三章 誕生日
皐月視点です
「そろそろ来る頃かな」
得意な料理をちょうど作り終わった。
何を作ったかは秘密。
味見をしてみる。
自分で言うのはどうかと思うけど相変わらず美味しい。
二人には毎年誕生日を祝ってもらっていて、プレゼントのある年もあればない年もあるけど、今年は準備しているみたいだからすごく楽しみにしてる!
料理が完成したからエプロンをはずして、眼鏡をかけた。
それに合わせるように玄関の呼び鈴がなった。玄関に行って外を覗くと計が正面に立って、よく見えないけどおそらく隣の秋に向かって何か言っている。ドアを開けた。
「誕生日おめでとう! お邪魔します」
ドアを開けるとすぐに計はそう言ってさっさと部屋に上がりこんでしまった。
手に何か持っていたようだけどさっさと奥の方に行ってしまってよく見えなかった。
秋も入れようと向き直ったけど開いたドアに片腕を隠して部屋の奥を戸惑いながら見ていた。
部屋の奥では計が料理を見て感嘆の声をあげている。
「秋、何してるの?早く入りなよ」
秋は深呼吸するとドアに隠していた腕を引っ張り出した。
「誕生日おめでとう!」
顔を真横に向けてバラの花束を不器用に差し出してきた。
花束と言っても5本程のバラがまとめられたものだが、とても綺麗だった。
あまりに予想外だったので、嬉しいという気持ちよりもビックリと言う気持ちが大きい。
「あ、ありがとう」
付き合ってはいるけど、どことなく友達みたいなつきあいをしてきたせいかすごく照れてしまう。
バラを渡すと秋も顔を背けながらさっさと部屋に入って行ってしまった。
部屋の奥ではなんだか計と揉めているみたい。
揉めているのに妙に小声なのが気になったけど、私はとりあえずバラを花瓶にさして窓際に飾った。