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俺の元にやって来た外宇宙からのエルフさんは文化侵略が目的のようです。  作者: 安達 明
モニター当選の品はエルフと云う種が来訪した事でした
2/23

2・灰色肌のエルフさん

 目の前で愛らしい笑顔を向ける少女、歳の頃は胸の膨らみも衣服の上からは感じられない事から中学生くらいだろうか。

 その子から一緒に生活しましょうと信じられない言葉が飛び出した。

 なんだこれ?家出の際の新たな押し売り文句か?

 肌の色からして日本人じゃないのは確実だろうけど、かと言ってそのまま囲うとか完全にお巡りさん案件になるだろう。

 冷静になれ自分、相手が何者かも分からなければ対処のしようもない。

 まずは情報を聞き出す事が重要だ。


「ところで君、名前は?」

「必要であればモニター当選者が名前をつけるとの事で今は名前が無い。」

「じゃぁいくつなのかな……結構若く見えるんだけど……」

「生産されてから一年と十二日くらい。」

 愛らしい笑顔のままだが先程までと口調も違うし、返って来るものが色々おかしい。

 名前が無いとか生後一年でこの姿とか絶対おかしいでしょ!

 よし、なら聞き方を変えてみるか。


「お嬢ちゃんはどこから来たのかな?」

「私もしくは僕には性別は無い、だから自称も今はどう表して良いのか迷っている。どこからと云う問の答えは名古屋から速い乗り物を使用してここまで来た。」

 ちなみに俺の住んでいる場所は神奈川の某所だったりする。

 名古屋からの移動だと新幹線利用でも二時間以上掛かる。

 玄関前で待っていた彼女は手荷物等も持ってない手ぶらな状態だったので、その身ひとつでここまで来たのだろうと俺は推測する。


「何か持っている物はある?」

「これで全部。」

 そう尋ねると灰色肌の自称エルフさんはジーンズのポケットからんしょんしょと云った感じで一万円札が一枚と俺の名前と住所がプリントアウトされた用紙が一枚をこたつテーブルの上に置く。

 見た目からの印象だけで語れば所持金は多いとも言えるが、この手持ちのお金じゃ名古屋まで帰るのにぎりぎり足りない感じだぞ。


「あのね、すごく速い電車って乗り物でみんなと一緒に来て、そこからタクシーって云うのを使ったの。その時にこれと同じのをひとつ渡してここまで来たの。」

 自称エルフさんはこたつの上に置いた1万円札を指差し、そう説明する。

 え?今みんなって言った?

 って、事はこの怪しげな自称エルフさんは他にも居るの?

 これは確認しなければなるまい。


「みんなって言ったけど、他の子達はどうしたの?」

「他のモニター当選者の所に行った。」

 自称エルフさんは各人当選者の住所がプリントアウトされた用紙を持っていてタクシーを使ってそれぞれの場所に向かったって事か……


「他の子達は全部で何人居たか分かる?」

 この自称エルフさんがあとどれだけ存在するかは知らないが、俺以外にも同じ様な状況で四苦八苦している人達が居るならどう対処するにしても情報は少しでもあった方が良いだろうと思い、目の前の彼女に問う。


「神奈川県?は全部で十九人とか製作者が言ってた。」

 うは……濃い灰色の肌の少女らしき人物が十九人が新幹線に乗車してるとか目立ち過ぎだろ。

 そんな大人数で移動するなら名古屋でもこの怪しげな集団を見掛けた人も居るかもしれないな。

 それと製作者か、また新しい情報が出て来たな。


「製作者って君達を作った人達の事だよね?どんな人達なの?」

 俺は目の前のエルフさんと言葉を交わして徐々に焦る気持ちが沸き上がって来るが、それを自制しながらできるだけ優しく口調で聞いてみる。


「人?あれは人じゃ無い。あれは個ににして複数、複数にして個みたいな存在。」

 目の前の自称エルフさんは自身を作った者が人では無いと言う。

 何も知らないままで彼女を見たならにこにこと愛らしい笑顔を俺に向けたままのエルフさんだが、その対応は機械を相手している様な冷たいものを感じる。

 それはまるでその表情を作っていれば無碍な扱いをされないからと、仮面を被っているような印象を与え俺は言い知れない恐怖が湧き上がって来る。

 これ以上の事を触れてはいけない、俺の直感はそう警告を発していた。


 何にしてもこれは個人でどうこう出来る様な問題でも無いな。

 警察に連絡して保護してもらうのが一番の対処方法だろう。

 俺は目の前の人物に対して後ろめたいような申し訳無さを感じながらも警察へ連絡した。

 保護してもらおうと警察の方に来て貰い、俺が自称エルフさんから聞いた話を掻い摘んで伝えるが、どうも納得できないようで自称エルフさんを保護するのには消極的な態度だった。

 それでも名前も分からない様な身元不明人をこちらで預かる事も出来ないと半ば強引に俺は自称エルフさんを警察に押し付け玄関の扉を閉めた。

 警察官は閉じられたドアの前で俺に諭す様に呼び掛けていたようだが、暫くすると説得を諦めたのか、その声も聞こえなくなった。

 慣れない事の連続で身体が重く、思考もはっきりしない……

 俺はまだ空が朱にそまる前の時間帯だと云うのに精神安定剤と睡眠導入剤をこたつの脇に放ったままにしてあった肩掛け鞄から取り出して早々に布団に潜り込んでしまうのだった。



