私は最高におもしろい小説を考えたがそれを書くには余白が……余ってますね。描かなきゃダメ?
最後までちゃんとよんでネ
今日は待ちに待ったバレンタインデー。今日こそ。先輩に私の想いを伝えるんだ―――。
彼女の心臓は今にも爆発しそうなほどに高鳴っていた。トイレの鏡の前で本日100回目の身だしなみチェックをする。髪型は大丈夫だろうか。何度も確認しているが、万が一寝癖があったらと思うと心配でたまらない。
「……よし!」
ほっぺたを思い切りたたいて気合を入れた。
放課後体育館裏に来るよう彼女は朝、先輩に伝えていた。
ちょっと早いかもしれないが、先に行って、待っていよう。そう考えた彼女は体育館裏に向かって歩き出す。ポケットの中には何度も失敗しながら作ったチョコレート、高鳴る胸には長年抱き続けた淡い想いを持って。
彼は期待と緊張を抱いて歩いていた。朝、彼が登校すると、昇降口で後輩に呼び止められた。
「せ、先輩……あ、あの」
後輩は何か言いたげにもじもじとしている。
「どうした?」
彼は緊張すると自分の前髪をいじりながら俯く彼女の癖を可愛らしいと思いながら話しかけた。
「き、今日の放課後!体育館裏で待っています!」
彼女はそれだけ言うと走り去ってしまった。
もちろん彼も健全な男子高校生の一人である。今日がどういう日で、体育館裏に呼び出すという行為がどういったものを意味しているのか分からぬワケがない。
その日一日の授業内容は当然頭に入るはずもなく、ただただ授業が早く終わることを願っていた。
長い長い授業を終え、今、放課後に至る。
99%の期待の中、少しだけ彼は悩んでいた。もし、後輩の彼女が彼の想像通りのことをするとして。もちろん彼は彼女のことを憎からず思っているし、彼女の容姿は百人が全員可愛いと答えるだろう。それに、彼女がいままでいたことのない彼にとってはこの上ない高物件であるといえよう。
しかし、彼の中に、「果たして彼女と自分は釣り合うのか」という悩みができてしまったことも否めない。彼女にはもっとふさわしい男がいるんじゃないか。付き合ってもいないのに卑屈な考えが浮かんでしまう。
「……いやいや、別にそうと決まったわけじゃないし」
彼はかぶりを振ると、自分に言い聞かせるように言った。太陽は沈みかけ、空を茜色に染め上げていた。
「あ、先輩」
先に着いていたのはもちろん彼女のほうであったが、急に彼のことを待っているという状況が恥ずかしくなって彼が来るまで隠れていたのだ。そうしてあたかも彼と同タイミングで来たかのようにふるまったのだ。
長い沈黙が流れる。決心はついたものの、彼女は一歩踏み出せずにいた。
その時。
「クゥゥーゥン」
犬の訴えかけるような鳴き声が聞こえた。
「犬の声かな?校舎の中に入ってきちゃったのかな?」
沈黙に耐えかねていた彼は格好の話のタネに飛びついた。
「あ!先輩、あそこじゃないですか?」
彼女が指差した先には野球部が練習で使っている小さめのタイヤに体が挟まった犬が助けを求めるように泣いていた。 二人は犬に近づいた。幸いタイヤには緩く挟まっていたようで、簡単に外してやることができた。
「まったく。勝手に入ってきたと思ったら迷惑掛けやがって」
彼がその犬をなでながら言った。
「でも、そのワンちゃん、真っ白ですね」
その犬は純白といってもいいほどにきれいな白だった。白い顔に白い胴体、足まで白けりゃ、
「尾も白い」ってね。
どう?「おもしろかった」でしょ?はははははははははははは。
ところでさ、バレンタインといえば、私の長いようで短い人生の中で一人だけ私にチョコ(もらったのはチョコレートケーキ的なアレだった)をくれるそれはそれは慈悲深い聖母のような方(しかも美人)がいましてな。まぁなによりバレンタインには悪い思い出しかない私でしたから、感激いたしましてですね。それはもう欣喜雀躍しながら帰ったんですけど。けど。もらった物なんですがね、ありがたすぎて逆に手を付けずにいたら、遂にカビがはえてきちゃいましてねぇ。結局一口も食べて無いんですよね…。いや、アレはホントに申し訳なかった。この場をお借りして深く謝罪いたします。