二章 少年時代
18年前
ある小さな一軒家の小さな庭で、3人の子供が木につるされたブランコで遊んでいる。
「はやく かわってよー」
皐月がブランコの脇で、いつまでも代わってくれない秋人に向かってゴムボールを投げつけているが、秋人はまったく代わる気がないらしく夢中でブランコをこいでいる。
僕は自分の家のブランコなので、普段から遊んでいるため2人の様子を楽しそうに眺めている。
僕達は家が近所なのでよくこうして3人で遊んでいた。
そうは言っても遊ぶ時はいつも秋人と皐月が玩具を取り合い、それを僕が眺めるというのがひとつの遊び方だった。
最終的には皐月が怒りだし、秋人がそれを抑えるためにあれこれするというのもいつしかお決まりになっていた。
その日はブランコの取り合いになり、いつもの様に皐月が怒っていた。
さすがにボールを投げ続けられた秋人が根負けして代わってやると皐月はぶすっとしながらブランコをこぎ始めた。
秋人はさっきまでと打ってかわって皐月に謝りながら皐月の背中を押していた。
当時の僕は2人を見て、初めから仲良くしてればいいのにと思っていたが、今考えるとこれが2人のちょうどよい関係に見えてくる。
2人は今に至るまでずっとこんな関係だからそう見えるのが当然と言えば当然である。
「それで誕生日には何をプレゼントする予定なんだ?」
子供頃を思い出しながら秋人に尋ねた。
返事がない。
どうやら寝てしまったようだ。
「人のベッドで勝手に寝るなよ・・・」
そうつぶやいて僕も床の上で横になった。
子供頃を思い返していたら、あっさりと眠りに落ちてしまっていた。