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盗賊のアジト

 ゼンタとハイナは部屋を見渡した。

 しかしセレットもチュリンの姿もなかった。

 

 

 「見て!」



 ハイナは床に落ちている手紙を見つけ、拾い上げた。


 

 「読んでくれ」

 

 「うん。ゼンタさん、ハイナさん、傭兵の方、約束を破ってしまい申し訳ございません。私は炎帝の書を彼らに渡そうと思います。このままいっても私は皆さまに迷惑をかけ続けることとなります。私のことは忘れて、隣の街メルエーナへ行ってください。それと、これまでのお礼、お詫びを兼ねまして押入れにある装備をお二人に差し上げます。夫が昔、使っていたものです。どこにでも売っている安物ですし、古すぎて買い取ってもらえなかった粗悪品ですが、ないよりマシだと思います。最後まで迷惑をおかけしました。そして本当にありがとうございました。お二人のことは一生忘れません。さようなら」


 


 「なんだよ……それ……」


 「ねぇ、セレットさんは無理やり脅されたんじゃない!?」


 「かもしれない」



 ゼンタは話しながら押入れを開けた。

 そこには甲冑の上下一式と剣が置いてある。

 ゼンタはカバンをおろし、急いでその全てを装備した。

 なぜか甲冑にも剣にも重さを感じない。どういうことだ。いやそんなことどうでもいい。

 

 

 「とにかく、俺はアジトにのりこむ! お前はここにいろ! もうすぐ傭兵が来るから!」



 ゼンタは急いで外に出た。


 

 「ちょっと待って!」


 ハイナが呼び止める。

 しかしゼンタはハイナの声を無視し、走り出した。



 

 ゼンタはアジトの前に着いた。いたって普通の、村の民家だ。

 ゼンタは扉をノックする。すると中から声が返ってくる。


 

 「空はどっちだ?」


 「17本」



 ゼンタが合言葉を答えると扉が開いた。



 「見ねぇ顔だな」



 扉を開けた長身の男が言った。



 「初めてきたからな」


 「そうかいまぁ入んな」


 「ああ」


 「おっと。お前だけな。姉ちゃんはダメだ」

 

 「え?」



 ゼンタが後ろを振り向くとそこには息を切らしたハイナの姿があった。


 

 「なにやってんだ、お前はセレットさんの家にいろ。後で行くから」


 「でも……」


 「悪いな姉ちゃん」



 長身の男はゼンタだけを入れ、扉を閉めた。

 ゼンタはこの時自分が盗賊の協力者のふりをしていることをハイナに説明していないことに気づいた。まずい。今頃俺が盗賊の仲間になったと勘違いしている。いや、今はそのことは忘れろ。ここは敵陣の中だ。


 アジトの中はいくつもの椅子が乱雑に置いてあり、床やテーブルに酒瓶が散乱していた。

 その中に帽子をかぶった男と坊主頭の男の2人座っており、扉を開けた長身の男と合わせて3人がアジトにいた。

 椅子に座っていた帽子の男がニヤニヤしながら話し始める。


 

 「お前、アレのことで来たんだろ? 一足遅かったな。もう俺たちの仲間が取りに行ったぜ」


 「なに!? どこに!?」


 「どこだっけ?」



 帽子の男は横の坊主頭の男に尋ねた。


 

 「村の東の洞窟だよ」

 

 「ああそうそう」


 「そうか」

 


 ゼンタは踵を返した。急げば間に合うかもしれない。いや、なにがなんでも間に合わせねば。


 

 「どこに行くんだ?」



 帽子の男は聞いた。



 「どこでもいいだろ」


 「東の洞窟だろ? なにしに行くんだ? お前に分け前はないぜ?」


 「俺がなにしようがいいだろ。アレが手に入ったんなら俺たちはもう関係ない」


 「いや〜?」



 椅子に座っていた2人の男が立ち上がった。

 ゼンタの緊張感が一気に高まる。


 

 「俺たちは厳密にはまだ手に入れてないんだ。邪魔されると困るんだよなぁ」


 「邪魔なんてしねぇよ」


 「本当か〜? じゃあここにいろよ」


 「嫌だよ」


 

 ゼンタは玄関へ行くと、先ほど扉を開けた長身の男がそのまま扉の前に立っている。

 そして長身の男が口を開く。


 

 「ここにいろ。さもないと殺す」


 

 長身の男はダガーを取り出した。

 ゼンタは後ろを振り向くと2人の男もダガーを構えていた。

 ゼンタは意を決し剣を構える。


 

 「おっ、やっぱりやる気じゃん。ま、最初から気づいてたがな。というか」


 

 帽子の男はニヤリと笑った。


 

 「最初から全員殺すつもりなんだけどな。リストに入っている人間全員な」


 「なんだと!?」



 ゼンタは驚いて帽子の男を見る。



 「セレットも今頃どうなってるかな〜」


 ゼンタはセレットとチュリンの顔を思い浮かべた。

 ゼンタの剣を握る力が強まる。



「許さねぇ!」

 


 ゼンタは激高した。

 帽子の男はくるくるとダガーを回す。

 

 その瞬間、ゼンタは即座に横へ動いた。

 ゼンタがいた場所に長身の男のダガーが空を切る。


 ゼンタは長身の男に斬りかかった。

 

 長身の男はダガーで受け止たがダガーは弾かれ床に落ちた。

 

 すかさず坊主頭の男がゼンタの顔をめがけダガーを突き出す。

 ゼンタはギリギリでかわし、かわしながら坊主頭の男の体を斬りつけた。


 「ぐぅっ!」


 坊主頭の男は片腹を抑え、苦しみだした。


 その隙にダガーを拾った長身の男がゼンタに斬りかかる。

 ゼンタは剣で受け止め長身の男の腹を蹴った。

 

 「がはっ!」


 そして体制を崩した長身の男に斬りかかった。



 「うわあ!」



 斬撃は体に当たり、長身の男は床に膝をついた。

 


 「まじかよ」



 と、帽子の男がつぶやく。

 

 

 「覚悟はいいか?」



 ゼンタは帽子の男を睨む。



 「いや、まだです」



 帽子の男は後ずさりする。


 ゼンタはゆっくりと間合いを詰める。


 


 その時どこからかキシンキシンと音がした。


 ゼンタが後ろを振り向くとアジトの扉が細切れになっている。



 「なっ……」


  

 細切れになった扉の上に鎧を身につけた、長い銀色の髪をした少女が姿を現した。







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