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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。

宮殿をめざせ!

作者: ハンプティ
掲載日:2018/06/27

『宮殿レース』

それは、はるか昔から行われている、とても残酷なレースである。宮殿にたどり着くことができるのは、2億人中、たった1人。宮殿にたどり着くことができなければ、行き着くところは『死』。文字通りの命懸けレースなのだ。

 おれの名はスパー。おれは、おれがなぜここに存在するのかも、おれが誰なのかも知らない。しかし、おれは不思議で、強力な、『何か』に惹かれている。そして、おれはその不思議な『何か』が何なのかを知っている。それは、きらびやかな宮殿。なぜおれが宮殿に惹かれているのかはわからないし、宮殿にたどり着いた先に何があるのかも知らない。だがおれにはそんなことはどうでもいい。とにかくおれはたどり着きたい。いや、たどり着かねばならないのだ。宮殿に。

 おれは生い立ちがよくわからない。おれには親がいないのだ。つまり孤児というやつだ。かわいそうだと思うかい?でも、おれの周りの奴らはみんな孤児だ。だから、悲しくもなんともない。

 おれを含めた数億の孤児たちは、おれと同じく、皆、宮殿をめざしている。しかし、数億の孤児たちが全員通ることができるほど宮殿への道は広くない。宮殿の門をくぐることができるのは、たった1人だけである。だから、おれたちはライバルなのだ。いや、ライバルなんてまだ生ぬるい関係だといえるかももしれない。殺し合ってでも宮殿にたどり着く。そんな覚悟を、ここにいる奴らは全員持っているのだ。

 おれたちは皆、街に住んでいる。おれたちはこの街を、『ゴールドタウン』と呼んでいる。けれども、『ゴールドタウン』という名前ながら、街は輝いていない。街は東西南北、厚い膜に閉ざされており、光が差し込んでこないためだ。

 その膜のせいで、おれたちは街を出たことがない。出たいと思ったことは何度かあったが、どうやってみても出ることはできなかった。しかし、ある限られたタイミングでのみ、閉ざされた暗闇の街から出られるチャンスがあるらしい。それは、宮殿へのレースが始まる時だ。ただし、街の出口を出れば、二度とは街に戻ってこれず、その後レースに勝ち、宮殿にたどり着けなければ『死』あるのみ。つまり、住み心地が悪く、たくさんの孤児がうごめいているこの街を脱出し、新しい人生を歩みたいならば、宮殿をめざすしかないということだ。

 おれが普段通り生活していたあるとき、『知らせ』はやってきた。街の奥底からやってきたその『知らせ』によると、あと数日のうちに、レースが始まるらしい。『知らせ』を聞いたおれは、不安を感じ、そしてそれは恐怖となり、絶対に宮殿にたどり着かなければという使命感に変わった。

 そして、『知らせ』が来てからおれの体内時計で2日と半分経ち、そのときは来た。

 まず、前兆として、街が激しく揺れ始めた。おれが今まで味わったことのないくらい激しかったが、なぜか暖かみのある、愛のある揺れだった。

 その揺れが高まる中、街の出口がゆっくりと開き始めた。おれと同じくレースに参加する奴らの姿も見える。ざっと数えて2億くらいいる。いよいよ始まるのだ。おれの闘志は最高潮に達した。

 出口が開ききると同時に、おれたちは一斉にスタートした。ついさっきまでのおれたちは、街の『住民』だったが、今からは競い合い、殺し合う『プレイヤー』たちなのだ。

 スタートして、まず見えたのは、開けた長い一本道。プレイヤーの中は2億ほどいるから、中には野蛮で、手荒い奴もいる。そういう奴はまず真っ先に周りのプレイヤーを殺そうとするが、そうするとクラッシュして結局死ぬのがおちだ。だから、大多数の頭が使える奴は前へ進むことに集中する。壁や他のプレイヤーに衝突し、無惨に砕け散る奴らを横目に見ながら、おれはどんどん進んでゆく。ようやく長い一本道が終わるころ、おれの右横に赤い文字が浮かんでいるのが見えた。競争に必死になりながらも、なんとか解読すると、そこには『残りプレイヤー数 174156456』と書いてあることがわかった。

 一本道が終わり、おれたちは新しいエリアに入ったようだ。そこでは今までとは全く違う、不思議な雰囲気が感じられた。その雰囲気は、おれたちの闘志をいっそう引き立てる。宮殿がおれを惹く力は一段と強くなった。

 宮殿に惹かれるままに進んでいくと、ふいに、柔らかい壁のようなものがおれたちを遮った。壁に抜け穴はないので、どうやら掘って進むらしい。おれは壁を掘って進んだ。おれと同じことを考えた奴らも続々と掘り始めた。しかし、頭が悪く、壁を掘るという考えに至らなかった気の毒な奴らは、出し得る最高のスピードで壁に突進し、次々に死んでいった。右に浮かんでいる数字はどんどん小さくなり、5000万を切った。

