皐月賞本番
キラーアビリティ、ホープフルステークス優勝おめでとうございます。
横山武史ジョッキーは今年だけで皐月賞、菊花賞、天皇賞(秋)、有馬記念、ホープフルステークスのGⅠ5勝と大躍進でしたね。
と思ったら通算300勝も達成していて驚くばかりです。
来年もこのまま活躍して欲しい限りです。
『さぁ、皐月賞です。各馬本馬場入場に向けて地下馬道から出て来ました。
②番のヴェンデッタが出て来ました。続いて③番のスペディッツォーネ。それでは18頭の紹介が始まります。
本馬場入場です。
クラシックの第1関門皐月賞。中山に降り注ぐ穏やかな日光と優しく撫でるそよ風が18頭を出迎えます。
1枠①番、最内枠には若葉ステークスを4馬身差の圧勝。その豪脚がここ中山で発揮されるか。ムーチョビクトル マルコ・デマルキ
1枠②番、ホープフルステークス2着。前走から人気を少し落としましたが絶好の内枠で勝利を狙います。ヴェンデッタ 横川 崇
2枠③番、前走はスプリングステークスハナ差の2着。持ち前のスピード持続力で狙うはGⅠの称号。 スペディッツォーネ 名瀬 陽太
2枠④番、陣営は強気の逃げ宣言。その名の通り、嵐を呼び起こすか。ドトウノアラシ 田嶋 一夫
3枠⑤番、共同通信杯は最後方からのごぼう抜き。今日もその驚異の末脚で他馬を圧倒するか。 ゲイリーホーン 池子 謙一郎
3枠⑥番、前走のきさらぎ賞ではウメノキオリオンとの叩きあいを制し皐月賞に望みます。鞍上は皐月賞初騎乗。フェザーミリオン 二階堂 信勝
4枠⑦番、小柄な馬体に収まりきらぬ闘志と根性。競り合いには絶対の自信あり。ヒカリノシシャ 岩渕 昌行
4枠⑧番、弥生賞ディープインパクト記念でその良血を証明し、クラシック戦線に名乗りをあげました。ダンシングウィナー クレール・ルメートル
5枠⑨番、スプリングステークス1着。鞍上は先週の桜花賞をラヴズフォーチュンで制した三木 智樹がクラシック連覇を狙います。ワルムンド
5枠⑩番、シンザン記念1着、スプリングステークスハナ差の3着。距離延長の影響はどう出る。初コンビ ゲッタロイ 榎本 樹
6枠⑪番、前走きさらぎ賞2着。ウメノキ一家悲願のGⅠ勝利をもたらすことは出来るのか。ウメノキオリオン 柴崎 慶幸
6枠⑫番、前走弥生賞ディープインパクト記念3着。その末脚を無視することは出来ません。マニュス 雫 義明
7枠⑬番、弥生賞ディープインパクト記念2着。先週昨日と重賞連勝の鞍上を背に。ウソダドンドコドン 江口 明夫
7枠⑭番、若葉ステークス2着。鞍上は皐月賞2勝の名手。3勝目なるか。ウォーデーバイン 福田 洋一
7枠⑮番、今年の京成杯の勝ち馬。鋭く延びる差し脚でタイトル奪取に臨みます。タイシャクテン 富田 昇
8枠⑯番、兄は今年のダービー卿チャレンジトロフィーの勝ち馬。兄を導いた鞍上とのコンビ。シルビーコウヨウ 横川 光典
8枠⑰番、3戦3勝、昨年の最優秀2歳牡馬。クラシック親子三代制覇の第一歩へ。ロードケラウノス 谷 新
8枠⑱番、奏でるは勝利の調べ。現在2連勝。GⅠの舞台で3連勝なるか。ララフォルテッシモ 飯田 大輔
以上、18頭今年の主役達。皐月賞の入場でした。
この後の阪神のファンファーレまで人気馬の確認をしていきたいと・・・』
***
返し馬も終わり、今はポケットと呼ばれるコーナーから引きこんだポケット状の場所にいる。
屋根のあるところで輪乗りしているのをたまに見掛けると思うが、あれがポケットだな。
さて、出走時間が近付いてきたのかポケット地点からゲート前に移動してきたぞ。
ゲート前に近付いた結果、テンション上がってきた馬もちらほら。
お、翔哉の兄ちゃんが来たぞ。
「よしよし。気合も入っているし、集中も出来てるな。もうすぐファンファーレだ。頑張れよフクオ」
あぁ、パイセンに負けてらんねぇ。絶対GⅠタイトル獲ってくるからな。
ファンファーレだ。奇数番の馬が入り始めたな。
今日の俺は②番。入るのは後からだな。
ふむ、今日のメンバーは皆素直に入っていくな。それはすぐ入ることになりそうかな。
「よし、行くぞフクオ」
と、思っていたら順番になったようだ。兄ちゃんに促されてゲートに入る。
「無事戻ってこい」
そう言ってゲートから出て捌けていく兄ちゃん。
「始まるぞ」
短く一言俺に声をかける崇。
ガシャン!
