笠原陣営、フクオの次走を思案する
話の備蓄が尽きました。
明日の投稿はありません。ご容赦のほどよろしくお願い致します。
「それでフクオはどうだ?」
「飼い食いは悪くないですが多少疲れが見えますね。身体的ではなく、精神的なものだと思いますが。少し環境を変えて休ませた方がいいかもしれません」
「そうかわかった。二週間ほど短期放牧に出そう。手続きはやっておく。」
笠原と翔哉はフクオに関しての打ち合わせを終えた後、もう一人に視線を向けた。
「さて、まずは改めてよくやってくれた崇。お陰でうちの厩舎から新たなオープン馬が出てくれた」
「いえ、こちらこそ乗せていただきありがとうございました。次も頑張ります」
「頑張ってもらうためにもフクオの次走を決めんとな」
美浦 笠原 雅道厩舎の事務所ではフクオの次走について話し合うため関係者が集まっていた。この厩舎の主である笠原。フクオの主戦騎手の崇。フクオの持乗調教助手翔哉の3人である。
「大目標はホープフルステークスと聞いていましたが、芙蓉を勝てたお陰で賞金は足りています。このまま直行でもいいと思いますが?」
翔哉が早速意見を出した。
「それもアリだが、水嶋さんからの注文で来年のクラシックを見据えたローテーションをお願いされているんだ。
出来れば東京か京都を走らせておきたい」
「そうなると東京2歳がベターな選択肢ですかね。左回り1800mは新潟で走ってますし、坂の違いはあれど、似たようなコースですから」
笠原の言葉を聞いて崇も意見を出す。
「北海道から美浦に来たときやメイクデビューで新潟に行ったときもフクオはケロッとしていた。
だから賞金の心配がなくなった今、遠征を経験させたくもある。恐らくフクオがクラシックを取れる可能性が一番高いのは菊花賞だ。
フクオは頭がいい。一度走ればコースも覚える。京都2歳は2000mとうってつけだ。淀の坂を知っておけるのも大きい。」
「ですが、京都2歳を見送っても2月にきさらぎ賞がありますし、2歳の段階で無理に遠征する必要もないのでは?」
翔哉の方も意見を述べる。
どうやら2人は京都遠征は気が進まないようだ。それも仕方ない。普通は関東馬は東の、関西馬は西のレースを使うのが一般的だ。
それに翔哉の言うとおり、京都を走らせたいなら1800mだがきさらぎ賞でも走れる。今後の戦績によっては斥量の心配こそあるが、ここは無難に東京2歳にすべきか。
と、思案していると笠原の携帯に着信が入った。
「水嶋さんからだ。どうしたんだろうか?二人ともちょっと待っててくれ」
そう言って電話に出る笠原。
「はい、笠原です。これは水嶋さん先日はどうも。改めてヴェンデッタをうちに預けてくれてありがとうございます。
えぇ、えぇ。え?ヴェンデッタの次走ですか?えぇ、今話し合っておりまして、ホープフルステークスひいては来年のクラシックを見据えてとのご注文でしたので、先日お話したように東京2歳か京都2歳のどちらかに出走させてから、ホープフルステークスへと思っています。
はい。はい。・・・なるほど。そうですか。ではそのようにしましょう。え?なんですか?はぁ。いえいえ。貴重なご意見ありがとうございます。それでは失礼します」
「テキ。水嶋さんはなんと?」
「あぁ、京都2歳を目指してはどうかと言われたよ。ここで負けても、ホープフルステークスへの出走は変わらずとのことだ。」
馬主である水嶋の発言を無視するわけにもいかない。フクオの次走は実質決定した。
「すまんな崇。わざわざ来てもらったのに。」
「いえ、それはいいんですが。
水嶋さん、どうしてわざわざ連絡してきたんですかね?元々レースに関しては先生に任せるとのことではなかったんですか?」
「確かに不思議だな。最後の方、ボソッとまた気が変わらないとも限らないからと言っていたようだが、なんのことだろう?」
まさか笠原達も水嶋がどうにか妻の説得に成功したものの、いつまたシンザン記念をと言い始めるかわからない為、先んじてフクオのローテーションを確定させた等とは夢にも思わないだろう。
フクオのマイル出走の可能性の一つはこうやって回避されたのだった。
某ゲームのレースを10回やって、1回でも鋼の意志が出るかどうかで展開を変えようとしたんですが、運のいいことに鋼の意志が発動したのでホープフルステークス出走となりました。ちなみに鋼の意志が出なかったらシンザン記念行きでした。