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プロローグ 『昏睡少女、憧れの異世界に転生す!』

三十話ほどストックあるのでしばらくは毎日以上更新です!



 ──それは突然の出来事だった。



 生まれてから十二年間、ずっとベッドに横たわっていた体。脳からの電気信号がうまく機能していないらしい。思うように動かすこともできなかった。


 原因不明の症状で、ベッドから出ることも、口を動かすこともできず、栄養源は点滴のみ。


 まるで、自分だけが通常の何倍もの重力の中で生きているかのように重い重い体。それが、突然スッと軽くなった。


 重力から解放されたような気がした。いや、気がしたじゃない。本当に解放されたんだ。


 ──気付けば真っ白な空間にいた。


 一瞬で周りの景色ががらっと変わった。瞬間移動をしたらこんな感じなのだろうかと考える。


 ずっとここにいたら気が狂いそうなほどになにもない。


 ぼんやりとしていた意識が戻り始める。


 ──ここはどこなのだろう。


 さっきまで病院にいたはず。父さんと母さんがいい歳して泣き喚いていた。あの子も駆けつけてくれて。

 みんな私の手を取って泣いていた。それを私は上から眺めていて──そこで思い出す。


 ──自分が死んでしまったのだということに。


『そのとおりです』


 声が聞こえる。頭に直接響いてきた。

 慣れない感覚に頭ががんがんと痛む。頭を押さえたいけど体は動かない。


『余命わずかだったあなたは、今日で命日となりました』


 誰だろう。


『私は地球の守護神ダムキナ』


 自己紹介をしてくれるけど、あいにく私は口を動かすこともできない。


『大丈夫ですよ。私はあなたの心を読み取れますから。それに、あなたは身体から抜け、すでに魂だけの状態になっています』


 情報量が多すぎてうまく纏まらない。魂だけということは、今鏡で自分を見ようとしても映らないということかな。


『……とにかく、この状態でも会話ができるということですか?』


『はい。やはりすぐにアクセスできたようですね』


 どうやら問題なく会話はできそう。


『死んだあとに女神。この展開わかりますか?』


『もしかして異世界転生!?』


 思わずテンションが上がっちゃった。手も動かせなかった私でも、アニメを見ることはできたから。


 アニメには様々な世界観があって、ついついその世界に引きずり込まれてしまった。

 自分では見ることのできない広い世界を、アニメを通してだけは感じられた。


『ご明察。あなたはこれから、異世界アエテルタニスに転生することになります』


 異世界転生系も好きだったけど、まさか自分が主人公になれるとは。


『異世界と言っても、地球と同じ宇宙空間の中にある守護神付きの天体ですが』


『地球からすると宇宙の彼方ってこと?』


『そういうことになりますね』


 そこで、私の脳裏に二つの疑問が浮かんだ。


『ところで神様──ダムキナ様はどこにいるんですか?』


 声は聞こえる。視覚は使えているはず。なのに、その姿が見えていなかった。


『……そうですね。あなたには……』


 通信が切れたようにダムキナ様の声が聞こえなくなる。刹那──真っ白な空間の一部分が歪み、気付けば黒髪の女の人がいた。


『あ、あなたが……』


 肌触りの良さそうな黒髪が太もも辺りまで下ろされ、瞳は透き通ったエメラルドグリーン。

 この空間と同じく、全身を真っ白な羽衣で覆っている。空間が歪んでいなければ、カメレオンのように溶け込むだろう。


『はい。私がダムキナです』


 テレビで見たことのある誰よりも綺麗で、無駄のない端整な顔立ち。神々しいその姿はまさに女神。


 でも、ダムキナ様は私に頭を下げてきた。


『ごめんなさい』


『え?』


天女あまねえみ。あなたには辛く苦しい思いをさせてしまいました』


『それは、ダムキナ様のせいじゃないですよ』


『いえ……私のせいです』


 申し訳なさそうに瞳を揺らすダムキナ様を見て、私は返す言葉を見つけられない。


『異世界では自由に生きてください』


『……魔王を倒したりは?』


『確かに魔王はいます。ですが、いざというときにはこの鍵を使ってください』


 いつの間にか、ダムキナ様の手の中には黄金に光り輝く鍵があった。


『この鍵に魔力を込めるのです。そして、こう唱えてください。──〈勇者召喚インウォカーティオ〉と』


『いんうぉかーてぃお?』


『そうすれば勇者を召喚できます』


『……勇者は私じゃないんだ』


『はい、残念ながら』


 ここでまた新たな疑問が湧く。