***
『今年もメンバーが揃いました。世代を代表する18頭。一番人気は2歳王者ロードケラウノス、続く二番人気弥生賞ディープインパクト記念の勝ち馬ダンシングウィナー、三番人気ゲイリーホーン。
枠入りは極めて順調。そして大外⑱番ララフォルテッシモ収まりまして、今年の世代最強馬を決める第一章皐月賞、スタートしました!
綺麗なスタートです。出遅れはありません。
さぁ、まずは何が行くか。やはり行った。ホープフルステークス2着②番ヴェンデッタが端を主張するか。
そうはさせじと逃げ宣言④番ドトウノアラシ田嶋一夫。
先行する2頭が端を競う形となりました今年の皐月賞。
問題は後続の各馬がこれをどう追っていくか。
3番手は最内①番ムーチョビクトル、⑥番フェザーミリオン、外に⑭番ウォーデーバインと⑯番シルビーコウヨウが5番手という体勢になっています。
前2頭を後続馬が追う展開になってきました。各馬は第1コーナーから2コーナーに向かっていく各馬です。
最後方の⑰番ロードケラウノスまで既に10馬身以上差がついています。縦長の展開になっております、今年の皐月賞。
先頭の2頭は第2コーナーから向こう正面へと入っていきます。
新緑溢れる中山競馬場。先頭争いは②番ヴェンデッタ横川崇、外から④番ドトウノアラシ田嶋一夫が②番ヴェンデッタを抜く構えだ。
2番手以降既に10馬身以上離れて3番手は⑥番フェザーミリオン二階堂信勝、その内①番ムーチョビクトル、⑭番ウォーデーバイン、ピンクの帽子⑯番シルビーコウヨウ。
少し切れて③番スペディッツォーネ、その外⑨番ワルムンド並んで⑩番ゲッタロイと⑦番ヒカリノシシャ、その外から⑱番ララフォルテッシモ上がっていく。
1000mの通過は57秒8!かなり飛ばしています②番ヴェンデッタと④番ドトウノアラシ。
そして後続集団は弥生賞勝った⑧番ダンシングウィナー クレール・ルメートル、すぐ後ろ⑬番ウソダドンドコドンがぴったりマーク。
その外から⑮番タイシャクテン、それを追うように⑬番ウメノキオリオン共に上がっていく。
その後方⑤番ゲイリーホーン池子謙一郎は変わらず後方、鞭が一発入った⑫番マニュス。最後方⑰番ロードケラウノスですが、前が飛ばしている!
さぁ、⑰番ロードケラウノスが動いた!それに反応して⑤番ゲイリーホーンも動く!
第4コーナーのカーブに入って後続が先頭との差を詰めてくるがまだ先頭との差は8馬身はある!
スタートから端争いをしていた④番ドトウノアラシ苦しくなった。
さぁ、3番手以下の各馬がどう差を詰めるか。残り400m。
⑰番ロードケラウノス、⑤番ゲイリーホーンは中団辺りまで上がってきた。
先頭は②番ヴェンデッタ。しかしスタートから繰り広げてきた激しい端争いで脚はまだ残っているのか?
④番ドトウノアラシは馬群に沈んだ。
さぁ、粘る粘る粘る②番ヴェンデッタ。
後続は横一杯に広がって最後の直線。⑰番ロードケラウノスはやってくるか。
2番手は⑥番フェザーミリオンだが中々差は縮まらない。中から抜け出してきた⑧番ダンシングウィナーと⑬番ウソダドンドコドン。⑦番ヒカリノシシャも内から切り込んでくる!
しかし差を縮めさせない②番ヴェンデッタ!
そして大外からキタキタキタ!⑤番ゲイリーホーンと⑰番ロードケラウノスが伸びてくる!
ホープフルステークスの再現なるか!
しかし、最内②番ヴェンデッタも負けじと伸びる!逆襲なるか!残り200mを・・・』
***
スタートからここまで先頭争いをしてきた。
どうにか相手を潰すことには成功したが、後続を振り切る力は残っていない。このまま俺も馬群に沈むことになる・・・
な、わけねぇだろ!
こちとら最初っから俺についてきた馬なんぞ眼中にねぇ!