△▼△▼△▼△



 現実逃避するが如く薬に頼って布団に潜り込んだ俺だったが、深夜と呼ばれる妙な時間帯に目覚めてしまった。

 これから二度寝するには微妙な時間帯でもあり、かといって何かに集中するにも中途半端になってしまう。

 欠伸をしながら布団から這い出し、昼間に来た自称エルフさんについて何か情報が無いかとネットを徘徊する事にしてパソコンの電源を入れた。

 ニュースサイトやまとめサイトにはそれらしい情報は上がって無かったが、超巨大掲示板サイトの雑談スレッドの中ににそれらしい話題を見付ける事ができた。

 俺自身はこの様な掲示板を利用した事は無いので下手に書き込みを行わずにその内容を確認するだけにする。



─・─・─・─・─



【抽選に】我が家にエルフが来た【当たりました】


1:無名の名無しさん

自分はエルフだっていう灰色肌の女が我が家に押し掛けてきたんだが。

需要あるならフェイクあり詳細も晒していく。

話を聞くと他にも複数いるって事なので判明している事を箇条書きにしておく。


・外見的特徴は中学生くらいの女の子といった感じ

・現金と訪問先のメモ以外は持っていない

・灰色みたいな肌の色をして髪は藍色

・全部で十人のエルフがいるようだ



2:無名の名無しさん

>>1乙

 幼女エルフとは針が大きいな。

 だが面白そうなので四円する。



3:無名の名無しさん

>>2

 釣りならどれだけ良かったか。

 マジなんだよ。

 とりあえず放置するのも可愛そうだから色々と話を聞いてる状態。



4:無名の名無しさん

 やってきたエルフは可愛いのか?

 それとも美人なのか?

 そこ重要。



5:無名の名無しさん

 エルフの年齢は?

 やっぱロリBBAなの?



6:無名の名無しさん

>>4

 個人的には可愛いって感じかな。

 ストレートの長い髪のせいもあってか人形のみたいな可愛さって感じ。


>>5

 聞いたら一歳とか答えてた意味ワカラン。



7:無名の名無しさん

 幼女エルフどころか赤さんかよ。



8:無名の名無しさん

 豚切して悪いが俺の所にもエルフってのが来たんだが。

 あの灰色の肌ってのがどうも嫌悪を感じて俺は無視してたんだが、他にも同じような奴いたんだな。



9:無名の名無しさん

>8

 KWSK



10:無名の名無しさん

 詳しくも何も無視して叩き返しただけだが。

 しかし他にも俺と同じような奴がいたってのは驚いた。



11:無名の名無しさん

 なんで灰色なんて人では存在しないような肌の色なんだ?

 そこらへんエルフちゃんは知ってたりするん?



18:無名の名無しさん

 肌の色もそうだが目立つような長い耳があるのかソコも重要!

 あの目立つ耳無くしてエルフを名乗る事は許さん!!



27:無名の名無しさん

>>11

 肌の色については本人もわからないらしい。


>>18

 耳は長くは無い。

 某米国スペースオペラのテレビドラマの宇宙船船長のような耳と言えば伝わるか?

 あんな感じだ。

 長い髪で隠しているのかソコは意識して見ないと分からないって程度のものだ。


 ってか聞けば聞く程このエルフって存在は訳が分からんな。

 自身の名前もモニター当選者である俺がつけなきゃならんとかほざいてる。



32:無名の名無しさん

 名付けとか裏山。


>>1

 エルフってやっぱり長寿なんだよな。



47:無名の名無しさん

>>32

 寿命についても聞いてみた。

 モニター期間は40年程で、その期間が終了したら活動を停止するって話だ。

 この言葉をそのまま信じるなら寿命は40年程度って事になる。

 ってか、40年も面倒みなきゃならんとは結構な大事なのではなかろうか?



53:無名の名無しさん

>>47

 大型犬でも寿命が20年程だからその倍ともなれば世話するだけでも大変だろうな。

 それだけの期間を世話する気も無く一時的な同情だけで保護しているなら適切な機関に連絡してして引き取って貰う方が良いと思う。



57:無名の名無しさん

>>53

 何世話する前提で話してるの。

 最近は迷子に声掛けただけで警察案件になる世の中だし面倒に巻き込まれたくなきゃ通報してさっさと引き渡しちゃうのが無難でしょ。



─・─・─・─・─



 このスレッドが建ったのが二日程前。

 掲示板はその後も色々と書かれていたが、エルフを保護するか警察にさっさと連絡をして引き渡した方が良いかの論議になっていた。

 俺自身はあのエルフをさっさと警察に引き渡したのは行動としては正解だったのだろう。

 そう思う事にしてカーテンのある窓に目をやると、そこからは朝の光が溢れていた。

 掲示板を読んでいるうちに結構な時間が過ぎていたようだ。


「さて今週も惰性で仕事していきますか……」

 そう溜息混じりに独り言を言って、俺は自身の朝食の準備に取り掛かった。

お読み下さり有難うございます。

作者モチベーション維持の為にも感想、御指摘等お待ちしております。

また不定期連載中の同一世界物語も宜しくお願い致します。


永遠なる大地の叙事詩

https://ncode.syosetu.com/n8703eb/


エデン ~偽りな僕らの理想郷~

https://ncode.syosetu.com/n4422ei/

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