皐月賞パドック
中山大障害オジュウチョウサン、王の帰還。
有馬記念エフフォーリア、現役最強の証明。
共に優勝おめでとうございます。
パンサラッサには夢を見させてもらいました。また来年頑張れ!
第3回 中山競馬 8日目 第11レース
皐月賞(GⅠ)芝 2000m 天気:晴れ 馬場状態:良
弥生賞から約一月。オレは再び中山競馬場、皐月賞のパドックにいた。
弥生賞では絞りきれなかった馬体も減量に成功し、(多分)ベストウエイトに近いコンディションで臨めている。
今回のメンバーはホープフルステークスの時と同じかと思いきや初見の馬が結構いる。
中には朝日杯フューチュリティステークスに出ていた馬や、2歳の年末には間に合わなかったが3歳の4月には間に合った実力馬なんかがいるんだろうな。
ディープインパクトや俺のじい様のトウカイテイオーなんかもデビューが遅めだったから2歳GⅠには出られなかったわけだしな。
そうした馬が1月から3月辺りに行われたOPやリステッド、重賞レースやオレが出た弥生賞にスプリングステークスや若葉ステークスと言った皐月賞のトライアルレースで勝つか2着、3着に入りここにいるんだろう。
まぁ、中には1勝しかしてないがどっかの重賞で2着による賞金加算で出られた馬もいるかもしれんけど。
何頭かは見た顔というか名前な訳だが。やっぱりいるよなぁ、いないわけないよなぁあの化物ことロードケラウノス。
それに弥生賞でオレに勝ったダンシングウィナーにウソダドンドコドン、マニュスと京都2歳やホープフルステークスで戦ったフェザーミリオン。
そしてオレに勝ったことないくせにちゃっかり重賞馬になっていたゲイリーホーン。
覚えている限りではこんなとこか。もしかしたら忘れている馬もいるかもしれないが覚えていないということはそこまで脅威ではないってことだろう。
そういえば今回の俺の馬番は②番になった。内枠馬番は大変ありがたい。外枠でも逃げが出来ないわけではないが、端への立ちやすいのは内枠外枠どちらかなど論ずるまでもない。
いい枠を手に入れたんだし、なんとか勝ちたいところだ。
「ふう、やっぱりGⅠってのは緊張するな。それもクラシックともなれば尚更だ。フクオ、お前本当凄いところに来ているぞ」
オレを引いている翔哉の兄ちゃんが声をかけてくる。
相変わらず緊張しているようだが、ホープフルステークスに比べれば大分マシになったようだ。
でもそうだな。まさか俺がクラシックに、それも5番人気で出走することになるなんて、俺が笠原のおっちゃんのところに来た時は翔哉の兄ちゃんも思ってもいなかったろうな。
「今日は水嶋オーナー奥さんだけでなくお子さんも来ているらしい。良いところ見せないとな」
なんと。水嶋のおっちゃん子供がいたのか。いや、そらいるか。おっちゃんと奥さんの仲も良さそうだし、馬主やっているなら経済的な不安もないだろう。
そうかそうか。おっちゃんも自分の子供に自分の馬が勝つところを見せたいってことか。ならばその願いに応えるのも吝かではない。というか勝ちたいのは俺も一緒だ。任せてくれおっちゃん。
「さぁ、号令だ。頑張ってくれよフクオ」
「翔哉さん、よろしくお願いします」
「横川ジョッキー、こちらこそよろしくお願いします」
いつもの挨拶を交わして俺に騎乗する崇。そのまま本馬場へ向かう。
いつもはもっと雑談を交えながら本馬場に行くんだが、今日は特に会話が無い。これから向かう場所がこれまでとは違う舞台ってことなのか?
皐月賞、GⅠ、クラシック、八大競走、最も速い馬が勝つ。前世で知った限りの知識ではその程度の認識だったがやっぱり競馬に携わる人にとっては特別なんかな?
