細波で壊れる水月
周りから見たら、きっととても社交的な人気者だろう。
でも、俺はそんな明るい人間じゃない。
良い人間でもない。そう言えば、きっとあいつは鼻で笑うんだろう。
優裏安は俺の幼馴染だ。
あいつは昔から頭が良かった。要領もよかった。
だから俺みたいに大勢とは仲良くしていなかったし、無駄に人と仲良くなろうとはしなかった。
俺は知ってる。
優裏安は本当に死体ってものを愛してやまないことを。
優裏安は知ってる。
俺が本当は他人に塵ほども興味がないってことを。
俺は嫌われることが嫌いだった。
嫌うってことが嫌いだった。
それがとても醜いもののように感じたから。
だから、好きになるってことも興味を持つってこともしない。そうしたらきっと嫌いとかそういうの考えなくていいから。
俺は優裏安さえいればいい。
優裏安がいるならほかはどうでも良いんだ。
「ずいぶん排他的じゃないか。反吐が出そうだよ」
「相変わらず難しい言葉使うなぁ優裏安は!」
俺と優裏安の二人だけだったはずの世界に入り込んできた、その紀市ってやつがどうしても許せないんだ。
もしかしてこれ嫌いってことなのかな?
あぁ嫌だなぁ醜いなぁ。ねぇ優裏安は、こんなに醜い俺でも見捨てないでいてくれる?
なぁ怖いんだよ、優裏安。
俺の世界は優裏安だけ。
聞いたらきっと哂って吐き捨てる。そんな世界ならさっさと捨てろって、そう吐き捨てるんだろ?
なぁ優裏安、優裏安…俺をこんなちっぽけな世界に置き去りにしないでよ、優裏安。
どうしようもなく醜くて、どうしようもない臆病者な、俺を置いていかないでね。
「好きとは違うんだ、優裏安」