81 決闘
パトラッシュに揺られながら、トリンドル城砦跡地に向かう。
曇り空、今にも降ってきそうだ。
クワルやベイフやエイル、そしてドラガンなどは、先に城砦跡地に行っている。
時間までに俺が現れなければ、ドラガンの不戦勝となる。
ドラガンはクワルを手に入れ、そのまま故郷の村に帰ってゆくだろう。
俺が決闘に現れるかどうか、賭けになっているに違いない。
俺とパトラッシュの他に、俺の決断を知る者はいないのだ。
さて、ベイフは、今回の活躍が国に認められて、聖都に派遣されることになった。名誉ある、ホーリーセーフの一員になるのだという。それが一体何者なのか俺にはよくわからないが、それはとても名誉なことなのだと、皆の口ぶりからは推測できた。
カメス・メイスは、エイルの読み通り、今のサブマスターがマスターとなって存続するらしい。エイルもクランに残る。ベイフはエイルを連れて行こうと何度も誘ったが、エイルは、自ら残る道を選んだのだった。
小雨が降ってきた。
靄が出てくる。
俺とパトラッシュ、滑らかな芝生の傾斜を登ってゆく。
風に乗って、太鼓の音が微かに聞こえてくる。
香ばしい食べ物の匂いも。
今となっては、ドラガンも俺も、ちょっとだけ有名になってしまった。そのせいで、この決闘は、周辺の村や町の人々の関心を大いに集めて、ちょっとした祭りのような賑わいになっているらしい。
思えば、ドラガンとの決闘が全ての始まりだった。
クワルがやってきて、次にドラガンがやってきて……二人が俺の前に現れなければ、今回の事件に加わることはなかっただろう。死にそうな目に遭うこともなかっただろうが、ベイフや、そしてエイルと知り合うこともなかった。
もうすぐトリンドル城砦の、崩れた門に着く。
クワルは、俺が来ないと思っているかもしれない。もしかすると、俺の傍にいる間ずっと、その不安を抱いていたのかもしれない。たまに不安そうな表情をしていたのはそういうことだったのかと、今更ながらに気付く。
だが、そんな不安も今日でお終いだ。
俺は戦いに来たのだ。
門を抜けた時、ちょうど霧が晴れて、そこから小龍馬に乗った黒いローブの魔術師が姿を現す。皆は息を呑む。
太鼓の音が止み、俺は馬を降りる。
クワルが俺の名前を呼ぶ。
――なんて、格好の良すぎる登場シーンを演出できるかどうかはわからないが、それくらいの、ちょっとしたヒーローくらいになら、なってもいいかななんて思っている自分がいる。
門が見えてきた。
雨の細かい粒が肌を濡らす。
いよいよ決闘だ。
喧嘩なんかしたこともない、プロレスやK-1が嫌いな俺が、決闘に挑む。
逃げることだってできるのに、わざわざ好んで決闘に挑む。
霧が晴れた。
「来たか!」
ドラガンが声をかけてくる。
俺は答えた。
「来たぞ。来たぞ、ドラガン!」
いよいよ、決闘が始まる。
ここまで読んでいただき、ありがとうございました。
文字数がだんだん多くなってくる中で、最後まで読んでくださったこと、本当に嬉しく思います。二章を完結させることができたのも、ひとえに皆様の応援のお陰です。
今から十年ちょっと前、ネット小説の黎明期だったと思うのですが、とあるサイトで、私は素晴らしい作品に出合いました。ファンタジー、剛腕の傭兵が小さな女の子を育てることになる、という所から始まる物語です。作者さんあてに感想を書いたのは、その作品が最初でした。
二章を書き終えたところで、急にそれを思い出しました。
「グッド・ブラック!」が、皆さんの心に何かを残せたなら、これほど嬉しいことはありません。
さて、まるで完結したかのようにそんなことを書いていますが、物語は、実はまだまだ続きます。フルマラソンの気分で第三章、突入していきます。
三章は夏明けの発表予定です。
チャンネルはそのまま! 是非、三章もお付き合いください!




