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競走馬転生  作者: ナカH
40/82

菊花賞本番

やっとここまでこれました。


日間ヒューマンドラマ部門22位になっていました。

半端ですかね?それでも素人が書いた小説が評価されるのは嬉しいんです。

『天高く馬肥ゆる秋という言葉が相応しい日差し暖かく、雲一つ無い快晴に恵まれました京都競馬場です。


本日はクラシック三冠最後の一戦、菊花賞にて親子三代無敗の三冠馬の誕生を目撃しようと、多くの競馬ファンで満員となっております。


ロードケラウノスの無敗三冠なるか。本馬場入場です。



1枠①番、最内枠がどう影響するか。不滅の大記録、親子三代無敗三冠へ。ロードケラウノス (たに) (あらた)



1枠②番、今年クラシック全レース騎乗の若武者に、最後の一冠を。フェザーミリオン 二階堂(にかいどう) 信勝(のぶかつ)



2枠③番、前走ラジオNINKEI賞では見事な差しきり勝ちを納めました。キャプテンレビス 鞍上は初コンビ 横川(よこかわ) 忠生(ただお)



2枠④番、前走セントライト記念3着。その末脚を発揮できるか。マニュス (しずく) 義明(よしあき)



3枠⑤番、ダービー3着、神戸新聞杯3着。菊の舞台でGⅠ制覇なるか。フトウフクツ 三澤(みさわ) 公介(こうすけ)



3枠⑥番、GⅠ3戦2着3回の実力馬。今日のレースもこの馬がペースを作るでしょう。ヴェンデッタ 横川(よこかわ) (たかし)



4枠⑦番、今月3勝目をあげて初めてのGⅠ出走。ドライレンゲスト 来栖(くるす) 亮太(りょうた)



4枠⑧番、夏の条件戦連勝の上がり馬。勢いに乗って菊戴冠を狙います。メハエルドー (わたり) 直弘(なおひろ)



5枠⑨番、前走セントライト記念はクビ差の2着。巻き返しなるか。ダンシングウィナー クレール・ルメートル


5枠⑩番、青葉賞で見せたあの豪脚をもう一度。テスカトリポカ マルコ・デマルキ



6枠⑪番、骨折休養明けの前走で見事勝利。戦線離脱を余儀無くされた春の分まで走ります。ロングリングラン 岩渕(いわぶち) 昌行(まさゆき)



6枠⑫番、春の弥生賞以降は条件戦で力を付けてきました。古馬とも走った経験が活きるか。エターナルフィルム 柴崎(しばさき) 慶幸(よしゆき)



7枠⑬番、夏の条件戦で勝利重ねて菊参戦。成長著しいロックチョウ 福田(ふくだ) 洋一(よういち)



7枠⑭番、京成杯の末脚を菊の舞台でもう一度。タイシャクテン 富田(とみた) (のぼる)



7枠⑮番、札幌日刊スポーツ杯では見事勝利。2600mという貴重な経験を得ました。3000mでそれが活きるか。 オニガリ 三木(みき) 智樹(ともき)



8枠⑯番、神戸新聞杯は5着。そのポテンシャルは他の馬に引けをとりません。アイアンクライ 池子(いけこ) 謙一郎(けんいちろう)



8枠⑰番、前走怒涛の末脚で重賞初制覇。あの末脚がここ京都で炸裂するか。ミズルコディーテ 葛西(かさい) (まなぶ)



8枠⑱番、今年のクラシック皆勤賞。その実力は嘘じゃない。ウソダドンドコドン 江口(えぐち) 明夫(あきお)




この快晴に映える優駿18頭、本馬場入場をお伝えしました。


それでは人気の出走馬を中心に臼井さんに解説を―――』



***



「本馬場入場でちょっとテンションが上がってきてたけど、返し馬をやって幾分か落ち着いたようですね」


「えぇ。久々のレースで気持ちが高ぶったんでしょう。そこで変に消耗しないのがフクオの長所ですね」


調教助手でフクオの厩務員でもある翔哉さんがフクオを引きながら輪乗りしつつ、ファンファーレを待っている。


今日のフクオは過度の発汗もなく、上がりかけていたテンションも戻り落ち着いた様子で歩いている。


そうしているとスターターが台の上に立ち旗を振るう。ファンファーレだ。


今日のフクオは⑥番。先に奇数番の馬がゲートに入るため、フクオがゲートに向かうのはもう少し後だ。


「ファンファーレやこの歓声を聞いても変わらず落ち着いてますねフクオは。この図太さ本当に頼もしいですよ」


「まったくです。精神面だけなら古馬以上ですね」


等と話していたらフクオのゲート入りだ。相変わらずゲートを嫌がりもせず、すんなりと入る。


「じゃあフクオ。無事に帰ってこい」


いつも通り、レース前にフクオに言う言葉をかけ捌けていく翔哉さん。


枠入りはスムーズに行われ間もなくスタートになるだろう。


「さぁ、フクオ。歴史を作りに行くぞ」


ガシャン!




