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グリーンスクール - 好きだから  作者: 辻澤 あきら
10/15

好きだから-10

 放課後、友崎君はいつものようにさっさと帰ってしまいました。私は和美ちゃんに頼んでついて来てもらって、1年E組の教室に行きました。ちょうど中井君と岬君の二人が教室から出てきました。私たちの話に驚いている二人にお願いして、相談にのってもらうことにしました。


 6時間目の授業が終わると、いつものように友崎君はさっさと帰ります。私もさっさと学校を出て、学校の近くの和美ちゃんの家に行き、そこで着替えました。それから急いで狭間東駅前街へ行くと、約束通り市役所側の入り口に中井君が待っていました。

「いま、岬が尾行してるから。店がわかったらここに来るって」

 間もなく岬君が現れました。それから、二人は一旦駅のトイレに着替えに行きました。

 昨日の噂が気になってどうしても真相を知りたかったので、和美ちゃんに協力してもらうことにしたのでした。ただ和美ちゃんも一人ではつらいからということで、二人に協力を乞うたのでした。それと、二人が友崎君をどう思っているのかも知りたかったこともありました。二人は私たちの、本当は私の、お願いを聞いて協力してくれると言いました。

 そして、今日、これから、4人で潜入を試みるのです。


 二人が私服に着替えて戻ってきました。そして、できるだけ慣れた雰囲気で繁華街の中に入っていきました。まだ時間は早いけれど、補導されないように、高校生のような顔をして歩きました。

 岬君が案内してくれた店は、『花&蝶』という店でした。

「さっき、そこの裏口から入ったから、間違いないぜ」

「じゃあ、入ってみようか」

「お前から、入れよ」

「嫌だよ、お前入れよ」

「いいわ、あたし、入る」

 和美ちゃんがそう言って、私の手を引っ張りながら扉を開けました。


 入り口は薄暗かったのですが、店内に入ってみると蛍光灯がすごく明るくて、何も音楽は流れてませんでした。テレビドラマで見たクラブと随分違うなと思いながらきょろきょろして入っていくと、離れたところから女の人の声がしました。

「すいませぇん、まだなんです。いま準備中なんですよ」

 丸い眼鏡を掛けたかわいい女の人が、エプロン姿で立っていました。

「…そうなんですか」

「準備中の札、出てませんでした?」

「いや、なかったよな」

「うん」

「じゃあ、出すの忘れたのね。ごめんなさい。でも、中学生は出入り禁止ですよ」

 クスクス笑いを浮かべながらその女の人は言いました。

「ぇ、わかります?」

「ええ、わかります」

 私たちは顔を見合わせながら、顔を赤くしてしまいました。高校生に見えるような恰好をしてきたつもりだったのに、という思いが誰にもあったからです。女の人はクスクス笑っています。私は、この人なら直接訊いてみても大丈夫だと思い、思い切って質問しました。

「あの、ここに、友崎君っていう男の子が働いていませんか?」

「トモサキ君?」

「友崎純君って言うんです」

「いないわよ」

「あの、名前をごまかしてるかもしれないけれど、背はあんまり高くなくて、華奢で、髪が長いめで」

「中学生なの?」

「そう、そうなんです」

「ごめんなさい、いま、私とマスターしかいないわ」

「でも、確かにここの通用口から入っていったよ。俺見たもん」

「尾けてきたの?」

「あぁ、うん」

「でも、いないわ。わたしもアルバイトだけど、もうすぐすると、男の店員の人が来るけど、みんな大人の人よ」

「でも、確かに見たのに」

「そう言われてもね。きっと、尾行されているのに気づいてて、入ったふりして出て行ったんじゃないの?」

「…そうかな」

 岬君にばかり責任が集中してしまいそうなので、私は和美ちゃんの腕を引いて帰ろうと言いました。

「どうも、お邪魔しました」

「いえいえ。また、高校生になったら遊びにきてね」

 丁寧に御礼を言って店を出ました。その女の人も出てきて、準備中の札を掛けると手を振って私たちを見送ってくれました。

「かわいいな」

「高校生かな、大学生かな?」

「高校生だろ」

「…年上のお姉さんか…」

「何しに来たと思ってるのよ」

 和美ちゃんが二人を叱りました。折角意気込んで来たのに空振りに終わりました。ただ、クラブで働いているという噂が嘘だとわかっただけでも、私には収穫でした。



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