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グリーンスクール - 好きだから  作者: 辻澤 あきら
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好きだから-1


                好きだから


 某月某日――曇。風向、南。


 今日、転校生が来ます。

 こんな時期に転校生が来るのは珍しいのですが、上杉さんたちがいなくなった代わりのようです。男の子たちは、朝から噂話で持ちきりです。男子だとか女子だとか、好き勝手に噂話にひたっています。女の子が来るのを待っているような口ぶりの子もいます。

 隣の席が空いているので、たぶんここに座るのでしょう。やさしい子だったらどっちでもいいです。私が教科書を見せてあげることになるなら、あまり怖そうな子は嫌です。

「ねぇ、まゆみちゃん」

 ぼんやりと隣の席を見ていると、和美ちゃんが話しかけて来ました。

「あのね、さっき平田君が見たって言ってるんだけど、男の子らしいわよ」

「そうなの」

「少し青みがかった制服なんだって」

「どんな子なんだろ」

「帽子かぶってたから、顔はよくわかんなかったって。ただ、小柄だって」

「そうなの」

「あんまり、興味ない?」

「んん、そんなことないけど。怖い人は嫌だなって、思って」

「まゆみは、怖がりだから。大丈夫よ、まゆみに突っかかるような子はいないわよ」

「そうだといいけど」


 和美ちゃんが励ましてくれて少しほっとしました。と、予鈴が鳴り、教室にも人が集まり始めた、その頃合いを見計らったかのように担任の緑川先生が入ってきました。緑川先生の後ろに、先生より少し背の低い、青みがかった学生服の男の子がついて入ってきました。来たと思った瞬間、妙に緊張してしまい、その子から目が話せなくなってしまいました。

 その子は学生帽を目深に被ったまま、うつむき加減に教壇の端に立ちました。制服のボタンは一番上だけを外したままで、両手をズボンのポケットに入れていました。転校生なのにボタンを外したままというのは、どこか違和感がありました。それに、ちっとも帽子を脱ごうとしないのも変です。教室の中で帽子を被ったままというのも、何となく不良を気取っているように見えました。

 教室がざわざわしたままなのを、緑川先生はわざと黙って待っているようでした。みんなの注目が転校生から、先生に移る頃ようやく、先生は口を開きました。

「はい、みんな、そろそろ静かにして。転校生を紹介するわ。はい、あなたも、帽子を取って」

 そう言われて、転校生の子はやっと帽子を取りました。嫌々取ったその顔にみんなの注目が集まりましたが、今度は、ばさばさの長い髪に隠されてはっきりと見えませんでした。

 髪の間から覗く目は、かすかに私たちの様子を伺っているように見えました。こんなに好奇の目に晒されれば当然かもしれません。あまり怖そうな人ではないのでほっとしました。

「はい、そうしたら、自己紹介してもらいます。どうぞ」

「…友崎、純です」

 緑川先生は、黒板に名前を書きました。その間も転校生の彼は、じっとたたずんでいます。おとなしい印象の子です。

「純は、この字で、いいのね」

 緑川先生の言葉に、振り向いて少しだけ頷きました。その仕草が、どことなく子供っぽくて可愛く見えました。

「じゃあ、よろしくしてあげてね。えぇっと、席は、そこ。まゆみちゃんと忠志君の間。はい、手を挙げて教えてあげて。ん、そこ。わかった?」

 友崎君はすたすたと歩いてきました。彼は手ぶらでした。鞄も何も持っていません。どうしたのかと思いながら見ていると、どっかりと席に座り込みました。こっちを見てくれたので、笑顔で挨拶したのですが、すぐに顔をそむけました。ちょっと残念でした。


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