宝塚記念本番
今日はオークスですね。
私の本命はウォーターナビレラです。
『荒れ模様の空。天も興奮している阪神競馬場です。ファンの夢を託す夏のグランプリ、宝塚記念GⅠ 芝コース2200m 出走馬15頭をご紹介致します。
1枠①番 ジャパンカップ2着、大阪杯2着。今回こそGⅠ勝利を。ダンシングウィナー クレール・ルメートル
2枠②番 馬場不問のタフネスボーイ。カポラーヴォロ 鞍上は短期免許最終週ミハエル・キルヒアイゼン
2枠③番 昨年は6着。目指すはGⅠ2勝目。ゴールドアローズ 和智 亮二
3枠④番 天皇賞(春)はハナ差2着。実力はGⅠ級。あとは結果を残すのみ。フトウフクツ 三澤 公介
3枠⑤番 前走大阪杯は10着。巻き返しの大逃げは出るのか。オットリガタナ 田嶋 一夫
4枠⑥番 ドバイシーマクラシックは善戦するも5着。ここで出るか覚醒の血。マインドタッチ 鞍上はグランプリ初騎乗、来栖 亮太
4枠⑦番 今回4頭出走している牝馬の1頭。一昨年のオークス以来のGⅠ制覇成るか。ウィッチフレイム マルコ・デマルキ
5枠⑧番 現在3連勝、今年の天皇賞(春)を制し次に狙うはグランプリの栄誉。ヴェンデッタ 横川 崇
5枠⑨番 14万を超えるファンの期待。グランプリ連覇で応えられるか。ロードケラウノス 谷 新
6枠⑩番 今年の金鯱賞をレコードタイで勝ったカノンショット。左回りでは安定した成績を出していますが右回りではどうか。鞍上は雫 義明
6枠⑪番 昨年の秋華賞馬です。最強女王を降したあの末脚で勝機を狙う。ウマダッティ 鞍上は初コンビ、吉川 幸太郎
7枠⑫番 前走大阪杯制覇の前年覇者が連覇に挑みます。スフィアライダー 福田 洋一
7枠⑬番 香港を制した最強女王から日本最強馬へ。ラヴズフォーチュン 三木 智樹
8枠⑭番 小さな身体に大きな愛を一身に受け、グランプリ初登場。クインレンゲ 池子 謙一郎
8枠⑮番 今年の春は長距離路線でしたがこの馬の本領はこの距離ではないでしょうか。トパーズライト 丹波 義次
皆様の夢と期待を体現するレース、上半期の総決算。GⅠ宝塚記念。発走までもうしばらくお待ち下さい』
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『分厚い雲と朝から降り続く雨が重々しい雰囲気を醸し出す阪神競馬場です。
中央競馬前半の総決算。宝塚記念GⅠ。芝2200m15頭で争われます。
最強馬の証明か。前年覇者の連覇か。最強ステイヤーの逆襲か。最強牝馬の戴冠か。それともニューヒーローの誕生か。ファンの興味は尽きません。
放送席解説は競馬本の高林 明さん、ゲストにビワハヤヒデでこのレースを制している岡田 育雄さんにお越しいただいております。
高林さん。上半期の総決算。その名に相応しいメンバーが揃った今年の宝塚記念と言えるのではないでしょうか?』
『そうですね。国内中距離、長距離戦線。ドバイや香港と様々な舞台で活躍した各馬達が一堂に会する正にグランプリですね。
全出走馬のうち約半分である7頭がGⅠ馬という事からも期待せずにはいられません。
特に秋は2度目の凱旋門賞挑戦を表明しているスフィアライダーと、今日の結果次第のロードケラウノスとヴェンデッタ。彼らの戦いにも注目したいですね』
『ありがとうございます。そして岡田さん。これほどまでに優勝候補の多い宝塚記念ですが、岡田さんはどう見るでしょうか?』
『そうですね。実績と実力だけ見ればロードケラウノスに軍配が上がりますが、今日のこの天気。限りなく不良に近い重馬場。このような悪条件でのレースはこの馬も経験はありませんから。
それに引き換えスフィアライダーは多くのレースを走った経験が。ヴェンデッタは3月にこの阪神を不良馬場で走っていますから。それらの経験が活きれば十分勝機はあると思います』
『ありがとうございます。さぁ、スターター台上、宝塚記念のファンファーレです―――』
ファンファーレが轟く。夢か。期待か。希望か。7万人が見つめる2分数十秒のドラマ。
その瞬間を永遠に目に焼き付けるのを寿ぐかのように、ファンファーレは阪神の空に吸い込まれていった。
『大歓声と万雷の拍手が沸き上がります阪神競馬場。さぁ、観客席から近いスタート地点。この歓声にイレ込む馬はいるかどうか。
