表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
競走馬転生  作者: ナカH
45/82

阪神大賞典(GⅡ)本番

ブックマーク700件突破誠にありがとうございます。

ちょっと心が挫きかけたパドックから本馬場に移動し、返し馬を経てゲート前で輪乗りを行っている。


これまで良馬場でのレースがほとんどで、京都2歳が唯一の稍重でのレースだった。今日はそれよりも遥かに馬場状態の悪い不良馬場でのレースとなると、過去の経験が全く役に立たないな。


無論雨の中走ること自体はやっている。日々の調教は雨でも行われているからな。それでも調教とレースはまるで違うだろう。


そういや、今回あのロードケラウノス(化け物)いないんだよな。なんだろう、ホッとしたような寂しいような。いや、寂しくはないな。皐月賞から菊花賞までひたすらあのロードケラウノス(化け物)から逃げてきたせいで感覚がおかしくなっているようだ。ただ、これまでのような必死さは薄れているのは確かかな。


まぁ、本番は天皇賞(春)だし乗っているのは崇じゃないしやれるだけやりますか。


「久しぶりのレースにも関わらず入れ込んだりせず落ち着いていますねフクオ君は」


「んー、これは落ち着いているというか別の事を考えている感じかもしれませんね。パドックの時はそうでもなかったはずなんですけど。フクオ、お前なんでパドックより本馬場に来て返し馬した後の方が集中切れてんだよ」


「あ、これ集中切れているんですか?遊び始めているわけでもなく、黙々と輪乗りしているのによくわかりますね、流石です。でもこのままじゃ不味いか。

・・・あ~、ここで惨敗したら崇の奴も春天は他の馬に乗るかな?」


ピクッ


「え?横川ジョッキー?」


「(シーっと口に人差し指をつけながら)あいつ、あんなでも騎乗依頼多いんですよ。某クラブの馬を結構回してもらったりしてますからね。本人に聞いたわけじゃないですけど、春天は去年の覇者ゴールドアローズに乗らないかと依頼が来ているとかいないとか」


ピクッピクッ

「昨年の菊花賞馬と昨年の天皇賞(春)馬、どちらを選ぶかですけど、ゴールドアローズは昨年の有馬も3着と好走してますからね。今日のフクオ君の結果次第じゃ崇もフクオ君を捨ててゴールドアローズに乗るかもかもしれませんね」


「そ、そうですかー。それはフクオも頑張らないとなー・・・」


そうだ、そうだった。あまりに当然のように乗ってくれていたから忘れていたが、崇のやつリーディングジョッキーだった。

当然俺以外の馬にも乗っているし、今後一緒に走る馬には崇のお手馬もいるはずだ。そこから俺が選ばれ続けるには勝ち続けてアピールし続けるしかない。


やれるだけやるなんて呑気なこと言っている場合じゃなかった。全力で事にあたらないと。とりあえず、今日のレースを勝つことは絶対条件だ。油断も慢心も一切しねぇぞ。


(横川ジョッキー、いきなり何言い出すのかと思えばフクオを煽りだして、何がしたいんだ?そんな事言ったって意味があるわけ・・・

ん?え!?フクオの奴、なんで急にやる気出したんだ?今の話を理解したのか?いやいやいや、いくらフクオが賢いとは言っても無理があるだろう。恐らく崇騎手の名前に反応したんだろうけど・・・)


(うわぁ、崇から聞いていたけどホントに“崇”“他の馬”“乗る”って言葉に反応した。賢すぎだろう、逆に引くわ。

やる気になってくれたみたいだからいいんだけど)


「あ、ファンファーレですね」


「呼ばれましたし行きましょうか」


ようし、やったるぞ。



***



『朝から雨が衰えることなく降り続く阪神競馬場です。本日のメインレース、阪神大賞典 GⅡ 芝3000m。向正面から内回りコースを1周半レースを行います。


それでは本日の出走馬11頭をご紹介しましょう。


1枠①番セダンアポロジー

2枠②番グリステレール

3枠③番イワタアルタイル

4枠④番ジャックランボー

5枠⑤番カノンマキシマム

6枠⑥番ヴェンデッタ

6枠⑦番トパーズライト

7枠⑧番ウメノキタイゼン

7枠⑨番トンジチ

8枠⑩番バイバイマイラバー

8枠⑪番タンウォーモンガー


一番人気⑥番ヴェンデッタで2.3倍、二番人気⑦番トパーズライトで3.9倍と、この2頭が人気を分けあっています。


今、場内ファンファーレです。

実況席解説は競馬本の沖野 誠さんです。沖野さん、展開のポイントは如何でしょう?』


『今日は明確な逃げ馬が多く、序盤から熾烈な先行争いが予想されます。①番セダンアポロジー、③番イワタアルタイル、⑥番ヴェンデッタ、⑧番ウメノキタイゼンと実に4頭もの逃げ馬がどういったレースを作っていくのか。そしてこの不良馬場をどうこなしていくかがポイントになってくると思います。後は⑦番トパーズライトの末脚が爆発するかですね』


