三章 誕生日
引き続き皐月視点です。
3人で料理を囲んで座ると計は早速『誕生日おめでとう』と言って私に時計をくれた。
秋も続いて私のために新調した眼鏡をくれた。
新しい眼鏡はサイズが私に合っていてずれ落ちることがなかった。
「2人ともありがとう」
3人で乾杯した。
「それにしても意外だな、あの秋人が花を持ってくるとはな」
計が持ってきた安物のワインを飲みながら私に話しかけてきた。
妙ににやけている。
「それは私も思った。もし持ってくるとしたら計だと思ってたよ」
秋はなぜかぶすっとしてワインを飲んでいる。
「意外だったけど嬉しかったよ」
私もワインを一口飲む。
秋が今度は恥ずかしそうな顔をして
「皐月の誕生花がバラだった」
それだけ言うと私の作った料理を一心に食べ始めた。
「どう?おいしい?」
「いつも通り」
それだけ言って食べ続ける…
「他に言い方ないの?」
「おいしいよ」
料理を食べた計が代わりに答えた。
秋はそれに頷いただけで計の方に顔を上げようとはしなかった。
「誕生日が来るたびに思うが6月生まれなのに皐月というのは違和感があるな」
計が料理をゆっくり食べながら言ってきた。
「お父さんもお母さんもせっかちで、私が5月頃に生まれると知った途端お腹の中の私を皐月って呼び出したんだもん」
秋がやっと顔を上げた。口の中のものを一生懸命飲み込んでいる。
「それじゃあ、せっかちじゃなかったら、えっと文月・・・だっけ?」
秋がこっちを向いた。
「それは7月でしょ。確か神無月・・・だよね?」
私は計の方を向く。
「6月は水無月だ」
計がたらいまわしに答えた。
その後は3人で色々と昔話をした。