ここは
1つしかない目に大きな口、全身が紫の毛に覆われ、そこから2本の腕と足が伸びている。体長は約1m程で2足歩行で歩いていた。
「なんなの……これ」
「わからねぇ」
ゼンタとハイナは今まで見たことのない生物に目を奪われる。
しかしこちらにまっすぐ視線を、敵意を向けていた。
「逃げろ!!」
ゼンタが叫ぶと同時に2人は全速力で走って逃げ出した。
未知の危機感が2人の頭を支配する。
「ピギャーー!!」
紫の生物は2人を追いかけてきた。
その速さは2人よりも速い。
ゼンタは後ろを見ると、紫の生物とぐんぐん差が縮まるのが見えた。ハイナも後ろを向き、それを視認した。
すると、紫の生物はハイナの背中にめがけてジャンプし、拳を突き出した。
「きゃー!!」
「危ない!」
ゼンタはとっさにハイナを突き飛ばし攻撃を回避させた。
紫の生物の拳は地面に当たり、地面が大きく割れる。
2人はすぐさま起き上がり再び逃げ始めた。
ゼンタは走りながら振り返り、大きく割れた地面を見て戦慄する。やばいやばすぎる……あんなもん当たったら死んじまう。かといって逃げても追いつかれる。どうする!? どうする!?
一気に息と心拍数が上がる。
紫の生物が再びゼンタたちの方に向かって走り出す。
このままじゃ殺されてしまう。やるしかねぇ、と、ゼンタは恐怖で手を震わせながら覚悟を決めた。
「ハイナ! 左へ逃げろ!」
「うん!」
左へ逃げたハイナを視野で確認し、ゼンタは足元の石を拾い紫の生物に投げつけた。
「こっちだバケモノ!!」
石は紫の生物の手前に落ち、当たらなかったが、大声に反応したのか紫の生物はゼンタを真っ直ぐ見据えた。
それと同時にゼンタは右に向かって走り出す。
そして直径約5m程の大きな岩の前に着いた。
ゼンタはその岩に背中をつけ、紫の生物の方を向いた。
「ピギーー!!」
紫の生物はゼンタをめがけてジャンプし、拳を突き出す。
ゼンタはとっさに横に倒れこみ拳を回避した。拳は岩に当たり、岩がガラガラと砕ける。
ゼンタは素早く岩の破片を両手で拾い上げ、紫の生物の目に叩きつけた。
「ピギャーー!!」
紫の生物は目を抑えてうずくまった。
ゼンタはその隙にハイナが向かった方角へ走る。
するとさっき分かれた付近にハイナは立っていた。
「大丈夫!?」
「ああ! とにかく逃げよう!」
不安げな顔で聞いたハイナにゼンタも不安げに答えた。
そしてゼンタとハイナは再び共に走り出した。
「ハア……ハア……ここまで来れば大丈夫だろ」
「うん……ハア……ハア……」
ゼンタとハイナは、息切れしながら両手を膝についていた。
「と、とにかく……ハア……ああいう変な生物は……ハア……避けながら……ハア……進もう」
「うん……ハア……ハア……」
そして2人は再び歩き出した。
いつまた異形の生物に遭遇するかわからない。
歩くごとに徐々に息はととのったが、胸の内は安心とは無縁の場所にあった。
よく見るとあちらこちらに見たことのない異形の生物が見える。空にも飛んでいた。
ゼンタとハイナは、自分達が日本でもなく地球でもないどこか知らない場所にいるんだということ、生きるか死ぬかの状況にあることを理解し、絶望した。
それからの道中、ゼンタとハイナは見たことのない異形の生物と対面しないよう慎重に回り道をして先へ進んだ。
すると
「ねぇ! あれ見て!」
ハイナが指をさす方向には村が見えた。
「おお! 村だ!」
「早く行こう!」
ゼンタとハイナはかけ足で村へと向かった。目指していた街ではないが、人がいるならそんなことは関係ない。
そして、2人は村の入り口へ到着。
賑やかな雰囲気の大きな村だ。入り口には木の看板が立っており「カランカ」と書かれている。
「着いたー」
「やったね!」
ゼンタとハイナはハイタッチをした。
「うわー、人めちゃくちゃいる!」
行き交う人々は多種多様の格好をしていたが、武器や防具を身につけている者も少なくなかった。
「予想してたけど、やっぱり俺逹の世界とは建物も人間も違うみたいだな」
「ね」
「とにかくまずは村を一周して、作戦会議だ」
「異議な〜し」
2人はカランカをくまなく探索した。
そして再び入り口付近に戻ってきた。
食材屋や食事処、道具屋の他に、武器屋、宿屋、そして仕事の受注・発注ができる”ギルド”などを確認した。
「で、これからどうする?」
ハイナはゼンタの目を見る。
「ギルドに行こう。情報集めと、あとは金稼ぎだ。俺逹の世界の金はこっちじゃもちろん使えないしな。」
ゼンタとハイナはギルドへ向かった。
ギルドに到着すると、2人はゆっくりドアを開けた。
中にはテーブルがたくさんあり、食事や酒を口にする人や雑談する人で賑わっていた。
2人は奥にあるカウンターに行き、そこにいる髭の生えたオールバックのマスターに話しかけた。
「すいません。俺逹、違う世界からこっちの世界に来たのですが」
「なんだって?」
とまどうマスターにゼンタは自分たちのような人間は一般的ではないと察した。
そしてこれまでの経緯を説明した。
「元の世界に帰る方法知りませんか?」
「悪いがわからねぇな。自分で言うのもアレだが、俺はこの村の1番の物知りだ。だけど異世界から人が来たなんて初めて聞いたぜ」
マスターは自分のあごを触りながら答えた。
「そうですか……」
ゼンタとハイナは視線を落とす。
異世界から人が来た前例はないということは俺たち以外の異世界人もいないということか、とゼンタは思った。
「それとギルドの仕事がしたいんですが、どうすればいいですか?」
ゼンタは尋ねた。
「異世界から来たんならまずはステータス(能力値)の測定からだな。ステータスによって、できるミッション(仕事)とできないミッションがあるからな。ちょっと来な」
ゼンタとハイナはなんとなく言っている内容を理解し、マスターと共にギルドのミッションカウンター(仕事受付所)に向かった。
そしてミッションカウンターにつくと、事情を説明した。
「事情はよくわかりませんが、ひとまずステータスを測定させていただきます」
金髪の受付嬢はそう告げると白いメガネをかけ、ゼンタを見た。
そして1度受付所の奥に消えたあと、再びあらわれ、ゼンタに1枚の紙を渡した。
「こちらがゼンタ様のステータスシートになります。」
「どれどれ」
そこには体力・魔力・力などの様々な能力とその数値が記載されていた。これが履歴書や通信簿みたいなものなのかなとゼンタは思った。
ゼンタは魔力という知らない力が気になったがそれ以上に、全てのステータスの横に記載されているZという文字が気になった。
「このZっていうのは?」
「ステータスのランクでございます」
「ランク?」
「はい。SからZまでの26段階で、Zは1番下のランクでございます」
「え!?」




