3・エルフさんにとって辛いものは猛毒のようです
派遣先の事務所に着いた俺は先週の出張仕事の報告書と移動費の精算の為にパソコンに向かっていた。
広いフロアに各個人の机は用意されているが事務所内に居る人の数はそれ程多くない。
このフロアで仕事をこなす人は日本全国を、人によっては海外への出張で飛び回って仕事をしているので事務所に居る事の方が少ないのだ。
俺も今取り掛かっている書類の作成が終わればまた明後日からの出張の為の準備の為に部材の現地配達の手配や客先に連絡を入れたり等、事務所を離れる事になる。
書類作成をも目処が付くと昨日警察に引き渡した自称エルフさんの事が気になり、掲示板のスレッドを仕事中だと云うのに開いた。
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【抽選に】我が家にエルフが来た【当たりました】
124:無名の名無しさん
エルフってのがどんなもんか個人的に調べてみた。
元々は北欧神話に登場する自然と豊かさを司る妖精。
伝承の中の彼等は美しい容姿を持つとされるのが通説で不死もしくは長寿であり、魔法を扱える種族でもある。
俺らが一般的に知っているのは古典ファンタジー小説の指輪物語に登場するもので、これが現在のエルフのおおもとになっているとされている。
また耳の長いエルフや黒人種の様なエルフをダークエルフと呼称するのは日本発祥。
耳の長いエルフについてはゲーム雑誌に連載されたファンタジーRPGのリプレイ小説に登場した登場人物である主人公のパートナーがおおもとになっている。
後にこのリプレイ小説は書籍化されこの書籍が大ヒット、アニメ化等のメディアミックスも展開して一般の人達にも目に留まる事になる。
これがキッカケになり日本におけるエルフは西洋の伝承の中に登場する妖精というより、別種族の固有種として確立される事となる。
ダークエルフに関してはこの小説のカラーイラスト及びアニメ化の際に黒人種のような肌の色を採用した事によりこれが一般化する。
その後アニメという文化が海外からも評価されるようになり、日本国内で認知されていたエルフ像というものが世界的な認知となった。
ここまで長々と書いたが本来エルフというのは妖精という意味合いでしか無く、耳も尖っている等というのは元々無かったそうだ。
131:無名の名無しさん
>>124
長文乙
しかしイメージしているエルフってのが日本産だとは知らなかった。
133:無名の名無しさん
>>124
そのエルフについてのソースは?
136:無名の名無しさん
>>133
Wiki情報を纏めたものだ。
147:無名の名無しさん
>>136
そういう情報と比べるとここで話題になってるエルフって随分と違うよな。
今まで出て来た情報をまとめると寿命は40年程度、魔法なんて使えるはずも無く、コニクロのファストファッションで自然とか豊かさを感じさせない。
出典と同じ部分は耳が尖っている事と容姿の良さくらいか?
あとエルフってよりは肌の色からしたら濃い灰色の肌ってダークエルフだろ。
187:1
誰かいるなら助けて欲しい。
我が家に来たエルフさんがカレー食ったらげーげー吐いて物凄く苦しんでる。
救急車読んだけど身元不明人ってことで搬送拒否された。
191:無名の名無しさん
>>1
もちつけ
救急隊は搬送拒否はできないから考えられるのは受け入れ先の病院が見付からない状態での不搬送だと思うが違うか?
不搬送でも救急隊員は応急処置を施してくれたはずだ。
とりあえず吐いてるなら水を飲ませて胃の中身を全部出し切らせる事が先決。
194:無名の名無しさん
1は昨晩の残りカレーでもエルフちゃんに出したのだろうか?
一晩置いたカレーは確かにうまいけど雑菌も繁殖するためにちゃんと加熱しないと免疫力の低い奴とかだと食中毒になったりする場合もある。
226:無名の名無しさん
自分のところも1と同じように嘔吐繰り返してる。
こっちで出したのは麻婆豆腐。
突然やってきた自称エルフに恐怖を感じてこのスレ読んでたんだが、何も食わせないまま保護してもらうのは忍びないから夕飯に麻婆豆腐食わせたら1のところと同じように激しい嘔吐しだした。
こっちも救急車を呼んだが受け入れの病院が無い為に不搬送ってのも同じ状況。
今は吐いて落ち着いてる状態に無理矢理水を飲ませながら見守ってる感じ。
228:無名の名無しさん
>>226
1と区別つかなくなりそうだからコテハンよろ。
231:麻婆豆腐
>>228
とりあえずこれで。
エルフちゃん吐き疲れてぐったりしてるからしばらく相手してくる。
237:無名の名無しさん
>>231
幼女エルフを介抱とか裏山。
240:無名の名無しさん
>>237
本人たちそれどころじゃ無いだろ。
247:無名の名無しさん
>>94
カレーだと食中毒って可能性もあったけど麻婆豆腐でもってなると食中毒ってよりアレルギー反応じゃないか?
カレーと麻婆豆腐の共通食材だと唐辛子と推測。
253:無名の名無しさん
>>247
唐辛子の食物アレルギーなんてあるの?
