三章 誕生日
秋人視点です。
「まだ来ていないみたいだな」
皐月のアパートの前に着いたが、計はまだ来ていなかった。
時計を見ると皐月の部屋に入る七分前。
7時になったら計と一緒に皐月の部屋に入る予定だ。
待っていると計がやって来た。
なんと手には真っ赤なバラを一束持ってる。
きまってはいるけど、単なる住宅街では浮いてるとしかいえない。
「まさかバラを持ってくるとは思わなかったぞ」
俺は思ったことをそのまま口に出した。
早速2人で皐月の部屋に向かう。
「まさか僕もバラだとは思っていなかったよ。皐月に誕生花を渡そうと思って調べたらバラだったんだよ。正直買うか迷った」
計がそう答える。
なんだか落ち着きがない。
それはそうだろう。
花を渡すだけでも照れくさいのにバラだと恥ずかしく感じる。
しかしそこは計らしいと言うかしっかりとバラの花束を持ってきた。
俺には絶対できない。
そもそも今の時代に花を贈ろうという人もそんなにいないと思う。
「誕生花っていうのがあるなんて知らなかったな」
「僕も知らなくったよ。何気ない気持ちで誕生日に合いそうな花がなんなのか調べていただけだが、その時にたまたま誕生花というのを見つけただけだ。皐月の誕生日で調べたらバラだったんだ」
そんな話をしている内に皐月の部屋の前にたどり着いた。
計は少し持っていてくれとバラの花束を俺に手渡すとクラッカーを取り出した。
「大丈夫なのかこんな所で鳴らして、近所迷惑にならないか」
「大丈夫。一発くらい多目に見てくれるさ」
玄関を開けていきなりサプライズ?的なものを作るつもりのようだ。
計は普段はクールな感じなのに時々子供っぽくなる。
小さいときは逆に普段は子供っぽいのに時々すごく大人びた事を言って周囲を驚かせていた。
計がタイミングを計るようにこっちに目をやると玄関のチャイムを鳴らした。