白雪姫は目覚めないのよ、王子様
「あれ、修羅場?」
ひょっこり、校門からそんな効果音でもつきそうな登場をしたのは真理愛。
あぁなんだかこれ、本当に修羅場みたいな場面になってしまっているんじゃないだろうか。
「ま、いいや。優裏安、帰ろう?じゃーね、センパイ」
「真理愛」
掴まれた手が痛い。
嫉妬心を隠そうともしないのはいかがなものだろう。
「優裏安は本当に、俺を傷つけるのが得意だよなぁ」
「お前は臆病者だ、いつだって傷ついているだろう。そしてその原因は自分だけではないよ」
「そうだよ。でも他の奴らはともかく、優裏安は俺が傷付くってわかってる。
わかってやってる。ワザとの時もそうでない時も、そうだ」
今の自分がわざとやったと思っているんだろうか。
いやそれよりも、自分は真理愛を故意に傷つけたことなんて一度もない。
傷つけてしまったと思うのはいつも傷つけてしまったあとだ。
自分は言う前に判断できるほど、真理愛を知らない。
「なぁ真理愛、お前は馬鹿だ」
「うん、知ってる」
「自覚しているつもりで自覚していないあたり、救えないな。
自分はお前が思っているほどお前の全てを知っているわけではないし、お前はお前が思っているほど自分を知らないだろう。
自分を理解者だとでも思っているのなら、やめろ」
自分は真理愛の何も知らない。
赤の他人よりは長い間付き合ってきた分知っているが、それ以上でも以下でもない。
自分たちはただの幼なじみで、理解者でも依存者でもない。
そうつらつらと言えば、真理愛はにこりと笑った。
花が綻ぶように、なんて形容詞が似合う笑顔だ。元が良いだけに。
「 わかってるよ 」
あぁ、また傷つけた。
「バイバイ、優裏」
「あぁ、また」
明日。
結局、真理愛が死のうと何をしようと、自分は何とも思わないわけだ。
自殺未遂した真理愛が、すんでのところで助かって、記憶を失って。
自分を見て誰だかわからなくなっていても、なんとも思わなかった自分は薄情以外の何物でもないだろう。
独りであることに死ぬほど耐えられなかった真理愛は、そうしてまた自分に訳の解らない愛を向ける。
その愛が実らなければ、今度こそ死ぬのだろうか。
奇跡は二度は起こらない。
自分が真理愛を愛し返すことはない。
だからきっと、真理愛は孤独で死ぬ。
根っからの馬鹿だ。同じことを繰り返すんだろう。
「ゆーりあ、俺達ずっと一緒だよな!」
真理愛の死体は、きっととても美しいだろう。
「お前は相変わらず馬鹿だよな」
直接その愛を伝えない、お前は本当に馬鹿だ。
だから自分は真理愛が死体になっても、きっと愛さないだろう。
このお話で終わりです。
後気味悪いですが、いつか幸せな二人を描いてみたい気もします。
ここまでお付き合い下さりありがとうございました!