一章 学食
皐月が行ってしまったのを目で見送って秋人に尋ねる。
「いいのか? 仮にも彼女だろう」
「正真正銘俺の彼女だよ。でも、買い物は辛いぜ・・・皐月の買い物の量半端じゃないし(食う量もだけど)、俺は完全な荷物持ちだからな」
そう言うと秋人はラーメンのスープを飲み干した。
お互いに恋人だと言ってはいるが、幼馴染みの僕にとっては恋人というより普通の友達同士にしかみえない。2人でいる時間より3人でいる時間の方がはるかに長い。
いつ頃付き合いだしたか境目は忘れたが、たしか秋人が「結婚を前提に・・・」みたいなプロポーズをしてきたらしい。
「そういえば秋人、お前は皐月のどこに惚れたんだ?」
秋人は急にそんな話を振られたので戸惑いをみせた。
「どこって・・まあ、あれだ・・・小さい頃から一緒にいるから俺のことわかってるっていうか、素で付き合えるっていうか、元を言うなら単純に皐月が俺の好みってだけだ」
という事らしい。聞いたこっちが、少々気はずかしく、皿に残っているトマトをつつく。
秋人もこの話を続けるつもりは無いらしい。話題を変えてきた。
「それはそれとして、お前の研究にちょっと興味があるんだ。どうせ週末も研究するんだろ?手伝うぜ」
親指で自分の胸を指差す仕草をしていた。
「そうか助かる。」
「そろそろ行こうぜ、早くトマト食っちまえよ」
秋人がにやついてる。
・・・トマトは嫌いだ。
これから先、水曜日に日替わり定食を食べることはないだろう。