俺が見ているのはロードケラウノスただ1頭。あいつに勝てればレースに勝てる。
それだけを考えてここまでハイペースでぶっ飛ばしてきた。
ホープフルステークスでは5馬身差があったが2馬身ちぎられた。
ならば今回は8馬身差をつける。7馬身詰められるなら8馬身差をつければいい。
単純だがこれが俺が考えた限りの最適解だ。おっちゃんや崇とコミュニケーション出来ればもっといい策があるかもしれないが、仕方ない。
ハイペースで潰そうにも最後方にいるあいつを磨り潰すのは難しいからな。
このペースでも俺ならばゴールまでギリギリ行ける。
伊達にこのコース、この距離を3回も走ってない。
唯一の懸念が崇が俺を抑えて先頭を譲ってしまう事だったが、崇は好きに行かせてくれた。
それが俺が行きたがっているのを察してなのかはわからないが、とにかくこれでやれることはやった。
あとは逃げきるだけだ。崇!今度こそお前にGⅠをプレゼントしてやるからな!
残り200mを切った。
やはり大外から来たなロードケラウノス!ゲイリーホーンも来ているが、その位置じゃ俺には届かない。
ロードケラウノスもそこからじゃ届かないだろう。このままリードを、リード、を?
おい、嘘だろ?
***
『・・・残り200mを切った!ロードケラウノスが更にギアを上げたか凄い脚で飛んできた!
これがこの馬の本当の力なのか!?
最内ヴェンデッタも粘る!しかし、ロードケラウノス!ロードケラウノス残り100m!
ヴェンデッタかロードケラウノスか!ロードケラウノス!前との差を縮める!差しきるか?差しきるか?差しきった!差しきった!ロードケラウノス今ゴールイン!
強い!やはり2歳王者は強かった。無敗の皐月賞馬そして、夢の親子三代無敗の三冠馬へまずは一冠目を手に入れましたロードケラウノス。
タイムは1:57.5!1:57.5!これは中山レコードだ!
2015年にラブリーデイの出したタイムをコンマ3秒縮めましたロードケラウノス。
2着は②番ヴェンデッタ、3着に⑤番ゲイリーホーンとホープフルステークスと同じ着順となりました。』
***
また、負けた。
今回は油断も慢心もなかった。勝つために出来得る限りの事はやった。それでも勝てなかった。
まさかホープフルステークスの時よりも更に上があったとは。完全に見誤った。
「フクオ、お疲れさん。あのレコードはほぼほぼお前が作ったようなもんだ。よくやったな」
「そうだぞフクオ。お前は十分強かったよ」
崇や翔哉の兄ちゃんが慰めてくれているが、勝てなかったことには変わりない。
そうだ勝ちたかったんだよ。これで4連敗じゃねぇか。相手は俺みたいに人としての頭脳なんてない普通の馬なのに。
チート使ってる癖に勝てないとか情けないにも程がある。ちくしょう、ちくしょう。
***
レースが終わり、引き上げる最中フクオはずっと落ち込んでいるようだった。
慰めてみたが全く効果がない。
今日のフクオはいつも以上にやる気に満ちていた。
スタートからの先頭争いの時ドトウノアラシとの競り合いになった。抑えようとも思ったが、やる気になっているフクオの邪魔をしない方がいいと思いそのまま行かせた。
その結果2着だったわけだが、恐らくフクオ自体もレコードかレコードタイで走り抜いている。
あの馬さえいなければと思わないと言えば嘘だろう。
それほどまでに悔しいレースだった。
「崇、お疲れさん」
そう思っていたら笠原先生に声をかけられた。
フクオから降り、後検量に向かう準備をしながら言葉を交わす。
「また、勝てませんでした。すみません」
「謝るな謝るな。内容は完璧だったよ、フクオもお前もな。非の打ち所もねぇ騎乗だったんだ。これで勝てなかったならしょうがねぇよ」
そう言いながら肩を叩く笠原だったが、やはり悔しさが滲んでいた。
それはそうだ。今笠原本人が言ったようにどこにもミスはなかった。なのに勝てなかった。悔しくないはずがない。
「前にも言ったが、本当の勝負はダービーからだ。距離が伸びれば伸びる程恐らくフクオは有利になる。次こそは勝ってやろうじゃないか」
「はい。次こそは」
会話を終え後検量へ向かう。
まだ確定ではないが、フクオは皐月賞2着になるだろう。
皐月賞2着なら日本ダービーへの優先出走権を得る。問題なく日本ダービーに挑める。
日本ダービー。全競馬関係者の憧れ。勿論まだ自分自身まだ勝ったことのないレースだ。
今年こそは。
そう心の中で誓い崇は検量室へ入っていった。
皐月賞着順
1着⑰番ロードケラウノス
2着②番ヴェンデッタ 1/2馬身
3着⑤番ゲイリーホーン 3馬身
4着⑧番ダンシングウィナー 1馬身
5着⑦番ヒカリノシシャ ハナ差
展開や内容が分かりやすい上にワンパターンかもしれませんが、これが私の限界です。
どうか御容赦の程よろしくお願い致します。




