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グリーンスクール - 好きだから  作者: 辻澤 あきら
3/15

好きだからー3

 屋上には何人も人がいて、食事をしている人たちもいれば、お喋りしている人たちもいます。東側と西側の両方を見ましたが、やっぱり見つかりません。下を覗いて探してみましたが、まったく友崎君らしい姿は見つかりませんでした。

「いないね」

「やっぱり、見つからないね」

 扉を開けて校舎内に入ろうとした時、頭の上から声が聞こえてきました。ちょっと気になったので見上げてみると、あの青みがかった制服が見えます。はっとして、建物から離れ、給水タンクを見上げてみると、やっぱりあの制服が見えました。和美ちゃんを呼び寄せて確認してもらうと、やっぱり友崎君でした。給水タンクの下で友崎君は誰かと話しているようでした。いえ、もっと威勢のいい声です。話しているのではなく、何か、そう叫んでいるような、わめいているような、そんな声です。よく聞いてみると、誰かの声も聞こえます。弱々しい、こんな言い方をすると変かもしれませんが、泣きそうな声です。

「もう一丁!」

 友崎君の澄んだ声が威勢よく響きました。ちょっと間をおいて、友崎君のとは違う悲嘆の声が聞こえました。

 私たちは顔を見合わせて、友崎君を呼びました。しばらくは何の返事もありませんでした。もう一度呼んでみると、上の方で、誰かが呼んでるぞ、という声がして、顔がひとつ覗きました。それは、初めて見た友崎君の顔でした。下から見上げて見ていたのですが、友崎君の顔は、女の子のように線の細い、それでいて浅黒い顔でした。私たちと友崎君と、お互いに顔を見合わせながら、誰だったか思い出そうと記憶を辿っているかのように、黙ったまま見つめ合いました。やがて、友崎君が口を開きました。

「呼んだか?」

 あっけらかんとしたその口調に、私たちは拍子抜けしてしまいました。

「呼んだわよ」

 和美ちゃんの声に、子犬が首を傾げるように、友崎君はきょとんとしていました。

「何か用?」

「何か用、じゃないわよ!先生が探してこい、って」

「由起子先生?」

「そうよ!」

 和美ちゃんの勢いに気押されて、友崎君は頭をかきながら、しょうがねえな、と言いながら、「わかった、行くよ」と叫んだのです。

「そういうわけで、また明日な」

 給水タンクの奥に向かって、友崎君は叫ぶと、梯子を降りてきました。

「よぉ、といっても、誰だ、お前ら」

「あたしたちは、同級生の、西野と、こっちは古木」

「そうなの?」

「そうなの、じゃないわよ!どれだけ、探し回ったと思ってるの!」

 和美ちゃんが大袈裟なことを言うのを、袖を引っ張って止めようとしたのですが、和美ちゃんの勢いは止まりません。

「大体ね、どんな事情があるかしらないけど、授業をさぼるなんて許されることだと思ってるの?あたしたちは、中学生よ、義務教育なのよ。それが、アルバイトか何か知らないけど、それが理由で居眠りしたり、さぼったりすることが許されるの?」

 友崎君は頭を掻きながら、和美ちゃんの意見を聞いていました。その時の友崎君の様子は、神妙なようでもあり、やっぱりふざけているようでもありました。

「悪かった。かもしれないけど、あんたに謝らなけりゃならない理由もない、よな。今日は、初日で、疲れたんだよ。緊張っていうのかな。それで、居心地も悪かったし、とりあえず、寝てようと思ったんだけど、あんなことになったし、まぁ、いいかってことで、出てったんだ。だけれども、だ。由起子先生の機嫌を損なうと都合が悪いから、マジメにやりますか」

「あなたねぇ!」

 和美ちゃんの言葉に耳も貸さず、上を向いて手を振ると、友崎君は校舎内に入っていきました。上を見上げると、二人の男子が手を振っています。はっとして和美ちゃんに合図すると、和美ちゃんも上を見て、そして睨んで二人を押し退けました。

 私たちは、予鈴を聞いて慌てて教室へ駆けていきました。


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