⑨番ロードケラウノス、落ち着いた様子でゲートの中。
⑩番カノンショット、少々ゲートを嫌っているか。しかし、再度促され収まります。
⑧番ヴェンデッタ、⑫番スフィアライダーも収まり最後に大外⑮番トパーズライトゲートの中。係員が離れ体勢完了。
宝塚記念スタートしました。
まずます揃ったスタート。ファンの歓声に迎えられ、まずは正面スタンド前を各馬が駆けていきます。
そして先行争いですがやはり行った。⑤番オットリガタナ、⑧番ヴェンデッタ。この2頭が端を主張して行きます。
先頭⑤番オットリガタナ、外の⑧番ヴェンデッタは掛かり気味か。鞍上横川 崇。手綱をがっちり掴んで抑えようとしますが⑧番ヴェンデッタ、⑤番オットリガタナを交わし先頭に立った。
先頭⑧番ヴェンデッタ、⑤番オットリガタナその後ろ。3番手は②番カポラーヴォロ、並んで③番ゴールデンアローズ。⑬番ラヴズフォーチュン5番手、その内⑦番ウィッチフレイム。
これらが先行グループを形成。続いて⑭番クインレンゲ小さな馬体。⑥番マインドタッチ、⑩番カノンショット。最内①番ダンシングウィナー白い帽子。⑮番トパーズライト、⑪番ウマダッティ、昨年の覇者⑫番スフィアライダーここにいた。
後方から2番手④番フトウフクツ、そして最後方に⑨番王者ロードケラウノスという体制で各馬第1コーナーのカーブに入ります。
まず、⑧番ヴェンデッタが先手を取りました。⑧番ヴェンデッタが先頭でそのすぐ後ろに⑤番オットリガタナがぴったりとマーク。
その内②番カポラーヴォロが3番手です。
後4番手に⑬番ラヴズフォーチュン第2コーナーのカーブ。
③番ゴールデンアローズは前を見る形で5番手を追走。⑦番ウィッチフレイムその後ろと、好位集団固まりました。
そこから少し離れて⑥番マインドタッチ追走。その後に⑭番クインレンゲ丁度中団。
そこからまた離れて⑩番カノンショットその内に①番ダンシングウィナー。⑫番スフィアライダー、⑮番トパーズライト。⑪番ウマダッティ後方から3番目。各馬向こう正面通過。
1000mが60秒程。やはり速い。重馬場にしては速いタイムでレースが進んでおります。
後方2番手は④番フトウフクツそして変わらず最後方に⑨番ロードケラウノスといった体制で先頭は変わらず⑧番ヴェンデッタ。
⑧番ヴェンデッタが変わらず逃げています。⑧番ヴェンデッタ半馬身のリード。2番手⑤番オットリガタナ。⑬番ラヴズフォーチュンが3番手に進出。
そして後方から④番フトウフクツが外から上がっていく。追走するように⑨番ロードケラウノスも上がっていく。残り800mを通過。
それに釣られ後方勢も動き出し、15頭が固まって第3コーナーから第4コーナーへ向かう。
⑤番オットリガタナ、ちょっと一杯になってきたか。③番ゴールデンアローズが交わす。⑮番トパーズライト早めに上がって来た。
これを追って①番ダンシングウィナーと④番フトウフクツ、⑫番スフィアライダーだ。
しかし先頭はヴェンデッタ!ヴェンデッタ先頭!この馬の粘りは怖いぞ!
そしてまだ、ロードケラウノスはまだ馬群の中。。谷 新が懸命に手綱を動かす!
ラヴズフォーチュン伸びてこない。ラヴズフォーチュン後退!
最終コーナー曲がって直線コースに入った』
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脚が・・・重い。息が・・・辛い。
何でこんなしんどいんだよ。春天の方が楽だったぞコンチクショウ。なんとかおっちゃんや兄ちゃんを誤魔化して本番に臨めたが、思った以上に調子を崩していたようだ。
だが、残りは直線。前にあるこの坂を登ればゴールだ。これに勝てば俺は凱旋門に行けるんだ。宝塚記念に勝てたなら競走馬としての実績も十分。
念願の種牡馬入りもほぼ確定のはず。
だってのによ、なんでお前がここにいるんだ?
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『さぁ先頭はヴェンデッタ!横川 崇一発鞭が入った!そして雨を切り裂いて、馬群を割って抜け出てきた漆黒の雷霆!ロードケラウノスだ!ロードケラウノス!新、渾身の右鞭が唸りをあげる!
