プロローグ
「それで今度は何の研究をしてるの?」
秋人は壊れた機械を元の場所に戻しながら答えた。
「えっと物質の分解と再構築についての研究だな。理論が確立したら物質転送に応用させる気らしいぞ」
皐月は尋ねはしたが聞いてはいないようだ。
「それで計は?」
「お前の豪速球を避けて計算を継続中みたいだ。」
「まったく…」
その時、研究室のドアが開き、赤木教授が入ってきた。
「神山! 今空いてるか!?」
その声でもう1つの影が動き出した。神山 計である。計は秋人とは違い、白衣はきれいで身なりをきちんとしている。
「何ですか教授。また、チェスの相手ですか?」
「違う違う! 今度は囲碁だ。チェスなんかよりはるかに戦略が広がりそうだからな」
教授は特にチェスを極めてもいないのにそんなことを言った。
「コンピューターと対戦すればいいじゃないですか。その方が強くなれますよ。」
「それじゃあ味気ないだろ。やってもつまらん!」
計は小さなため息をついた。最近教授はボードゲームにはまっていて何度も相手をさせられていたからだ。
「すいません教授、今からお昼を食べに行く約束なんです。また、次の機会でもいいですか?」
「かまわないぞ。ここのところ暇だからな。」
「失礼します。」
計はそう言って秋人と皐月を連れて足早に研究室を後にした。