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競走馬転生  作者: ナカH
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馬号が決まりました

今週末は菊花賞ですね。

私の夢はアサマノイタズラです。

あれから時が過ぎ、年が明け1歳になったら馴致が始まった。と言っても最初は背中にタオルを乗せて慣れさせる事から始まる。が、そこら辺は省略していいだろう。なんも面白いことはなかったしな。


そういえば、俺の馬号が決まった。


“ヴェンデッタ”


と言う名でイタリア語で復讐という意味らしい。

復讐とは穏やかじゃないなと思ったが、父系の血筋を今では廃れた敗北者に見立て、近代日本競馬への復讐を起こせるくらい活躍してほしいという、願掛けの意味があるらしい。

水嶋のおっちゃんもロマンがあるな。実際にそうなったら完全にドラマだよ。まぁ、そのドラマに出来るかどうかは俺次第で、ドラマにするつもりではあるんだけど。





競走馬になるための訓練に明け暮れ気付けばまた年が明け俺は2歳になった。馬体も大きくなり450㎏程と中々いい感じに成長した。

馴致も順調にこなし、素直で癖のない馬として育成牧場でも評判だった。


しかし、生まれた牧場で1番になった俺だったが、それが井の中の蛙だった事を思い知らされた。俺より速い馬なんてゴロゴロいやがる。最後の瞬発力勝負じゃ全く歯が立たねぇ。


そこで、こっちは元人間として今世に持ち込めた考えられる頭をアドバンテージとして最大限発揮し、相手を観察し、どうすれば勝てるか必死に考え実行する。


そんなことをしていたら勝ったり負けたりするくらいにはなった。




そんなこんなであれよあれよという間に6月になり、入厩の日になった。


ただ、俺は結局どこの所属になるのか、どこに行くことになるのか分からない。


そもそも中央か地方か。それすら分からない。分かるのは俺の調教師になる人が笠原っておっちゃんということ。


北海道の育成牧場から馬運車に揺られフェリーに乗り更に馬運車に揺られ幾時間。やることもないので可能な限り寝ていたがようやく到着したようだ。

流石にちょっと疲れたがここはどこじゃ?


「美浦にようこそフクオ」


馬運車から降りると、俺の調教師である笠原のおっちゃんがいた。

ちなみにフクオっていうのは俺のことである。ヴェンデッタの意味である復讐から取ってフクオ。そして、母方の曾じい様のシュクフクとも掛けているらしい。


つーか、今更だが祝福の名を持つ馬の血統に復讐の名を付けるとか皮肉にも程がねぇか?


それにしても美浦かぁ。つまり俺は中央競馬で走るのね。まぁ良かった、のか?地方なら勝率は上がりそうだけど、鎌を回避するのは難しそうだし。


まぁ、その中央でも勝てなきゃ鎌どころか肉まっしぐらなわけだが。


「初めての長距離移動だったが思ったよりも消耗が少ないな」


「移動中何度か確認しましたが、落ち着いたもんですよ。今後輸送による不利は気にしなくて良さそうですね」



「そうだな。では少し歩かせてから厩舎の方で休ませよう」


「わかりました」


長い時間じっとしていた後の散歩は気持ちがいい。これからデビューに向けて頑張っていくんだな。とりあえず、ゲート試験をクリアしないとな。




「それでテキ、フクオのデビューはいつを予定しているんですか?」


美浦 笠原 雅道厩舎所属、今日からフクオの担当持乗調教助手になった田中 翔哉が尋ねた。


「ゲート試験の結果次第だが、8月4週の新潟を予定している」


「クワイトファイン産駒が中央で走るってんだから注目度も高そうですね。いい意味でも悪い意味でも」


「世間はそう思っているんだろうな。トウカイテイオーの血を継ぐ馬が現れて嬉しい。だが普通に考えれば走るわけがない。ブームに乗っかっただけの客寄せパンダだってな。

だが、フクオはただの客寄せパンダで終わる馬じゃねぇ。ありゃあひょっとするとひょっとするぞ」


「育成牧場でも中々評判だったとは聞いていましたが、そこまでですか?」


翔哉は驚いた様子で聞き返す。笠原 雅道という男は冗談を言ったりこそするが、ホラを吹くような事はない。

そんな男がフクオを評価していることに驚いたのだ。


「フクオは賢いからな。育成牧場じゃ負けた馬のことはしっかり覚えていて、その後リベンジを果たしている。全員にな。正に名は体を表すと言った具合だ」


「へぇ~、じゃあフクオには頑張ってもらわないと。メイクデビューのヤネは決まっているんですか?」


「今のところ横川 崇に依頼している」


横川 崇はデビュー6年目美浦所属の若手フリー騎手である。父に騎手の横川 光典を持ち、既にクラシック制覇経験もあり関東リーディングも獲得した期待のホープだ。


「よく受けてくれましたね。あまり付き合いがない上、こっちは世間から見れば客寄せパンダなのに」


「まだ向こうがデビュー1年目の頃何度か依頼した事がある程度の薄い縁だったが、たまたま空いていたとの事だ。」


今では向こうはフリーとしてやっている。騎乗依頼をする際は騎乗依頼仲介者を介するようになっているから断られる公算の方が高かったが、無事引き受けてもらえた。

もしかしたら育成牧場の様子を聞いて興味を持ってくれたのかもしれない。


「じゃあその縁を無駄にしないよう明日から頑張りましょう」


「あぁ。明日は引き運動をさせる程度で、様子を見ながら動かしていこう」


「了解しました」


あと3話くらいでレースになります。

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