2頭の一騎討ちになるのか!昨年のクラシックを沸かせたこの2頭がここ阪神でも相争うのか!』
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パドックから本馬場入場、返し馬を経て輪乗りをしながらフクオを見ていたが、今日のフクオはずっと集中しているように見えた。
未だ直らないパドックでソラを使う癖も出ることもなく黙々とパドックを周回し輪乗りを行っている。普通に考えれば十分勝負の出来る状態だろう。
だが、つきまとう違和感が無くならない。翔哉さんも同じなのか、しきりにフクオをの様子を確認していた。
結局違和感がわからぬままゲート入りが始まりそのままレースが始まった。
そしてスタートの時まったく折り合わず、ひたすら全力で走る姿を見てようやく違和感の正体に気付いた。
こいつ、またやりやがったな!!?
違和感の正体は一切余裕のないフクオの姿だった。基本フクオはのんびり屋だ。いい意味でも悪い意味でも。
それが今回は常に張りつめた雰囲気を出していた。まるで気を抜いたら立て直せないのを我慢しているように。
それは昨年の菊花賞後、身体の異常を隠したあの時と同じだ。あれ以降笠原厩舎はフクオの体調には細心の注意を払ってきたが、馬が本気で隠したことを気付けというのは酷というものだ。
そもそも一度体調を崩しかけていると気付いてそのケアをし、見た限り復調した。
だが、その復調が馬がそう演じたものとなど誰が予想できるだろう。
というか馬って体調のいい演技するのか?仮病ならともかくその逆をする馬なんて見たことないぞ。本当になんなんだこいつは。賢いってレベルじゃねぇぞ。
そしてその演技で取り繕うことも難しくなってきたのか、目に見えてフクオの動きが鈍くなってきた。第3コーナーから手応えも怪しくなっている。まだ先頭を走っているのが不思議なくらいだ。
恐らく気力だけで走っているのだろう。
今からでも競争を中止すべきか?いや、ここで止めるよりゴールした方が危険は少ないか。とにかく、無気力騎乗に注意しながら無事にフクオを返すことだけを考えよう。
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『ロードケラウノス迫る!ロードケラウノスが迫る!ロードケラウノスが交わした!ロードケラウノス交わした!ヴェンデッタは・・・!
ヴェンデッタは伸びない!ヴェンデッタが後退していく!なんと!ヴェンデッタまさかの一杯!
ヴェンデッタを交わしてスフィアライダー、ダンシングウィナー更にはフトウフクツが伸びてくるが2着争い!
ケラウノス強い!ケラウノス強い!重馬場道悪なんのその!これが日本最強馬の実力だ!
ロードケラウノス!GⅠ6勝目!
後続を引き離し、見事宝塚記念を制しました。その瞳に映す夢はヨーロッパ!
そして2着は接戦!スフィアライダー、ダンシングウィナー、フトウフクツ3頭がほぼ並んでゴールイン。
ヴェンデッタとラヴズフォーチュンは馬群の中で入着。先行勢は軒並み沈む展開となりました』
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「今回の敗け。フクオの不調を見抜けず、復調したと勘違いした俺の責任だ。すまなかった」
「テキ、それを言ったら常に世話をしているのに見抜けなかった俺が1番の間抜けっすよ」
レースを終え、脱鞍所に戻ってきたフクオはいつもより疲れたような顔をしながら誰とも目を合わせようとしなかった。
恐らく気まずいのだろう。不調を隠し出走したものの、途中でバテて過去最低順位を記録してしまったのだから。
少なくとも大敗したことは理解しているようだ。
「とにかく、まずはフクオに異常がないかの確認と水嶋さん達への対応を行おう。崇もお疲れさん。よくフクオを返してくれた」
「ありがとうございます」
言葉少な目に検量室へと向かう崇。どうやら崇としても悔いの残る内容だったようだ。
「では翔哉。フクオの事は頼むぞ」
「わかりました」
フクオを翔哉に任せ笠原は今後について思案する。
今回の敗北で海外遠征は白紙になるだろう。それは仕方ない。問題は秋をどうするかだ。とりあえず、早急にフクオを放牧に出し回復を図り、水嶋さんと秋以降のローテーションについて話をしなくては。
個人的に考えたプランはあるが、水嶋さんがどう判断するかがわからない。
とにかくまずは
「水嶋さんに会いに行かんと」
誰に聞かせるでもなくそう漏らし、笠原は水嶋一家を迎えるため、笠原は脱鞍所を後にするのだった。
1着⑨番ロードケラウノス
2着⑫番スフィアライダー 2馬身
3着①番ダンシングウィナー アタマ差
4着④番 フトウフクツ ハナ差
5着⑮番トパーズライト 1/2馬身
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12着⑧番ヴェンデッタ
という訳で初の惨敗と相成りました。
ボロ敗けする話を作るのって想像以上に筆が乗らないものですね。
割りと書くのがしんどかったです。