***



『快晴の京都競馬場にファンファーレと歓声が青空に吸い込まれていきます。


今年は無敗の二冠馬、ロードケラウノスの三冠が期待される菊花賞。臼井さん。ロードケラウノスを脅かす相手となるとどの馬になるでしょうか』


『はい、真っ先に対抗として上がるとすればダービーをハナ差で惜敗した⑥番のヴェンデッタでしょうか。


ヴェンデッタを管理している笠原調教師から、今回の距離延長を歓迎しているとのコメントも聞いていますしロードケラウノスにとってダービーの時以上の強敵になるかもしれません。


あとは⑮番のオニガリ。札幌日刊スポーツ杯で右回り2600mを経験できたのは大きいですね。出走馬の誰よりも今回の菊花賞に1番近い条件を走っているのはプラス要素ですね』


『ありがとうございます。さて、ゲート入りは順調に進んで残るは大外⑱番ウソダドンドコドンのみとなりました。


三冠馬の誕生か、復讐者の逆襲か。ダークホースが割って入るのか。新たな歴史を紡ぐのはどの馬だ。菊花賞スタートしました。


⑩番テスカトリポカ出足が付かないか。反対に⑥番ヴェンデッタは好スタート好ダッシュ。鞍上横川 崇の出鞭に押されて端を主張していきます。


ダービー同様出鞭を用いました横川 崇。果たしてこれがレースにどう影響するのか。


そして①番ロードケラウノスは後方。鞍上谷 新はいつも通り後方からレースを進めて参ります。


各馬は1周目の坂の下りに差し掛かって参ります。先頭は⑥番ヴェンデッタ。既にリードを4馬身とりました。どの馬も⑥番ヴェンデッタを追いません。


その後ろ②番フェザーミリオン、外から⑧番メハエルドー。すぐ後ろ⑪番ロングリングラン、その外⑬番ロックチョウが先頭集団を形成。


そこから1馬身差が開いてセントライト記念の勝ち馬⑰番ミズルコディーテここにいた。

内から⑦番ドライレンゲスト、⑮番オニガリ、その後ろ⑫番エターナルフィルム、内に③番キャプテンレビス並走。


⑨番ダンシングウィナー、⑭番タイシャクテン、⑱番ウソダドンドコドンがいて⑯番アイアンクライ。

そして無敗の二冠馬①番ロードケラウノスと④番マニュス、⑤番フトウフクツが後方で更に2馬身離れて最後方⑩番テスカトリポカで各馬正面スタンド前を通過していきます。


①番ロードケラウノスは後方です。後ろから4番手あたり。


既に7馬身差を広げた⑥番ヴェンデッタの1000m通過は1分3秒1。1分3秒1!?これは、これはハイペースでも何でもない。なんとなんとハイペースに見せかけたスローペースで後続馬を欺いた横川 崇。親が親なら子も子ということか横川 崇!』



***



「よし、うまく騙せたな」


これが笠原先生と考えた作戦だ。これまでのレースではフクオはハイペース逃げを敢行してきた。


今回も皆フクオはハイペースで逃げるだろうと考える程にはイメージを持たれている。スタートの際に行った出鞭もフェイクだ。ダービーと違いろくに力など入れていない、見掛けだけの鞭だった。


