることにしたのだ。


「調教師の笠原先生が言うには勝算は十分にあるとのことだ。

さっきのパドック。広場で馬を歩かせていたあれだ。パドックではやる気が今一つ出ていないようだったが、今走っている姿をみたところやる気も出たみたいだ。期待していいと思う。」


「そう、なんとか勝ってほしいものね。ここ何年かは貴方の馬勝てていないんでしょう?」


「あぁ、そうだな」


水嶋は現在ヴェンデッタ以外にもヴェンデッタの姉であるキャッチングハート(3歳牝馬)を所有しているが未勝利馬だ。もうすぐ3歳未勝利戦も終わるため、今後どうするかも考えていかなくてはならない。


これまで掲示板に載ったこともなく、格上挑戦をしても勝てる可能性は限りなく低いだろう。


そうなると地方へ転厩か引退の二択になる。牝馬である為、引退後は繁殖牝馬か乗馬かに分岐するため実質三択だが。


水嶋自身は地方の馬主資格も持っているため、地方転厩自体は可能だ。ただ、キャッチングハートにダート適正がないことは既にわかっている。

地方競馬はダートが主戦場だ。芝コースのあるところだと盛岡競馬場しかない。それなら引退させた方がいいだろう。


しかも及川牧場の方からキャッチングハートを繁殖牝馬として繁養したいと打診も来ている。元々の契約では未勝利馬でも繁殖に上げるといった取り決めはなかった。


だが、事情が変わったらしい。


母のスカイシャワーがヴェンデッタ出産後1年の休養を挟んで去年今年と種付けしたが、共に不受胎に終わった。

まだ馬齢的に繁殖牝馬を引退させるのは早いが、来年も不受胎となるとそれ相応の対応を考えなくてはならない。


何より、生産性の問題もある。

その為、娘のキャッチングハートを繁殖入りさせ生産性を上げたいとの事だった。


及川牧場との今後の付き合いを考えるなら繁殖入りさせるべきだろう。

これ以上走らせるより繁殖牝馬になった方が結果を残せるかもしれない。


もうすぐレースが始まる直前、輪乗りしているヴェンデッタを見ながら水嶋は姉の今後を考えるのであった。

次回はいよいよレースです。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[気になる点] 藤岡調教師?笠原調教師じゃなかったっけ? 競馬あまりわかりませんが二人で見てるのでしょうか?
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