255:無名の名無しさん
>>253
珍しいとは思うけどどんな食材でもアレルギーを起こす可能性はある。
ただ全く接点の無い状況で起こっているとなると個人ってより種族としての特性なんじゃないかと邪推してみる。
486:麻婆豆腐
やっと落ち着いたので報告。
嘔吐繰り返していたエルフちゃんは時間とともにますます激しく吐いて、それと同時に全身やたら腫れ上がった状態になってしまった。
この時点でヤバイと思って再度ダメ元で救急車を呼ぶ。
前に呼んだ状況を説明したらアレルギー反応も考えられるって事で採血したんだが、ほぼ真っ黒な血に俺だけでなく隊員の人も驚いてた。
救急隊員さんがアレルギー反応によるアナフィラキシーショックの可能性が高い事を告げて搬送先の病院を探してもらうが、血の色の事を告げるとどこの病院も判断出来ないと入院できない事を告げて搬入拒否。
その間エルフちゃんは酸素吸入器をずっと使っている状態。
凄く苦しそうにしていたけど、入院できる病院も無くて不搬送とされてしまう。
苦しそうだったけど意識はあったエルフちゃんは大丈夫だからと俺の家に戻る事に。
全身腫れてまだ嘔吐繰り返してるけど自分で水も飲めてるし、とりあえず山場は越えたかなと……
そんな感じなので報告しにきた。
491:無名の名無しさん
>>麻婆乙
肌の色が灰色ってのは血の色が関係していたのね。
でも地球上の生命体で黒い血なんて存在しないだろ。
本当エルフちゃん何者なんだ?
501:無名の名無しさん
自分も気になって調べてみた。
青い血ってのは存在するみたいだけど黒い血ってのはいくら調べても出てこなかった。
軟体動物や甲殻類の一部が青い血みたいね。
521:無名の名無しさん
>>491
灰色の肌っていうのでちょっと気になったんだけどさ、エルフちゃんってあの宇宙人のグレイと同種の存在なんじゃね?
地球上の生命体で黒い血が存在しないって部分でそんな可能性もあるんじゃないかと考えてみた。
527:無名の名無しさん
>>521
可能性の話としては面白いがオカ板でどうぞ。
531:無名の名無しさん
1が戻って来ないが1のところのエルフさんは大丈夫だったのだろうか?
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その後の話のながれは自称エルフさん宇宙人説で盛り上がっていたが俺にとっては興味を惹くものでも無かったので書類関連を仕上げる為にノートパソコンのキーボードを叩いた。
書類仕事が終わり昼休憩に社員食堂で席に落ち着き、何気に設置されている大型テレビに目を向けるとお昼のニュースだったらしく、そのテロップに俺は釘付けになった。
そのテロップには『各地で正体不明の死体が確認される』と云うもので、映像には出なかったものの画面に映るテロップを読み進める限りはどうも自称エルフさんが日本各地で死亡したと云うものだった。
そんな俺にとって衝撃的なテロップに釘付けになってた俺であるが、スマホからの着信で我に返る、その着信をしらせる画面に出ている番号は登録に入っていない知らない番号からのものだった。
「はい、もしもし?」
不審に思いながらも俺はスマホを操作し電話に出る。
『お忙しいところ申し訳ありません。こちら神奈川県警の者ですが、昨日保護した灰色肌の少女に関して少々お話を伺いたいのですが宜しいでしょうか。』
スマホに耳を押し当てている先からはちょっと低い声の男が要件を伝える。
俺は胸のポケットからメモ帳を取り出し相手の連絡先と担当者の名前を控える。
電話先の相手は近日中に出頭して貰い事情を聞きたいとの事だったが、こちらも仕事を抱えている以上、容易にその要求に応える事はできず上司に相談の上折返し連絡をする事を伝えて電話を切った。
手早く昼食を済ませた俺は電話の件を上司に報告するべく事務所に戻り、どう説明したら良いかも判断つかないまま上司を待つ事にした。
「あの少し良いですか?」
席に戻ってきた上司に声を掛け、昼休み中に警察から出頭するようにと連絡があった事を伝える。
明後日からの出張仕事の事もありどうすれば良いのか判断を上司に仰いだ訳だ。
上司は俺のメモした連絡先のコピーを取り、連絡しておくからお前は準備を進めておけと言葉を貰い午後からの業務を続ける事にした。
出張先で使用する工具やら部材やらの配達手配が終わって事務所に戻ると上司が手を上げ、俺の事を呼ぶ。
「昼いちで報告受けたアレの件だけどな、明日対応して来い。もう部材の発送とか終わって明日は暇だろ?明日は出張扱いにしておいてやる。」
上司は意地悪い笑みを湛え俺にそんな事を言う。
明日は出張費の見積もり書類を出せばやる事が無くなり暇なのは確かだ。
「わかりました。」
俺は苦笑しながらそう応える。
明日は出張扱いと云う事は実働給金が出る。
まだまだ家の中は最低限の家財しか無くお金が必要である場面が多い為に給料が出るのは有り難い。
「それと今日はもう帰宅して良いぞ。どうせお前の事だ、もう出張費の見積もり書も作っているんだろ?」
俺の働いている派遣先の仕事は現場は休憩も取れない程スケジュールを詰め込むが、事務所に居る間は緩く時間を持て余す事が多い。
それ故にその空いた時間で先々の仕事を準備していたりもする。
慣れた客先の出張であれば見積書や報告書はほぼテンプレートに沿った書式を作っており、それに沿って詳細を付け加えるだけで処理が済んでしまう事も多かった。
それ故に上司はもう出張前に提出する書類関係は出来上がっているものとして俺に言ってきたのだ。
「では申し訳ありませんが後の事は宜しくお願いします。」
俺はパソコンに保存してある書類を手早くプリントアウトし、上司にそれを渡しながら挨拶をする。
人と接するだけでもストレスなのに面倒な事にならなければ良いけど……
俺はそんな事を思いながらノートパソコンとアダプターを手早くショルダーバッグの中に放り込み派遣先の事務所を出て退社するのだった。
お読み下さり有難うございます。
作者モチベーション維持の為にも感想、御指摘等お待ちしております。
また不定期連載中の物語も宜しくお願い致します。
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