もっとも、フクオだからやれた手ではあるが。他の馬なら鞭を打つ素振りだけで反応してしまうだろう。


それによって他のジョッキーに与えたハイペースのイメージを逆手にとって、ハナに立ったら徐々にペースをスローまで落としていく。


他のジョッキーは1000m通過あたりのタイムを掲示板なり体内時計なりで把握し、そこで初めて前を行くフクオが全く飛ばしてない事に気付くだろう。


そこで慌ててペースを上げれば最後に自滅。我慢しても十分すぎる余力を残しているフクオには届かない。


このまま行けばフクオに菊の勲章をあげることが出来るはずだ。


「ん?」


そう考えていたらフクオがハミを噛んでペースを上げ始めた。


無論自分はそんな指示はしていない。まだペースを上げる局面ではない。フクオを抑えようと手綱を締めようとしたところで、何とも言えない直感が働いた。


ここでフクオを止めるべきではないと。


何故かはわからない。普通に考えればここでペースを上げる必要もない。むしろペースを上げることによるデメリットの方が大きい気がする。


だが、ここは直感を。フクオを信じてみよう。


それに、例えヘバってもその後は俺がお前を走らせてみせる。限界を迎えてからの最後の一伸び。それを馬に起こさせるのも騎手としての技術だからな。



***



『先頭を走る⑥番ヴェンデッタが第1コーナーから第2コーナーのカーブに入っていきます。1000m通過タイムのどよめきで後続馬もスローペースに気付いたか。


先頭は⑥番ヴェンデッタ。そこから7馬身開いてその後ろ⑧番メハエルドーが②番フェザーミリオンを交わして単独2番手へ浮上し⑥番ヴェンデッタとの差を詰めていく。


それを追って②番フェザーミリオン、外⑬番ロックチョウ。


⑰番ミズルコディーテ上がってきた。


少し下がった⑧番メハエルドーを交わして⑪番ロングリングラン。先団は固まって先頭の⑥番ヴェンデッタとの差を5馬身差まで詰めてきたか。


そのすぐ後ろ、⑮番オニガリ並んで⑦番ドライレンゲスト。外から外から⑫番エターナルフィルム、③番キャプテンレビスと並んで⑨番ダンシングウィナー。


⑭番タイシャクテン、⑱番ウソダドンドコドンを外目をついて⑯番アイアンクライが上がっていく。④番マニュスもそれに続く。


向こう正面の中間地点に差し掛かって参りました。


そして後方は⑤番フトウフクツ、①番ロードケラウノスもじわじわと上がってきた。最後方で⑩番テスカトリポカこれを追走し、これから第3コーナーのカーブへ入っていきます。


さぁ、後続が徐々に固まって参りました。先頭の⑥番ヴェンデッタのリードは4馬身程まで縮まったか。


⑧番メハエルドーやや後退。第3コーナー登り終え下り入ったところで⑥番ヴェンデッタが後続を突き放しにかかった。


さぁ、ロードケラウノスはどうだ!?内からじわじわ上がってくるがロードケラウノスは未だ馬群の中。中団よりやや後ろ!


先頭のヴェンデッタは早くも第4コーナーのカーブに入ってきました。


圧倒的な力を見せつけた皐月賞、ハナ差を制し栄冠を手に入れた日本ダービー。残る勲章は菊ただ一つ。


さぁ、ロードケラウノス谷 新はどうする。未だ最内、経済コースを進みます。


逃げるヴェンデッタはリードを7馬身と更に広げ直線コースに入ってきました。後続も直線コースに入ってきた!


ロードケラウノス!ロードケラウノス谷 新も直線に入る!


ここで遂にロードケラウノスが爆ぜたぁ!


内ラチの無い僅かなスペースから豪脚一閃!あっという間に馬群から抜け出した!2番手争いをしているミズルコディーテとフェザーミリオンをあっという間に抜き去り、単独2番手に浮上!残るはヴェンデッタただ1頭!


後続は伸びない!後続はもう脚が残っていない!ダンシングウィナー抜け出し3番手に浮上したが、前2頭には届きそうもない。やはりこの2頭の決着になるのか!


三冠へ向け、神の雷がここ京都にも鳴り響く!逃げるヴェンデッタ!追うロードケラウノス!しかし前まではまだ5馬身はある!残り200m!


ヴェンデッタ粘る粘る粘る!最後の一冠は譲らないと言わんばかりの粘り!横川 崇の右鞭が唸りを上げる!


最内からロードケラウノス猛追!差を3馬身、2馬身と縮めていく!


ケラウノス!ヴェンデッタ!ケラウノス!


しかし!しかしヴェンデッタだヴェンデッタだ!3000m逃げきった!


ロードケラウノスは三冠ならず!勝ったのは⑥番ヴェンデッタァァァ!


先祖の名誉にかけてこの一冠だけは譲れなかった!


歓声と悲鳴渦巻く京都競馬場。淀にて煌めいた復讐の灯火は4度目の対決で遂にロードケラウノスを破りましたヴェンデッタ横川 崇!左腕を大きく上げたこのガッツポーズ!