『召喚された人はどうなるんですか?』


『心配は無用です。死した人物や死の近しい人物が召喚されますから』


『なら……なんで私が転生するの?』


 ダムキナ様は不安そうに眉をひそめた。


『……いずれわかります。今はただ、これからの本当の人生を楽しんでください』


『本当の人生……』


『そろそろ転生の時間です』


『あっ、あと一つ聞いていいですか?』


『どうぞ』


 もう一つの疑問を私は口に出す。


『異世界に転生すれば、そうすれば……私でも、歩けますか?』


『…………はい』


『走れますか?』


『……はい』


 肉体がないらしい私だが、あるはずのない目頭が熱くなるように感じる。


『異世界では…………笑えますか?』


『はい。思う存分笑ってください』


 存在しない頬に涙が伝っているような気がして、もし顔があれば笑顔を作れていたかもしれない。


『私は……それだけで充分です』


『……では転生を開始します』


『ダムキナ様、さようなら』


『はい。それでは──また逢う日まで』


 こうして私は異世界に転生した。

 今度は名前負けしないように。


 元気に笑える、えみの人生を送るために──。





◇◆◇◆◇




 ──解放暦二十年。


 今日は王女の成人式とあり、ひと目見ようと集まった国民たちで大騒ぎだった。


 本日十五歳になり成人する第二王女ミスラは、国民たちから絶大な人気を誇る。


 普段から積極的に国民たちと触れ合い、悩みなどを解決して回っていた。そのため、親しみやすい王女として有名であり人気だ。


 ミスラ王女は護衛をつけずに出歩いているのだが、国王はそれを許可している。

 なぜなら、昔は強かったらしい国王だけでなく、この国の騎士団長よりも強いからだ。


 この国に所属している大魔道士マーリンが、唯一互角に戦えると言われている。

 だが、現在不在であり、現状ミスラ王女がこの国の最高戦力だった。


 そうこうしていると王宮の門が開き、国民たちがざわつき始める。


 遂にその門から、鎧を着た騎士団員数人を後ろに連れ、ミスラ王女が姿を現した。


「「「おおぉぉぉおおぉ!!」」」


 国民たちは大歓声を上げる。ミスラ王女が手を振ると、歓声はさらにヒートアップした。


 綺麗な金髪がすらっと伸び、くりっとした赤混じりの黒い瞳が、可憐さをより引き立たせている。


 ──まさかこれほどとは……。


 いろいろ一人語りしていたけど、自画自賛するお爺さんが取り憑いたわけでは断じてない。客観的事実であると断言しよう。

 だって、私がそのミスラ王女なんだから。


 ──慕われてるってことは嬉しいけどね。


 ミスラ王女は、というか私は、国民に手を振りながら申し訳ないことに若干引く。


 芸能人ってこんな感じなのかな、と考える私は一体誰なのか。

 なんと、ミスラ王女の正体は日本から転生した天女笑だったのだ。で、笑は私。


 ただただ歩けるのが嬉しくて、国の人たちと積極的に触れ合ってきたんだけど、いつの間にか評価が上がってた。


 でも人助けっていいな。前世ではなにもできなかったから。嬉しそうな表情を見ると、こっちまで幸せになったような気がするし。


 生まれつきの不治の病によって死んだ私は、地球の女神ダムキナ様によって、地球から遠く離れた場所にあるアエテルタニスに転生した。


 そして現在、ブリタニア大陸にあるキャメロット王国の第二王女ミスラとして、毎日楽しく暮らしている。


 一人でなにかに語りながら歩いていると、突き当たりに差し掛かり道を曲がった。

 その時──なにか違和感。


 なにかが気になる。一見するとなんら変わらない景色。手を振っている私を国民みんなが見て──いやおかしい。一人だけ違う。


 よく目を凝らすと遠くの方に、パレードに一切興味を示していないローブを目深に被った人物がいた。


 なにか引っかかる。思い出せそうで思い出せない。くしゃみが出そうで出ない感じ。確実に違和感があるんだけど。


 違和感の正体がなんなのかを考えるが、答えが出ることはなかった。


 ──でもなぜだろう。あの人は大丈夫。


 その勘は間違ってはいない。そう確信し、私はローブの人物から意識を外した。




??「次回は主人公の登場だな」

ミスラ「え? 私が主人公じゃないの?」

??「ほぼ俺が主人公だ」

ミスラ「いやほぼってなに?」

??「…………」




??「次回、『最近ではあまり見かけない、懐かしのテンプレート』」


ミスラ「誤魔化した!?」


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