『ありがとうございます。枠入りは順調。最後に⑪番タンウォーモンガー収まりまして係員が離れます。態勢完了。スタートしました。


実に見事なスタートを切りました11頭です。さぁ、まずは何が行くでしょうか。⑥番ヴェンデッタがやはり行くか。それとも内から①番セダンアポロジー、③番イワタアルタイル。外から⑧番のウメノキタイゼンも押して出てきました。


どうやら①番セダンアポロジーが先手を奪い取ったようです。2番手は⑧番ウメノキタイゼン、3番手に③番イワタアルタイル。


そして昨年の菊花賞馬、⑥番ヴェンデッタはここにいた。なんと、これまでのレースでは端を主張してきた⑥番ヴェンデッタ、控えました』



***



ガシャン


よーし!行くぞおらぁ!いつも通り端を奪って主導権を握るぞぉ!って、今日は俺以外にも逃げ馬いるのかよ。内から外からめっちゃいるじゃねぇか。


「うん、予想通り他の3頭が出てきたな。じゃあ行ってもらおうか」


そう言い横川父が軽く手綱を絞ってきた。

ちょちょちょ!横川父!?何故行かせてくれんの!?


「今回は逃げ馬が多い。フクオ君がわざわざ逃げなくても他の馬が逃げて勝手にペースを上げてくれる。なら今回は彼らの後を程よく追いかけよう。阪神の不良馬場では一瞬のキレで勝負するタイプの馬もそれほど恐くないしね」


な、なるほど。確かに他の馬同士が競り合ってペース自体がハイペースになってくれるなら、その競り合いに加わる必要もないか。

それに今日は不良馬場。いつもより消耗も激しくなる。スタミナ切れを起こす気は更々ないが、温存できるなら温存しておくに越したことはないか。


OK、崇の父ちゃん。指示の通りにするぜ。だから、お願いだから飛ばさないでね。


(おぉ、すんなり折り合ってくれた。本当に賢くて素直な馬だな。行きたがりと聞いていたし、過去のレースを見る限り、馬群を怖がる恐れもあったからぶっちゃけ賭けだったんだが。以前と比べ精神的に成長し、前に追いかけるべき馬がいるからか走ることに集中出来てる。

これを見れば昨年のクラシックで活躍したのも納得だ。というか、生まれる年が違えば三冠馬になっていたかもしれないという謳い文句もあながち的はずれということでもないな。これなら今日のレースはいけそうだ)



***



『ヴェンデッタの後ろ⑨番トンジチはこの位置。そして内に万葉ステークスの勝ち馬、④番ジャックランボー。

その後ろに⑩番バイバイマイラバー、1馬身後ろ昨年のジャパンカップ3着馬⑦番トパーズライト、半馬身差で内に⑤番カノンマキシマム、外に⑪番タンウォーモンガー。


そして最後方に②番グリステレール。こういう態勢になりました。


先頭は完全に端を奪いきりました①番セダンアポロジー葛西(かさい) (まなぶ)。リードを2馬身から3馬身程取りました。


そして2番手に⑧番ウメノキタイゼンで1周目のホームストレッチに入ってきました。観客席からの拍手と声援に後押しされ11頭が走ります。


最初の1000mを1分1秒9で通過していきます。


3番手に③番イワタアルタイル、そこから1馬身離れて昨年の菊花賞馬、一番人気⑥番ヴェンデッタが今日は4番手でレースを進めております。

その外から⑨番のトンジチ、⑨番トンジチが⑥番ヴェンデッタを外から交わす勢い。

その後ろから④番ジャックランボーが⑥番ヴェンデッタをぴったりとマーク。


第1コーナーのカーブに入ります。


そこから2馬身ほど開いて⑩番バイバイマイラバー外から⑦番トパーズライト、⑤番カノンマキシマム⑪番タンウォーモンガーが続きまして最後方は変わらず②番グリステレールといった態勢でこれから各馬は第2コーナーのカーブから向こう正面です。


先頭は①番セダンアポロジー4馬身のリード。③番イワタアルタイルが⑧番ウメノキタイゼンを交わし2番手。3番手が⑧番ウメノキタイゼン。


そこから2馬身、3馬身程後ろに⑨番トンジチ内に⑥番ヴェンデッタ菊花賞馬。春の天皇賞に向けてここは負けられません仕掛けるのはどこか。その後ろ④番ジャックランボー。


後続の馬も徐々に上がって参りました。内に⑩番バイバイマイラバー。⑦番トパーズライト上がっていった。ここで動きましたトパーズライト 岩渕(いわぶち) 昌行(まさゆき)

