出会い
佐々番然太は鏡の前に映る青い髪の寝癖を整えると、白いポロシャツと青いチノパンに着替えた。
仕度をすませ、ショルダーバックを肩にかけ自宅を出発。
最新刊の漫画を買いに、本屋へ向かうのだ。
よく晴れた気持ちの良い日曜日の午後。足取りは軽かった。
するとどこからか音が聞こえ、ゼンタは足を止めた。ズズズ……ズズズ……と鳴っている。
今までの人生で聞いたことのない音だった。風の音にしては低すぎる。
それも、自分のかなり近くで鳴っている。
しかし周りを見渡しても音の正体らしきものは見当たらない。
ゼンタが不思議に思っていると、その音は突然大きくなり目の前の空間が歪み始めた。
「なんだよこれ! うわあああああ!!!!!!」
歪みの中へゼンタは吸い込まれていった。
ゼンタは目を覚ました。気絶していたのだろうか自分でも曖昧である。
ゼンタは体を起こした。
「え? なっ、え?」
ゼンタは目の前の光景に我が目を疑った。
見渡すかぎりの焦げ茶色の大地にポツポツと岩山が立ち並ぶ。そこに自分がいる。
さっきまで確かに住宅街にいたはず。いやそもそもここはどこだ。見覚えがない。こんな場所日本にあるのか。なぜこんな場所にいるんだ。どうやってきたんだ。
太陽が照りつける大地に、状況を飲み込めぬまま佇んでいた。
途方に暮れて周りを見渡してみた。とにかく人を探そう。人が答えをくれる。
するとゼンタは近くに女性が立っているのを見つけた。
「おおーい!」
ゼンタは大声で呼びかける。人がいたことに安心した。
ゼンタが呼びかけると、その女性も「おおーい!!」 と、右手を上げ、ゼンタの呼びかけに応えた。
ゼンタは女性のもとへ駆け寄る。コンクリートの地面とは明らかに違う大地の感触が、交互に足に伝わった。
ゼンタは女性の側へ着いた。
その女性は整った顔立ちの女の子で、赤い髪のショートヘアに黒いリボンを付け、黒いTシャツに赤いホットパンツを履いていた。身長は165cmの自分より一回り小さかった。
「良かったー! 人がいて助かった〜。このあたりに住んでる人ですか?」
と女性は自分の胸をなでおろし、尋ねた。
ゼンタは自分が今まさに言おうとしていたことを先に言われ、この人は自分と全く同じ状況にいるんだということを理解した。
「俺はこのあたりに住んでる人間じゃないです。自分の家の近所を歩いていたら、突然目の前の空間が歪んで、そして気づいたらなぜかここにいました」
ゼンタは自分でも何を言っているのかわからなかった。
「ええ!? 私も一緒です!」
女性は目を大きくして言った。
「キミもそうですか」
「はい!」
「…………」
「…………」
束の間の安心は沈黙へと変わった。状況は何も変わってはいなかった。
ゼンタは両手を組んでうつむく。
すると女性は沈黙を早々と切り裂いた。
「あの私、八陽葉唯奈っていいます。高校三年生の18歳です」
「俺は佐々番然太です。僕も高校三年生の18歳です」
ゼンタとハイナはお互いに名乗り終えた。
そして
「一緒に帰る方法を探しましょう」
「そうですね」
そう言うと、2人は再び周りを見渡した。
広大な大地は簡単に帰ることができないことを物語っている。よく見ると遠くの方に何か動物のような姿が動いてるのが微かに確認できる。
ゼンタはバッグから水を取り出し1口飲んだ。
「あと同い年だし敬語やめない? 私のことはハイナでいいよ、ゼンタ」
「あ、うん。それもそうだな」
ゼンタは気を使わせてしまったと少し後悔した。
人のいない大地に風が吹き抜ける。
「とりあえず、ここにいてもしょうがない。どこか人がいる場所を目指そう」
「そうだね」
「向こうの方角に若干色が変わってる場所が見えるだろ? 多分あそこが街なんじゃないかな」
ゼンタは遥か向こうの景色に指をさした。
「うわ〜遠いねー」
「そうだな。でもあそこに着いたらなんとかなると思う。行こう」
ハイナは右手を上げて「よっしゃー」と意気込んだ
二人は地平線の先にある街らしきものを目指して歩き始めようとした。
すると
「ピギー!!!」
『?』
二人は後ろを振り返る。
そこには異形の生物が立っていた。




