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グッド・ブラック! ~黒魔術師に幸運を~  作者: ノマズ
第二章 ピルグの勇者
81/114

81 決闘

 パトラッシュに揺られながら、トリンドル城砦跡地に向かう。

 曇り空、今にも降ってきそうだ。

 クワルやベイフやエイル、そしてドラガンなどは、先に城砦跡地に行っている。


 時間までに俺が現れなければ、ドラガンの不戦勝となる。

 ドラガンはクワルを手に入れ、そのまま故郷の村に帰ってゆくだろう。

 俺が決闘に現れるかどうか、賭けになっているに違いない。

 俺とパトラッシュの他に、俺の決断を知る者はいないのだ。


 さて、ベイフは、今回の活躍が国に認められて、聖都に派遣されることになった。名誉ある、ホーリーセーフの一員になるのだという。それが一体何者なのか俺にはよくわからないが、それはとても名誉なことなのだと、皆の口ぶりからは推測できた。


 カメス・メイスは、エイルの読み通り、今のサブマスターがマスターとなって存続するらしい。エイルもクランに残る。ベイフはエイルを連れて行こうと何度も誘ったが、エイルは、自ら残る道を選んだのだった。


 小雨が降ってきた。

 靄が出てくる。

 俺とパトラッシュ、滑らかな芝生の傾斜を登ってゆく。


 風に乗って、太鼓の音が微かに聞こえてくる。

 香ばしい食べ物の匂いも。

 今となっては、ドラガンも俺も、ちょっとだけ有名になってしまった。そのせいで、この決闘は、周辺の村や町の人々の関心を大いに集めて、ちょっとした祭りのような賑わいになっているらしい。


 思えば、ドラガンとの決闘が全ての始まりだった。

 クワルがやってきて、次にドラガンがやってきて……二人が俺の前に現れなければ、今回の事件に加わることはなかっただろう。死にそうな目に遭うこともなかっただろうが、ベイフや、そしてエイルと知り合うこともなかった。


 もうすぐトリンドル城砦の、崩れた門に着く。

 クワルは、俺が来ないと思っているかもしれない。もしかすると、俺の傍にいる間ずっと、その不安を抱いていたのかもしれない。たまに不安そうな表情をしていたのはそういうことだったのかと、今更ながらに気付く。


 だが、そんな不安も今日でお終いだ。

 俺は戦いに来たのだ。

 門を抜けた時、ちょうど霧が晴れて、そこから小龍馬に乗った黒いローブの魔術師が姿を現す。皆は息を呑む。

 太鼓の音が止み、俺は馬を降りる。

 クワルが俺の名前を呼ぶ。

 ――なんて、格好の良すぎる登場シーンを演出できるかどうかはわからないが、それくらいの、ちょっとしたヒーローくらいになら、なってもいいかななんて思っている自分がいる。


 門が見えてきた。

 雨の細かい粒が肌を濡らす。


 いよいよ決闘だ。

 喧嘩なんかしたこともない、プロレスやK-1が嫌いな俺が、決闘に挑む。

 逃げることだってできるのに、わざわざ好んで決闘に挑む。


 霧が晴れた。

 

「来たか!」


 ドラガンが声をかけてくる。

 俺は答えた。


「来たぞ。来たぞ、ドラガン!」


 いよいよ、決闘が始まる。

 ここまで読んでいただき、ありがとうございました。

 文字数がだんだん多くなってくる中で、最後まで読んでくださったこと、本当に嬉しく思います。二章を完結させることができたのも、ひとえに皆様の応援のお陰です。


 今から十年ちょっと前、ネット小説の黎明期だったと思うのですが、とあるサイトで、私は素晴らしい作品に出合いました。ファンタジー、剛腕の傭兵が小さな女の子を育てることになる、という所から始まる物語です。作者さんあてに感想を書いたのは、その作品が最初でした。


 二章を書き終えたところで、急にそれを思い出しました。

 「グッド・ブラック!」が、皆さんの心に何かを残せたなら、これほど嬉しいことはありません。


 さて、まるで完結したかのようにそんなことを書いていますが、物語は、実はまだまだ続きます。フルマラソンの気分で第三章、突入していきます。


 三章は夏明けの発表予定です。

 チャンネルはそのまま! 是非、三章もお付き合いください!

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