星を願うならこの手をとって?
流れ星に願いを託せば、叶うという話がある。
まぁ残念ながら、自分は流れ星というのを見たことがないんだけれどね。
昔幼馴染と一緒に行ったキャンプで、彼が懸命に探しているのを、泣いている彼を見てぼんやりと思い出す。
泣いているのは、何が悲しいのだろうか。
自分が彼の知らないところで彼の知らない人間と友好関係を築いていたのが気に食わないのか、告白されていたという事実を話
さなかったのが気に食わなかったのか・・・。
今、自分の首に手をかけているという行動が、己でも理解できずに苦しんでいるのか。
「優裏安」
「優裏安、ゆりあぁ……」
「ゆりあ、いなくならないで」
ぱたぱたと、真理愛の涙が自分の頬を滑り落ちる。
首から手を離したと思えば、覆いかぶさる形で彼は先程まで手をかけていたその首筋に顔をうずめた。
けほっと乾いた咳がで、息苦しさから生理的に出た涙で視界がぼける。
なぜ、真理愛はこんなにも不安定なのか。
彼は昔からそうだ。一番安定しているように見えて、案外脆いところがある。
ほんの少しのほころびで、すぐに崩れてしまうような危うさがあった。
勝手な被害妄想。
あぁ自分がいつ、彼のそばから離れると言ったのだろうか。
そもそも、いつまでも近くにいてやると言った覚えもない。
もともと、ただの腐れ縁。ただの幼馴染。
狭い狭い、真理愛の世界。
その世界が彼の唯一。
なんて愚かしく、哀れなことだろうか。
ゆるりゆぅるりと、自分の口角がわずかずつ上がっていくのがわかった。
あぁ、
嗚呼……本当に、自分はまだ大丈夫だと錯覚できて実に愉快だ。
「真理愛」
びくりと真理愛肩が震えた。
彼のやけにさらさらした髪を撫でるように梳いて、形の良い頭をぽんぽんと軽く撫でた。
「何が、そんなに不安にさせるんだ?」
「…………」
「自分の何が気に入らないんだ?」
「……全部、なにもかも。」
「きちんと言ってくれないとわからないな、それでは意味不明だねぇ」
「モテるとことか、今だに“紀市ちゃん”を気にしてるとことか、年上なのとか、俺の知らないとこで友達作ってるとことか……」
一番は、そんな嫉妬で優裏安を殺したくなることが。
そう言って、また泣き出した。
なるほど、なるほどね。いつのまにか随分、嫉妬深くなったようだ。
けれどね真理愛。自分はまだ死にたくなどないんだよ。
ふっと微笑んで、震えるその手に自分の手を重ねた。
「ダイジョウブ、置いてなどいかないよ」
だからまだ、お前の望む言葉を言ってやろう。