皐月、ダービー2着の無冠の帝王が遂に重賞初制覇!菊の栄冠を手にしました。


これは四半世紀以上の時を経て、祖父トウカイテイオーに捧げる菊の栄冠です。


そしてタイトルホルダー以来の菊花賞逃げきりを果たしましたヴェンデッタ。


ロードケラウノスは最後届かず2着となりました。


生まれる年が違えば共に三冠馬になっていたかもしれない2頭の対決はヴェンデッタがロードケラウノスの三冠を阻むという形になりました。



***



勝った。ようやく、ようやく勝てたぞ。


ダービー2400mの時、ロードケラウノスはもうあの距離が限界だと思った。でも、今日改めて英雄(化け物)を見て、その考えは捨てた。


一目見てわかった。限界とは越えるものを地で行くあの馬が、3000m持たせる身体を作ってきやがったと。


勿論馬自身が考えて作られたわけではないだろう。陣営の努力によるものも大きいに決まっている。


が、まるで天が三冠を取らせるためにそうロードケラウノスを成長させたかのような成長ぶりだった。本当に主人公みたいな馬だな、ふざけんな。


それに勝つにはおっちゃん達が考えていた作戦じゃ足りない。


だから1000mを過ぎてからペースを上げた。引き付けて突き放していたら追い付かれる。だからペースを上げて後ろの馬に脚を使わせ最後に突き放す。崇が俺を止めなくて本当に良かった。


ロードケラウノス(化け物)は確かに3000m持たせるようにはなっただろうが、持たせるだけだ。適正距離が伸びたわけじゃねぇ。


ずっと最内を通っていたのがその証左だ。大外を回っていたら持たないんだろう。


結果的に向こうのスタミナを少しでもすり潰すためこちらも打って出たのは正解だったというわけだ。


問題は俺のスタミナが持つかどうかだったが、最後は崇が俺を走らせてくれた。本当、こいつには感謝しかない。


ありがとう崇。あの日、俺に乗ってくれたのがお前で本当に良かった。


さて、戻るとするか。翔哉の兄ちゃんがこっちに向かっているしな。遠目からでもわかる、号泣じゃねぇか。


どうせなら笠原のおっちゃんも泣いてええんやで?自身が育てた馬の初めてのGⅠ制覇だ。


にしてもさっきっからなーんか脚が変だな?骨折とかじゃないと思うんだけど。


ん?んー?




菊花賞着順




1着⑥番ヴェンデッタ


2着①番ロードケラウノス 1馬身


3着⑨番ダンシングウィナー 2馬身


4着⑤番フトウフクツ 3/4馬身


5着②番フェザーミリオン クビ差

という訳でクラシック最後の一冠でようやくGⅠ制覇となりました。予想出来ていた方も多くいらっしゃるとは思いますが、こういう形になりました。

ダービーに比べ盛り上がりに欠けてしまった気もしますがご容赦ください。ハナ差決着より盛り上げるには別の要素が必要で、フクオにはまだその上積みはありませんでした。



ちょっとここから裏話をすると、この物語を書き始める最初から初重賞はここ菊花賞に決めていました。

そう思い書き始めた矢先にタイトルホルダーがセイウンスカイ以来の菊花賞逃げきり。

父が獲れなかった菊花賞制覇。

そのセイウンスカイの鞍上はタイトルホルダーの鞍上横山武史騎手の父である横山典弘騎手で、鞍上による菊花賞親子二代制覇

と、作中に盛り込もうと思い描いていたドラマの8割を現実でやってのけてしまった為、

「あれ?これわざわざ小説にする意味ある?」

と考えもしましたが、折角始めた物語なのである程度形にしようと思い直し書いてきました。


とりあえず、ここまで書いて読者さんがあまりいなければ終わりにしようと思っていましたが、畏れ多いことに既に500名以上の方からブックマークを頂けている為、(これが多いのか少ないのかはわかりませんが)もうちょっと物語を紡いでいきたいかなと思います。


が、ちょっと更新は滞ると思います。主な原因としてアルセ○スとかア○セウスとか○ルセウスとか。


あ、更新が滞る前に別視点での菊花賞の話も出したいと思うのでよろしくお願いします。

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― 新着の感想 ―
カタルシスにかける、ここまで負けさせた意味が感じられない 故に感情移入もし辛い
[一言] 例えがすごく古いかもだけど、ロードケラウノスとヴェンデッタの関係性が大鵬と輪島みたいですごく好きです
[一言] 初G1勝利!フクオおめでとう!。 ロードケラウノスは父もそうだったけど、 距離をぎりぎり走れる仕上げはされてるが 最後の1馬身は追って勝つには厳しい脚 だったんでしょうね…。 フクオのペース…
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