「よし、返し馬行ってこい。また後でな」
あぁ、行ってくるよ兄ちゃん。またゲート前でまた逢うことになるがな。
俺が勝てば笠原のおっちゃんの厩舎2頭目の重賞勝ち馬になる。
実はトニーパイセンが一足お先に勝っておっちゃんの厩舎数年振りの重賞馬になった。未勝利から4連勝で一気に重賞馬とかシンデレラ過ぎんか?
パイセンは崇の親父だか兄貴が乗って勝ったらしい。 次は安田記念らしいがそのまま主戦騎手として乗り続けるらしい。
パイセンにも相棒が出来たみたいで喜ばしい限りですよホント。
さて、パイセンのこともそうだが今は自分のことだな。頭切り替えていかないと。
***
某動画サイト
『はい、皆さんこんにちはー。今日はね、皐月賞という事で馬券予想していきたいなと思います。
といっても今年はド本命馬がいるので予想しやすいんじゃないかなと思います。
恐らく今年の皐月賞はロードケラウノス一強と言っていいんじゃないでしょうか。
弥生賞のダンシングウィナーやスプリングステークスのワルムンド、共同通信杯のゲイリーホーン等の実力馬はいますが、ロードケラウノスが頭一つ二つ抜けている印象ですね。
ホープフルステークス2着だったヴェンデッタですが、弥生賞を見る限り抜かされたらそれまでって印象でしたし、もう他の馬もハイペースだからといって惑わされることもないでしょう。
それを踏まえて・・・』
***
「ほら、お父さんの馬あんまり評価良くないよ」
中山競馬場の馬主席では中学生くらいの女の子が某動画サイトの馬券予想動画をフクオの馬主である水嶋 穂高に見せてきた。
「楓、その人は前のレースの時お父さんの馬を結構評価していたよ。その時はお父さんの馬が勝てなかったから今日は厳しいこと言っているんじゃないかな」
「え?・・・あ、ホントだ。動画のコメントでも今日お父さんの馬が勝つんじゃないかって言ってる」
「今日のお父さんの馬はその時よりも調子が上がっているんだ。だからもしかしたら勝てるかもしれないよ」
会話からわかる通り、今水嶋と会話しているのは水嶋の娘の水嶋 楓である。
弥生賞で話していた通り、今日は家族総出で応援に来ていた。
水嶋の子供は今目の前にいる中学2年の長女、楓と
「ほら、雄大。ゲームばっかりしていないで、もうすぐお父さんのヴェンデッタちゃんの走るレースになるわよ。応援しないと」
「何言ってるの、勝つわけないじゃん」
妻の美恵が相手をしている小学6年の長男、雄大である。
楓の方は馬券予想動画を見るなど競馬に対して興味を持ってくれているが、雄大の方はあまり反応が芳しくない。
どうやら雄大なりにヴェンデッタについて調べたらしく、父のクワイトファインの現役時代の競走成績を見てヴェンデッタも走らない馬と思い込んでいるらしい。
「そんなことないわ。ヴェンデッタちゃん今日はきっと勝ってくれるわ。ね、貴方」
「そうだな。ヴェンデッタを勝たせるために頑張ってくれている人達やヴェンデッタが勝つと思っている観客の為にもヴェンデッタには頑張ってもらわないと」
「ふーん。ま、ビリッケツにならなきゃいいね」
美恵とともに苦笑いを浮かべながら雄大にはこれ以上言葉をかけても意味はないと悟った。
それに雄大が言ったように最下位になる可能性だってあるのだ。人気の無い馬が勝つこともあればその逆もある。それが競馬だ。
パドックから本馬場に出て来たヴェンデッタを見ながら水嶋は心でエールを送った。
遅れましたが、ブックマーク400人突破誠にありがとうございます。
これからも遅い更新ではありますが、気長にお待ちくださいますよう御願い申し上げます。




