笠原氏、フクオの次走を思案する
菊花賞が終わったかと思えば今週末は天皇賞(秋)ですね。
コントレイルかグランアレグリアかエフフォーリアかワールドプレミアか。
個人的には過去16戦全てのレースで掲示板を外していないカレンブーケドールに頑張って欲しいですね。
美浦 笠原厩舎の事務所でその厩舎の主、笠原 雅道はヴェンデッタの次走について検討していた。
次走は芙蓉かサウジアラビア、もしくはアイビーか。
フクオの適正距離は恐らく2000m以上。胴長でスラッとした馬体。筋肉の付き方から見ても距離が伸びれば伸びる程いいだろう。
ただ、先日のレースを見る限り1800mでも十分こなせるようだ。
3歳になってしまうと本格化する馬も増えてくるが、ライバルが少ない2歳の今なら2000m以下のレースでも十分狙う事が出来る。
東京2歳やそれか遠征して京都2歳ってのも悪くないが、ちと間隔が開きすぎるか。フクオは長距離移動も苦にしないし遠征自体は問題無さそうだがな。
大目標はホープフルステークスと水嶋さんからの要望がある。
これに関しては今は特に考えなくていい。とらぬ狸のなんとやらだ。
水嶋さんは昨今のオーナーにしては珍しく注文の少ない人だった。最終的にはこのレースを目指してほしいが、それまでのローテーションについてはこちらの裁量で決めていいとの事だ。
勿論、こちらが決めたローテーションを確認して了承してもらう必要はあるが。
そんな水嶋さんだが、ホープフルステークスの他にもう一つ注文をつけてきた。来年のクラシックを見据えたローテーションにしてほしいとの事だった。
どうやら先日のレースを見てフクオへの期待が大きくなったらしい。
気持ちはわかる。自分もその一人だからだ。
そうなるとクラシックを見据えて中山の芙蓉ステークスから東京2歳または京都2歳を経てホープフルステークスといったところか。
少々詰め込みすぎにも思えるが、短期放牧を駆使していけばいけないことはない。
勿論このローテーションは最初の芙蓉ステークスを勝つ事が前提。まずは芙蓉ステークスを勝てるよう調整していかなくては。
と、考えをまとめていたら持乗調教助手の翔哉が入ってきた。どうやら仕事が一区切りついたらしい
「テキ、フクオの世話が終わりました」
「お疲れさん。で、どうだ、フクオの調子は?」
「レース直後とは思えないほど元気ですよ。連闘でも余裕でこなせるんじゃないかと思うくらいです」
実際フクオはレース後による反動もなく、飼い葉をモリモリ食べていた。
「そうか。あれだけタフなレースをしたあとだから心配だったが、杞憂だったな。なにはともあれ良かった」
「それでフクオの次走は決まったんですか?」
「芙蓉ステークスだ」
「まぁ、そうですよね。サウジアラビアRCって選択肢もありますけど、1600mはフクオには忙しすぎるでしょうし。」
「試してみたくはあるんだがな。流石に水嶋さんを説得させる自信はないよ」
水嶋さんにはフクオの適正距離の事は話している。そもそも血統から言ってステイヤー血統だ。
勿論、血統が全てではない。稀代のスプリンター、サクラバクシンオーを母父に持つキタサンブラックなどがいい例だ。
それでもわざわざマイル戦に使う理由もない。マイルに出走するかはこれからのレース結果次第だ。
「そういえば、横川ジョッキーが今後もフクオに乗りたいって言ってきたって本当ですか?」
「あぁ。元々主戦になってもらえたら儲けものぐらいな気持ちでの騎乗依頼だったんだが、まさか向こうから言ってくるとは思わなかったわ」
先日のレース後、改めてフクオの主戦騎手依頼をしようと思っていたら、崇の方から次のレース以降の主戦を打診された。
向こうは関東リーディング。こちらは牝系こそ主流とは言えないが現在も続く血統だが、父系は今や化石と言って差し支えない零細血統。血統だけ見るなら明らかにトップジョッキーがお手馬にするような馬じゃねぇ。
だが我々がフクオに期待しているように、崇もフクオに何かを見出だしたのだろう。
なんにせよ、ここで得られた縁を逃す手はない。フクオがこれからも勝ち上がるためも崇が乗ってくれるのは歓迎だ。
「崇の主戦に関しては水嶋さんに芙蓉ステークスの了承を得るついでに話しておこう。水嶋さんも崇をフクオの主戦にと言っていたし、何事もなく了承されるだろうがな。
それじゃあ、今後は中山コースの対策で坂路調教メインで進める。翔哉の方はフクオの体調管理、よろしく頼むぞ」
「わかりました」
実際の今の競馬は馬主さんの力が強くなってて、騎手なんかも懇意にしている騎手を馬主さんが指名することがほとんどだとか違うとか。
本作では調教師が決めていることにしています。