それに反応して⑤番カノンマキシマムも上がっていく。


その後ろは②番グリステレールが⑪番タンウォーモンガーを交わして後ろから2番手。そして最後方に⑪番のタンウォーモンガーです。


さぁ春の嵐とも言うべき雨が打ち付ける第3コーナーから第4コーナーの中間。相変わらず①番セダンアポロジー先頭。しかしリードが縮まってきたぞ。③番イワタアルタイル2番手。


ここでヴェンデッタが動いた。ヴェンデッタが動き出した。外目から上がっていく。

それに呼応するようにジャックランボー江口(えぐち) 明夫(あきお)も動き出す。


その内からウメノキタイゼン、トパーズライトだ。

さぁ第4コーナーを迎える。


セダンアポロジー粘る!外からイワタアルタイルが追い込んでくる!更にはヴェンデッタ!トパーズライトは外へ持ち出した!


さぁ、直線コースの追い比べ。先頭はイワタアルタイル!そして外からヴェンデッタがやってきた!ヴェンデッタが早くも先頭に立つ!

トパーズライトは4番手から前を追ってくる!


残り200m!


先頭は堂々とヴェンデッタが抜け出した!2番手にジャックランボー、大外からグリステレールがやってくる!

トパーズライトは馬群に沈んだ!


完全に抜け出したヴェンデッタ!リードを2馬身!3馬身!これは楽勝!

そして2着争いはジャックランボーとグリステレール!


流石は菊花賞馬!ここでは役者が違った!ヴェンデッタ圧勝ゴールイン!

2着は最後グリステレールが差しきったか。二番人気のトパーズライトは馬群に沈みました。


鞍上乗り替わりもなんのその。今日は4番手から控える競馬で見事な先行押しきり、正に横綱相撲と言った走りを見せてくれましたヴェンデッタ 横川(よこかわ) 光典(みつのり)です』



***



よっしゃー!どうだ見たか崇このやろー!お前が乗るべき馬が誰かこれではっきりしただろう!


「お疲れさんお疲れさん。想像以上の走りだったよ。まさかここまでちぎるとはねぇ」


おぉ、崇の父ちゃんもサンキューな。お陰で勝てたよ。


(今日は予想通り、逃げ馬3頭の端争いが行われた結果、不良馬場にしては早い時計だった。にも関わらず、フクオ君はバテるどころか最後の最後まで伸びて、2着から4馬身以上差を付けての勝利か。それも初めてやる先行での勝利だ。

長距離でなら国内最強じゃないか?ゴールドアローズも敵じゃないぞこれ。

春天は既に騎乗する馬が決まってるのが残念でならないよ。まぁ、息子のお手馬奪う程鬼畜になった覚えはないが)


なんか崇の父ちゃんが考え込んでるかと思えば苦笑したりと大丈夫か?

うーん、まぁいっか。とりあえず戻りますかね。


今回も翔哉の兄ちゃん泣いてるかな?流石に泣かないか。喜んではくれるよな?喜んでくれるならそれでいっか。


あ、そういや水嶋家の来てるよな?やっべ。去年の夏、子供達が会いに来てくれたとき怪我だけはするなと言われてたのに、おもいっきり怪我しちまったわ。

怒られるかな?忘れててくれよー、頼むから。



阪神大賞典着順


1着⑥番ヴェンデッタ


2着②番グリステレール 5馬身


3着④番ジャックランボー クビ差


4着③番イワタアルタイル 2馬身


5着⑨番トンジチ 1/2馬身

今週末は阪神大賞典ですね。

個人的にはディープボンドとマカオンドール(ゴールドシップ産駒)に頑張ってもらいたいですが、マカオンドール鞍上の松山弘平騎手が落馬負傷の為、吉田隼人騎手に乗り替わりということですが、これがどう影響するのかが気になります。


そしてふと思ったんですが、拙作を読んでくださっているユーザー様はリアル競馬見るんですかね?

私、割とリアル競馬について前書き後書きに書いたりしてきたので、内心

『作品と関係ないこと書くなよ』

とか思われてそう。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] 20歳になって間もない頃、今回のモデルの騎手さんには万馬券ゴチになりましたね。 子供の頃から父親と競馬場に行くことはありましたが、自分から積極的に賭けたりはしません、たまにテレビで見る程…
[良い点] こんな気持ちのいい勝ち方はメイクデビュー戦以来ですね、しかもGⅡ! 横川ジョッキーも馬に話しかけるという奇行がフクオ対してクリティカルになってましたし、作戦も完璧でヴェンデッタの鞍上とし…
[良い点] 重賞勝ちおめでとう! リアルタイムの競馬は見ないようにしている読者です。 理由は経済的なアレ・・ 好き嫌いで言うと大好きで「結果」はいつもエキサイトして楽しんでいるので、閑話小話は歓迎派…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