 おれはもう50メートルは掘り進めたが、壁は異常なまでに厚く、まだ終わらない。また、暗闇でどこに向かっているのかもわからないため、自分の進んでいる先に、ゴールが無いかも知れない。さらに、壁は強酸で、壁を掘る手は痺れ、体を蝕んでゆく。その影響で、体が弱い奴らはばたばた死ぬのだろう。赤い数字はどんどん減っていく。

 もう10キロメートルほど掘り進めただろうか。手足はガクガクと震え、身体のあちこちで血がにじみ、指先は壊死している。数字の減りもとどまるところを知らず、2000万、1000万、100万と減っていき、ついには1000を切った。

おれの身体は限界を迎え、ほとんど倒れるように土に手をかけた瞬間、隙間から一筋の光が見えた。

 隙間を広げると、きらびやかな宮殿を囲む高い高い石の壁が姿を現した。それを見ただけでおれはうれしくて飛び上がりそうだったが、まだそういうわけにはいかなかった。数百人の先客が、壁をよじ登ろうとしていたからだ。おれは走り出し、周りの敵をはねのけ、壁に飛び付いた。

 おれの上を登っている奴らの足を引っ張り、下から登ってくる奴らを蹴落とし、おれは上へ上へと登る。勝ち残ってきた数百人が、周りの敵を落とし、落とされる。壁の上での、最後の決戦が始まったのだ。落とされた者は地面に落ち、死んでいく。死んだ者はもちろん宮殿にはたどり着けない。おれもそうならぬよう、懸命によじ登る。横で登っている奴がおれを殴り、血が吹き出た。おれも負けじと壁に引っ掛かっている石を取り、奴の頭を殴った。奴は落ちていった。このような戦いが幾度も繰り広げられ、数字はついに1桁になった。遠くに見える敵をめがけて石を投げる。落ちる。投げる。落ちる。を繰り返し、右には『残りプレイヤー数 2』と表示された。

 とうとうこの高い壁も終わりが見えてきた。そのとき、おれ以外のもう1人の敵を見つけた。残念なことにそいつは、おれよりも上にいた。そして、壁の終わりに足をかけようとしていた。もう終わりかと思ったそのとき、壁がぐらぐらと揺れた。おれは壁にしがみつくのに必死だった。ようやく揺れがおさまり、登るのを再開しようとして、ふと上を見ると、そいつの姿は無かった。ということは、奴が先に宮殿にたどり着いたか、先ほどの揺れで下に落ちていったかのどちらかだな、と思った。

 後者が正解だった。下に見える黒い小さいシルエットが、どんどん遠のいていた。おれは宮殿に選ばれたのだ、思った。疲労と感動が起こす細かな震えをおさえながら、壁を乗り越えると、優雅だが、シンプルな作りの宮殿が見えた。とうとう宮殿にたどり着いたのだ!

 宮殿の入り口に人影は無かった。不思議に思いつつ、中に入った。宮殿の内部はいたってシンプルで、中央に大きく、豪華な椅子があるだけだった。そして、そこには、目が張り裂けてしまいそうなくらい美しい、女性が座っていた。

「あなたは?」

おれは歩みを進め、訊ねた。

「私は宮殿に住む者です。ここに誰かがたどり着くのをずっとお待ちしていました」

彼女はおれの反応を探るかのように、ゆっくりとそう言った。

「ここに来たものは、私と共にしなくてはならない仕事があります。私に見とれている暇はありませんよ?」

彼女は微笑んだ。おれの口からも何百年ぶりかと思うくらい久しぶりに笑みがこぼれた。

「仕事、ですか?」

「そうです。あなたと私はつながらなければいけません。あなたの内なるものと、私の内なるものを結合させるのです。そうすれば、私とあなたで一緒に新たな世界に飛び立つことができるのです。してくれますか?」

彼女の女神のような微笑みに鼓動が高まる。答えは1つしかない。

「もちろんです」

彼女はもう一度、今度は少し無邪気に微笑んだ。

「では、つながりましょう」

 おれの内部のものと、彼女の内部のものがつながった。つながった瞬間、おれの心の器から感動、愛情、生きる希望が溢れた。感無量とはこのことか。そう思った。この気持ちにうちひしがれながら、おれと彼女は吸い込まれていった。おれと彼女はもう別々の身体ではない。1つなのだ。1つの身体として、新たな世界に飛び出すのだ。







これは、神が作った神秘の物語






これは、生きる(みなもと)の物語







これは、()()()()()()()()()()

意味がわかりましたか?







※この物語の意味がわかった方へ

申し訳ありませんが、今のところ答え合わせをする予定はありませんので、自己満足でお願いいたします m(__)m(もしも人気があるようでしたら答え合わせするかもしれません)



※この物語の意味がわからない方へ

物語中にヒントがちりばめてあります。よく読んでくださいね!

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