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プロローグ
2020年6月10日 水曜日 13時35分 九州地方某大学赤木研究室
「秋、計、ご飯食べに行こ!」
一人の女性が、妙な機械の山に向かって大声を出した。
薄茶色の髪を手でいじりながら、ずれそうな眼鏡を外して白衣にしまった。
二つの人影が機械に囲まれ、記号や数式を黒板に書きなぐっている。
「秋!、計!」
女性が二つの影に向かって呼びかける。
返事はかえってこない。
彼女は人影に向かって小さな機械を投げつけた。
1つは見事に命中したが、もう1つは見事に避けられて壁に激突して壊れた。
「なんだ皐月か。もう少し優しくできないのか?頭が悪くなったらどうするんだよ。」
頭を押さえながら秋人が、機械を乗り越えてきた。
度の入ってない眼鏡をかけ、皐月同様白衣を見にまとっている。
「悪くなった方が良いと思うのは私だけでしょうね!」
皐月はイラついているようだ。
「何か言ったか?」
秋人は投げつけられた機械が壊れていないか確認しているが、壁に激突した方と同様に壊れていた。
「別に…」
皐月のイラつきはおさまらない。